18 / 110
第2部 王都ファグネリア
第18話 冒険者登録
しおりを挟む
「これはいったい、何の騒ぎだ?」
2階から降りて来た2人組の内の1人が大きな声で聞いてくる。
別に騒いでませんけど。
至って静かです。
周りを見渡すとやっと、床からみんな立ち上がるとことだった。
ほらね。
「あぁ、ギルマス!!」
「ジェシー、これはどうしたことだ?説明してくれ」
ギルマスと呼ばれた立派な体格の男性が、ジェシーさんに聞いてくる。
「はい、実は…」
ジェシーさんは、起こったことを手短に話している。
ゴメスという冒険者がジョヴァンニさんやイングヴェさんに、言いがかりを付けてきたこと。
そして調教師登録に来ていた私に目をつけ迫ったこと。
使役されている魔物が危険を感じ、助けに飛び込んできたことを話している。
「そうか、それなら仕方があるまい。本来ならギルドでの揉めごとは処分が必要だが、違う意味での罰はもう受けているみたいだから今回はそれで許そう」
そう言うとゴメスのチビッた水たまりに目をやった。
「床を綺麗にしたら、ここを出ていけ!!」
「は、はい。すみませんでした!!」
ゴメスはヘコヘコしながら、清掃道具を渡される。
仲間から『チビりん』と馬鹿にされたゴメスは、その日以来この王都から姿を消したと言う。
「スズカさんと言ったね。嫌な思いをさせて悪かったね。私はここでギルドマスターをしているグリフィスだ」
「相川 涼香です」
「ほう、家名持ちなのか?君は貴族かね?」
「いいえ、違います」
「そうか、まあ人ぞれぞれ事情はあるからね」
そうグリフィスさんは言うと、1人でなにか納得をしていた。
「後は頼む。しかしAランクの調教師が我がギルドで登録してもらえるとは。今後を期待しているぞ」
そう言いながらギルマスは2階に戻って行った。
私のことをAランクの調教師だって。
「では改めて登録をお願いいたします」
「ではこの用紙に記入してください。書けなければ代筆いたしますが?」
「大丈夫です、書けますから」
失礼だな、文字が書けるかなんてさ。
私は大人だぞ!!
俺は獣紙皮に必要事項を書くことにした。
名前:相川 涼香
種族:人族
年齢:17歳
性別:女
使い魔:シルバーウルフ
特技:
特技?
あぁ、ここは自己PRというやつね。
う~ん、特にないか。
取りあえず何か書いておこうか。
特技は裁縫と料理っと。
これでいいかしら?
「書けました。これでお願いします」
「はい、特技は…裁縫と料理ですか?」
「えぇ、そうです」
「そ、それは随分、家庭的ですね」
「いつでもお嫁に行けますから」
「そ、そうですね」
「そうですよ」
「 あははははは!! 」
ジェシーさんは私が書いた登録書を見ながら、ギルドカードを書いている。
手書きなんて大変ですね。
以前の世界ならコンピューターで、チャチャチャとできたのに。
「はいできました。このカードが身分証となりますので、無くさないでください。紛失されると再発行に5,000円かかります。また貴方が死亡された時の身元証にもなりますから、大切にしてください」
「はい、ありがとうございます」
「スズカさんはビーストテイマーですね」
「ビーストテイマーですか?」
「えぇ、そうです。何を使役しているかによって言い方が変わります」
「そうなのですか?」
ジェシーは慣れた言い方で、説明をしてくた。
きっと同じことを何百回も言っているんだろうな。
冒険者にはランクがありS、A~F。
上に行くほど報酬が多い代わりに難易度が高い。
登録時はFランクで1つ上のEランクまでの依頼を受けることが出来る。
失敗すると報酬の半分の違約金を払うことになるので、成功率を上げるためにもチームで活動する冒険者が多い。
依頼は毎朝、掲示板に張り出され早いもの勝ちとなる。
良い依頼を受けるため朝はとても混み、日が暮れる前にみんな戻ってくるので昼間の今の時間はギルドは空いているのだそうだ。
「また当ギルドは24時間開いております。魔物が現れ討伐が必要になった場合などは、ランクによっては強制参加になることもあります」
「そうですか!私が参加しても役には立たないと思いますけど。わかりました、ありがとうございました」
「じゃあ、俺達は行くぜ、スズカさん」
「あっ、今まで待っていてくれて、ありがとうございました。ゲオルギーさん」
「スズカさん。食堂を始めたら必ず伺いますから」
ジョヴァンニさんが、気の早い話を捨て来る。
「まだお店をやるかどうかは、わかりませんから」
「そんな~、勿体ないですよ。あんなに美味しいのに」
目を潤ませながら、イングヴェさんも私に訴えてくる。
「あはは、大袈裟ですね」
「じゃあ、スズカさん。まあ会おう!!」
「さようなら」
「じゃあ!!」
そう言いながら冒険者パーティ『燃える闘魂』の4人はギルドを出て行った。
「スズカさんはお料理が得意なのでしょうか?」
ジェシーが聞いてくる。
そんな訳がないでしょ。
「いいえ、ジョヴァンニさん達が言っていたのは、猫族と犬族用の食事のことです」
「猫族と犬族用のですか?」
「えぇ、彼らにすると美味しいみたいです」
「そうですか、獣人用の食事とは初めてです。普段、彼らは差別を受ける場合も多くて、入店できない店もあるそうです」
「酷い!そんなことがあるのなんて」
「ですから彼ら専用の食堂ができたらきっと喜ぶでしょう」
そんな差別があるんだ。
差別のない平和な国で生まれた涼香には、その辛さはわからなかった。
2階から降りて来た2人組の内の1人が大きな声で聞いてくる。
別に騒いでませんけど。
至って静かです。
周りを見渡すとやっと、床からみんな立ち上がるとことだった。
ほらね。
「あぁ、ギルマス!!」
「ジェシー、これはどうしたことだ?説明してくれ」
ギルマスと呼ばれた立派な体格の男性が、ジェシーさんに聞いてくる。
「はい、実は…」
ジェシーさんは、起こったことを手短に話している。
ゴメスという冒険者がジョヴァンニさんやイングヴェさんに、言いがかりを付けてきたこと。
そして調教師登録に来ていた私に目をつけ迫ったこと。
