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第2部 王都ファグネリア
第64話 楽ができない
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今朝もたくさんのお客さんが詰めかけてくれている。
昨晩『燃える闘魂』の人達に鶏ラーメンを出したので、その話を聞いて食べたいと言う人が来るかと思っていたけど…。
結局、誰も来なかった。
どうしたのかな?
ゲオルギーさん達はあの時は、美味しいと言っていたのに…。
社交辞令だったのかしら?
まあ、いいわ。
プン!!
そうだ。
今日は天気が良いからシルバーと少し遠出をしようかな?
なんていつも徒歩なら、片道3日はかかる距離を移動してますけど…。
私も一人上手がうまくなってきたわ。
一人が好きな訳じゃないのに、なんて。
げふん、げふん。
そんな事を考えている時だった。
「スズカさんはおられますか?」
声のした方を見るとヤルコビッチ商会の使用人だった。
「はい、おります」
「主人のヤルコビッチが、時間のある時にでもお店に来てほしいそうです」
「わかりました。本日お店の片付けが終わりましたら、伺いますとお伝えください」
「では、お待ちしております」
そう言うと使用人の人は帰って行った。
なにかしら?
私はそう思いながら後片付けをして、ヤルコビッチ商会に向かう。
「こんにちは!」
店に入り声を掛ける。
「いらっしゃい、スズカさん」
中からヤルコビッチさんが出てくる。
「呼び出して悪かったですね」
「いいえ、今日は何の御用でしょうか?」
「まあ、ここではなんですから応接間へどうぞ」
そう言われ私は応接間へ案内される。
「実は先日、ハチミツが売れました」
「売れたのですね!売れないかと思ってました」
「えぇ、私もです。ハチミツは貴重で貴族層であっても、病気の時などの非常時以外は口に出来ないものです。値段も需要に対してなので、欲しい人が居なければ価値が無く、逆に欲しい人にしてみれば喉から手が出るほど必要な物です」
「そうなのですね。おいくらで売れたのでしょうか?」
「はい、500万円で競り落とされました」
「500万円ですか?!」
この世界の年収で500万円と言えば、一般庶民からすると3年近い年収と同じだ。
「普段ならここまでの高額にはなりません。ただ今回は綺麗な瓶に詰められたハチミツを観賞用として欲しいと言う人と丁度、ハチミツを捜していた方がおりまして、オークションで競り合いになり高額になりました」
645円のハチミツが…。
「お約束通りオークション手数料は1割の50万、そこから2割の90万が私の手数料でスズカさんは360万円の取り分となります」
ジャラリ。
金貨の入った袋を目の前のテーブルに置かれ私は受け取った。
「しばらくハチミツは出さないほうがいいでしょう」
そうだよね、品薄で価値のある物がポン、ポン出てきたら価値が下がってしまう。
「それからイチゴ、ブルーベリーをジャムを今回から、それぞれ4缶ずつ欲しいのですが…」
「えぇ、構いません。ありがとうございます」
「ジャムのファンが増えてきまして…。これからも増えて行くかも知れませんね」
「そうだと嬉しいけど」
「では、また何かありましたらご連絡いたしますから」
そう言われ私はヤルコビッチ商会を出た。
スズカは思った。
普通にお店の売上が月に700万はある。
それに魔物の素材も売っているので合わせて一千万はあることに気づいた。
どちらかで十分、生活は出来るけど、どちらもやめる訳には行かない。
店を閉めたら獣人の人が…。
シルバーの肉確保や運動のため、散歩も止めることもできない。
お金があっても楽ができないなんて、異世界に来て思わなかった…。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いつも応援頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
昨晩『燃える闘魂』の人達に鶏ラーメンを出したので、その話を聞いて食べたいと言う人が来るかと思っていたけど…。
結局、誰も来なかった。
どうしたのかな?
ゲオルギーさん達はあの時は、美味しいと言っていたのに…。
社交辞令だったのかしら?
まあ、いいわ。
プン!!
そうだ。
今日は天気が良いからシルバーと少し遠出をしようかな?
なんていつも徒歩なら、片道3日はかかる距離を移動してますけど…。
私も一人上手がうまくなってきたわ。
一人が好きな訳じゃないのに、なんて。
げふん、げふん。
そんな事を考えている時だった。
「スズカさんはおられますか?」
声のした方を見るとヤルコビッチ商会の使用人だった。
「はい、おります」
「主人のヤルコビッチが、時間のある時にでもお店に来てほしいそうです」
「わかりました。本日お店の片付けが終わりましたら、伺いますとお伝えください」
「では、お待ちしております」
そう言うと使用人の人は帰って行った。
なにかしら?
私はそう思いながら後片付けをして、ヤルコビッチ商会に向かう。
「こんにちは!」
店に入り声を掛ける。
「いらっしゃい、スズカさん」
中からヤルコビッチさんが出てくる。
「呼び出して悪かったですね」
「いいえ、今日は何の御用でしょうか?」
「まあ、ここではなんですから応接間へどうぞ」
そう言われ私は応接間へ案内される。
「実は先日、ハチミツが売れました」
「売れたのですね!売れないかと思ってました」
「えぇ、私もです。ハチミツは貴重で貴族層であっても、病気の時などの非常時以外は口に出来ないものです。値段も需要に対してなので、欲しい人が居なければ価値が無く、逆に欲しい人にしてみれば喉から手が出るほど必要な物です」
「そうなのですね。おいくらで売れたのでしょうか?」
「はい、500万円で競り落とされました」
「500万円ですか?!」
この世界の年収で500万円と言えば、一般庶民からすると3年近い年収と同じだ。
「普段ならここまでの高額にはなりません。ただ今回は綺麗な瓶に詰められたハチミツを観賞用として欲しいと言う人と丁度、ハチミツを捜していた方がおりまして、オークションで競り合いになり高額になりました」
645円のハチミツが…。
「お約束通りオークション手数料は1割の50万、そこから2割の90万が私の手数料でスズカさんは360万円の取り分となります」
ジャラリ。
金貨の入った袋を目の前のテーブルに置かれ私は受け取った。
「しばらくハチミツは出さないほうがいいでしょう」
そうだよね、品薄で価値のある物がポン、ポン出てきたら価値が下がってしまう。
「それからイチゴ、ブルーベリーをジャムを今回から、それぞれ4缶ずつ欲しいのですが…」
「えぇ、構いません。ありがとうございます」
「ジャムのファンが増えてきまして…。これからも増えて行くかも知れませんね」
「そうだと嬉しいけど」
「では、また何かありましたらご連絡いたしますから」
そう言われ私はヤルコビッチ商会を出た。
スズカは思った。
普通にお店の売上が月に700万はある。
それに魔物の素材も売っているので合わせて一千万はあることに気づいた。
どちらかで十分、生活は出来るけど、どちらもやめる訳には行かない。
店を閉めたら獣人の人が…。
シルバーの肉確保や運動のため、散歩も止めることもできない。
お金があっても楽ができないなんて、異世界に来て思わなかった…。
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いつも応援頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。
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