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第2部 王都ファグネリア

第26話 1日の始まり

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 朝になった。
 私は寝間着を着替え、桶に貯めておいた水で顔を洗う。

 水道なんて勿論ないから、ネットスーパーで洗面器と水を購入した。
 便利な生活に慣れた私には『水道ありません、電気もありません』と、言われても馴染んだ生活からは離れられないものね。

 ちなみに購入した水は『六個の天然水』。
 1ケース6本入りだから!!
 なんちゃって!
 きゃはははは!

 ふぅ~、朝から一人芝居は疲れるわ。

 昨日は冒険者パーティ『燃える闘魂』の人達が、お友達を連れてきてくれて売上は9人で3,600円。

 ここの家賃が月10万か~。
 目指せ週休二日制なんだけど、やはり所得が低いこの世界ではきついかな。

 後は商人のヤルコビッチさんに卸している、ジャムが定期的に売れればいいけど。

 聞いた話ではこの世界の1年は360日で1ヵ月は30日。
 国王生誕記念のような日以外は、特別な祝日は特にないからカレンダーは30日分が書かれた紙1枚で足りてしまうそうだ。

 すると何やらガヤガヤする外から声が聞こえる。
 なんだろう?こんな時間に? 
 私はそう思い家の横引の入口の木のドアを開けた。

「遅いよスズカさん。いったい何時に店を開けるのさ!!」
 するとそこには『燃える闘魂』のメンバーと、昨日来てくれた『愛のダリーナ』のメンバー5人の他に20人くらいの獣人が待っていた。

「まあ、こんなにたくさんのお客さんが?!」
「今は冬だから日が短く働く時間が俺達は短いのさ。だから食堂は、もっと早く開けてもらないと困るよ」
 ゲオルギーさんが困った顔で私に文句を言う。

「昨日食べたらあまりにも美味しかったから、仲間を連れてきてやったぜ」
 そこには昨日の冒険者パーティ『愛のダリーナ』のドミニクさん達もいた。
「ありがとうございます。お待たせいたしました、『屋台の店シルバー』開店です!!」
「 オォ~~~!! 」

 お客さんが店の中に殺到する。

「スズカさん、ワンコスペシャルを頼みます!!」
 犬族のジョヴァンニさんが叫ぶ!!

「俺はニャンコスペシャルだ~!!」
 犬族のジョヴァンニさんが叫べば、猫族のイングヴェさんも負けじと叫ぶ。
 いったいこれはなに?

 初めてのお客さんはメニューに戸惑っているようだ。
「じゃあ、俺もそれを頼む!!」
「俺も同じものを頼むぜ!」
「かしこまりました~!!スペシャル入ります~!!」
 そう言いながら後ろを振り向いて厨房に向い声を出す。
 まあ誰もいないけど…。
 一人だと思われると怖いから、誰か奥にいると思ってもらえれば…。

 メニューを迷う人もほとんどいない。
 なぜなら初めての店に来たときは、よくわからないからメニューのおすすめ品を選ぶのが無難だからね。
 お店にとってのおすすめ品は、利益率の高いものが『おすすめ品』なんだけどね。
 メニューも各2種類だけだから特に問題も、なくどんどんオーダーを出していく。


 そして忙しい時間はあっと言う間に過ぎていく…。


「ありがとうございました~!!」
「また夕方にくるから頼むぜ、スズカさん」
 そう言いながら『燃える闘魂』のメンバーが店を出ていく。

 ドライフードを皿に盛りペースト状の物をかけているだけだから、お客の回転がとても速い。

 今朝の売上は21人で8,000円。
 夜もこれだけお客が来てくれれば、私の食費を入れても十分にやっていける。


 でも問題はその後の洗い物ね。
 だって水道がないから。

 昨日は汚れたお皿を洗うのに、表通りの井戸まで行き水を汲んでそこで洗った。
 やはり水道がないのは不便に感じる。

 それにすぐに洗わないと汚れが落ちにくいし…。
 どうしよう?
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