上 下
30 / 110
第2部 王都ファグネリア

第30話 セサルの村

しおりを挟む
 私はミラベルちゃんを村に送って行くことにした。

「シルバーお願い。ミラベルちゃんも背中に乗せてくれる?」
ワフッ、ウォンもちろん、かまわないさ!!』
「ミラベルちゃん。シルバーが背中に乗せてくれるって」
「え?乗れるのですか」
「もちろんよ。さあ、どうぞ」
 そう私が言うとシルバーは、乗りやすい様に腰を落としてくれた。

「さあ、どうぞ」
 私が先に乗りミラベルちゃんは後ろにまたがる。
「行くわよ。シルバーゆっくり頼むわね」
ワフッいくぜ!!』
 一声吠えるとシルバーは私達を乗せ立ち上がる。
 そしてミラベルちゃんに道案内をしてもらいながら村に向かう。

 しばらく歩くと2mくらいの木を縄で継ぎ合わせた防護棚が見えて来た。
「スズカお姉ちゃん、村はあそこです」
 私達は入口を目指して近づく。

「と、止まれ!!」
 見ると門の入口に50歳くらいの、疲れた顔をした男が1人剣を持ち立っていた。
「ゲイリーさん、私です。ミラベルです」
「なんだ、ミラベルちゃんか、脅かすなよ。なんだ、その大きな魔物は?」
「この子は私がティムしている魔物よ」
 そう言いながら私達はシルバーの背中から降りる。

「あんたは調教師テイマーなのかい?」
「えぇ、そうです」
「森に薬草を摘みに行ったらキラービーに襲われてしまって…。その時にスズカお姉ちゃん達に助けてもらったの」
「キラービーに?!それは大変だったな。ありがとう、この子を助けてくれて」
「たまたま、通りかかっただけですから」
「助けてもらったのにこう言うのもなんだが、この魔物は村に入れても大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
 多分…。

「暴れるようなことはないよな」
は大人しいので」
 シルバーの機嫌は私には分かりません。

 道を歩いていて向こうから、可愛いワンコが飼い犬さんとやって来たとする。
「可愛いワンコですね。なにちゃんですか?触っても大丈夫ですか?」
「えぇ、この子は大人しいので」
 カフッ!!
 大丈夫かどうかは飼い主ではなく犬が決めること。
 ワンコにしてみれば、嫌なことや機嫌の悪い時もある…。
 シルバーも同じです。

「では、通っていいぞ。ようこそセサルの村へ」
 ゲイリーさんと言われた人が歓迎の挨拶をするけど声には覇気が無い。
 どうしたのかな?

「さあ、どうぞ。スズカお姉ちゃん、こちらです」
 私はミラベルちゃんに案内され門の中に入る。
 すると柵の内側には50軒くらいの小さな家が建っていた。
 しかし人通りはまばらで、見かけるのは女の人と老人ばかり。
 みんな疲れた顔をしており、若い男手が居ないみたい。
 どうしたのだろう、この活気のない村は?

「ここが家です」
 そう言うミラベルちゃんが指を指したのは、木造の荒れ果てた家だった。
 シルバーは入口で待たせて家の中に入る。
「おかあさん、ただいま!!」
 中は8~10畳くらいの広さで、板の間と土間に仕切られていた。
「ミラベル、お帰り。どこに行っていたの?それにそちらの方は?」
 家の中には27~29歳位の痩せた女の人が居た。

「起きて大丈夫?おかあさん。薬草を採りに行ったの…。そしたら魔物に襲われて」
「まあ?!あれほど森は危険だと言ったでしょう!!」
「でもおかあさんが苦しそうだったから…。その時にスズカお姉ちゃん達に助けられたの」
「そうだったの。ゴホ、ゴホ、私は母のエレーナと言います。本当にありがとうございました。馬鹿ね、この子は…おかあさんなら大丈夫よ。ゴホ、ゴホ、苦労をかけるわね」
「おかあさん、それは言わない約束だよ~」
 そう言いながら親子は抱き合った。

 昭和の寸劇か?
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...