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第2部 王都ファグネリア

第34話 食べてみる

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「じゃあ、また明日!!」
 食事も終わりジョヴァンニさん達は、日が暮れた街に消えていく。
 お店も一段落して一息つく。
 あと少ししたら店じまいにしようかな。

 そんなことを考えていた時だった。
「オォ!!ここだ、ここだ!!」
「はい、いらっしゃいませ」
 良く見ると裕福そうな人族の小太りの40歳くらいの男性と、お供のような恰好をした2人が店に入ってきた。
 私は思わずこう告げる。

「申し訳ございません。ここは獣人用の食堂でして」
 すると主人と思われる男性が横柄な口を開く。
「わかっている。食事ではなく紙皿を売ってほしいのだ」
「え?紙皿ですか。どうなさるのでしょうか?」
「どうもしない、ただ欲しいだけだ。獣人が自慢のように冒険者ギルドなどで見せびらかしている。獣人だから譲ってもらえた、特権だと」
「あ~、そうですか…」
 まさか紙皿を自慢するとは思わなかったわ。

「でも、なぜでしょう?ただの紙皿ですよ」
「えぇ、だから価値があるのだ」
「紙がですか?」
「なんだ、知らないのか?この国では紙は貴重品だ。しかもシミひとつない真っ白な紙など考えられない」
「は~、紙はそういうものでは?」
 どこかで聞いた内容だけど?

 そこからお供の人が口をはさんでくる。
「だから問題なのです」
 紙が白いと問題があると…。
「あなたは人族の方ですよね」
「もちろん、そうです」
「では、なぜ獣人などに肩入れをするのでしょうか?」
「肩入れですか?」
「そうです。卑しい獣人の肩を持ち、人族より優遇しているではないですか!!」
「優遇と言っても…」
「では紙皿を売って下さい。売らないと言うなら食事をすれば頂けるなら、私も獣人用の食事を食べていきましょう」
「いえ、それはできません」
「な、なぜでしょうか?」
「人族用ではないからです、人族と獣人族は消化器官が違うからです」
「消化器官?」
「一時的にならいいかもしれませんけど、常用は出来ません」
「食べれるのだな、では売ってくれ。まさか人族を獣人より下の見ていると言うのかおまえは?!」
「ですから、できません」
「それは差別だ!この店はお客を差別する店だ!!」

 3人の男達は店の軒下で騒ぎ立てる。
 仕方がない。
「シルバー、お客さんがお帰りだよ」
わふっあいよ!!』

 私に呼ばれたシルバーは全長2m近くある大きな体をゆすりながら、カウンターの奥から身を起こした。
「わぁ!!なんだこのでかい魔物は?!」

「私がティムしているウォーグウルフのシルバーです」
「こ、これで私たちを脅かすのか?」
「脅しではありません。帰って下さいと言っているのです。それに紙皿は一時しのぎで、これからはまた木皿で提供することにしましたから」
「な、なんだ。もう終わったと言うことか?しかし…」
 紙皿での提供が終わったと聞き、獣人と人族を差別しているのはないと分かり納得したようだ。
 しかし紙皿はどうしても欲しいみたい。

「わかりました、今回だけお出しいたします。ですが食べれなくても知りませんよ」
「オォ、出して頂けるのか。ではありがたい」
 私話を聞き、中年男性はとても喜んだ。

「それではワンコスペシャルとワンコスペシャルが、ありますが…」
「あぁ、私達はなんでも構わないよ」
「では3人共、ワンコスペシャルでいいですね」
「それでお願いするよ」
 そう言う男性より3人分の代金を頂き、ワンコスペシャルをカウンターに出した。

「ほう、これが犬族用の食事か。美味しそうな匂いだな、どれどれ…ガリッ、」
 うっ?!
 最初のスプーン1杯目で、3人は口を押さえた。
 あぁ、汚いな。
 お店の前で吐かないでほしいな。

 人と犬の味覚には違うからね。
 また無理に食べ切ろうとしている。
「お客さん、家に持ち帰って食べてもいいのですよ」
「そ、そうか。その手があったか。で、ではそういたそう。面倒をかけた」
 そう言うと3人はバツが悪そうに手に紙皿を持ち帰って行った。

 まさか紙皿が欲しいと言い出す人がいると思わなかっわ。
 仕方ない。
 明日からまた、木皿に戻さないと。

 お客様が増えると、いろんな人は出てくるわね。
 そうスズカは思うのだった。

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 物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となります。

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