使役されている魔物が危険を感じ、助けに飛び込んできたことを話している。
「そうか、それなら仕方があるまい。本来ならギルドでの揉めごとは処分が必要だが、違う意味での罰はもう受けているみたいだから今回はそれで許そう」
そう言うとゴメスのチビッた水たまりに目をやった。
「床を綺麗にしたら、ここを出ていけ!!」
「は、はい。すみませんでした!!」
ゴメスはヘコヘコしながら、清掃道具を渡される。
仲間から『チビりん』と馬鹿にされたゴメスは、その日以来この王都から姿を消したと言う。
「スズカさんと言ったね。嫌な思いをさせて悪かったね。私はここでギルドマスターをしているグリフィスだ」
「相川 涼香です」
「ほう、家名持ちなのか?君は貴族かね?」
「いいえ、違います」
「そうか、まあ人ぞれぞれ事情はあるからね」
そうグリフィスさんは言うと、1人でなにか納得をしていた。
「後は頼む。しかしAランクの調教師が我がギルドで登録してもらえるとは。今後を期待しているぞ」
そう言いながらギルマスは2階に戻って行った。
私のことをAランクの調教師だって。
「では改めて登録をお願いいたします」
「ではこの用紙に記入してください。書けなければ代筆いたしますが?」
「大丈夫です、書けますから」
失礼だな、文字が書けるかなんてさ。
私は大人だぞ!!
俺は獣紙皮に必要事項を書くことにした。
名前:相川 涼香
種族:人族
年齢:17歳
性別:女
使い魔:シルバーウルフ
特技:
特技?
あぁ、ここは自己PRというやつね。
う~ん、特にないか。
取りあえず何か書いておこうか。
特技は裁縫と料理っと。
これでいいかしら?
「書けました。これでお願いします」
「はい、特技は…裁縫と料理ですか?」
「えぇ、そうです」
「そ、それは随分、家庭的ですね」
「いつでもお嫁に行けますから」
「そ、そうですね」
「そうですよ」
「 あははははは!! 」
ジェシーさんは私が書いた登録書を見ながら、ギルドカードを書いている。
手書きなんて大変ですね。
以前の世界ならコンピューターで、チャチャチャとできたのに。
「はいできました。このカードが身分証となりますので、無くさないでください。紛失されると再発行に5,000円かかります。また貴方が死亡された時の身元証にもなりますから、大切にしてください」
「はい、ありがとうございます」
「スズカさんはビーストテイマーですね」
「ビーストテイマーですか?」
「えぇ、そうです。何を使役しているかによって言い方が変わります」
「そうなのですか?」
ジェシーは慣れた言い方で、説明をしてくた。
きっと同じことを何百回も言っているんだろうな。
冒険者にはランクがありS、A~F。
上に行くほど報酬が多い代わりに難易度が高い。
登録時はFランクで1つ上のEランクまでの依頼を受けることが出来る。
失敗すると報酬の半分の違約金を払うことになるので、成功率を上げるためにもチームで活動する冒険者が多い。
依頼は毎朝、掲示板に張り出され早いもの勝ちとなる。
良い依頼を受けるため朝はとても混み、日が暮れる前にみんな戻ってくるので昼間の今の時間はギルドは空いているのだそうだ。
「また当ギルドは24時間開いております。魔物が現れ討伐が必要になった場合などは、ランクによっては強制参加になることもあります」
「そうですか!私が参加しても役には立たないと思いますけど。わかりました、ありがとうございました」
「じゃあ、俺達は行くぜ、スズカさん」
「あっ、今まで待っていてくれて、ありがとうございました。ゲオルギーさん」
「スズカさん。食堂を始めたら必ず伺いますから」
ジョヴァンニさんが、気の早い話を捨て来る。
「まだお店をやるかどうかは、わかりませんから」
「そんな~、勿体ないですよ。あんなに美味しいのに」
目を潤ませながら、イングヴェさんも私に訴えてくる。
「あはは、大袈裟ですね」
「じゃあ、スズカさん。まあ会おう!!」
「さようなら」
「じゃあ!!」
そう言いながら冒険者パーティ『燃える闘魂』の4人はギルドを出て行った。
「スズカさんはお料理が得意なのでしょうか?」
ジェシーが聞いてくる。
そんな訳がないでしょ。
「いいえ、ジョヴァンニさん達が言っていたのは、猫族と犬族用の食事のことです」
「猫族と犬族用のですか?」
「えぇ、彼らにすると美味しいみたいです」
「そうですか、獣人用の食事とは初めてです。普段、彼らは差別を受ける場合も多くて、入店できない店もあるそうです」
「酷い!そんなことがあるのなんて」
「ですから彼ら専用の食堂ができたらきっと喜ぶでしょう」
そんな差別があるんだ。
差別のない平和な国で生まれた涼香には、その辛さはわからなかった。
15
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-
ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。
第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。
スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。
迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。
空間を切り取り収納できる『空間魔法』。
思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。
少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか?
『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。
物語はまったり、のんびりと進みます。
※カクヨム様にも掲載中です。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる