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第2部 王都ファグネリア

第15話 突然

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 私の名前は相川あいかわ 涼香すずか
 32歳で他界し女神ゼクシーに誘われこの世界にやって来た。

 17歳に若返り転移して2日目、途中で知り合った商人のヤルコビッチさんと冒険者のゲオルギーさんとアレクサンデルさん。
 ジョヴァンニさんとイングヴェさんの5人と王都を目指している。

 さすがに私に歩きは可哀そうだと思われたのか、ヤルコビッチさんが乗る馬車の御者席ぎょしゃせきの横に座らせてもらっている。



 しばらく進んで行くと大きな城壁が見えた。
 あれが街?
 ではワンコのレッド、ブルー、イエロー、ピンクとはここら辺でお別れね。

「ヤルコビッチさん、止まって頂いてもいいですか?この子達とお別れをするので」
「あぁ、そうですね。街が近づていてきましたから、そうした方が良いでしょう」
 私は止まった馬車から降り、ワンコ達の側に近付く。

「あなた達4匹とはここでお別れよ。みんな元気でね」
 レッド『姉さん、兄貴。ここでお別れですか』
 ブルー『何かあれば力になりますから』
 イエロー『また会えますよね』
 ピンク『子供をたくさん産んで群れを大きくしますね』
 シルバー『また会おう、お前達』

『『『 あ~にき~!! 』』』

「ワオ~ン、ワン、ワン、ワン、ワン、」
 私は口を尖らせワン、ワン、と泣く!!

 そして私は再び馬車に乗った。
「ヤルコビッチさん、お願いします」
「もう、お別れは済んだのですか?」
「えぇ、これが最後になる訳ではありませんから」
「そうですね。では行きましょうか」
「はい」

 私達を見送るワンコ4匹は、とても寂しそうな顔をしているように感じた。
 途中シルバーが何度も後ろを振り返っていたけど、やがてそれも見えなくなった。
 

 しばらく進むと城門が見えて来た。
 何という高い壁なの、ここまで高くする意味があるのかしら?
「随分と壁が高いのですね」
 ヤルコビッチさんに話しかけた。
「えぇ、街は魔物や野盗がいつ襲ってるかわかりません。ですからそれから守るために、城壁は高く丈夫にしてあるのです」
「そうなのですか」
「さあ、入りましょうか」

 そう言われ私達はそのまま進む。
 入口の門には門番の兵士が2人立っていた。
 シルバーの姿を見て慌てて剣を構えている。
「待ってください!!大丈夫です、彼女がテイムしている魔物です」
 ヤルコビッチさんが、慌てて説明してくれる。
「なんだ、驚かせるなよ」
 門番さんも驚きから覚めて剣を鞘に納めた。

「まあ、この魔物が本気で暴れたら我々2人では手に負えないけどな」
「まあ、そうだな。さあ身分証を見せて」
 そう言われてヤルコビッチさんや、冒険者のゲオルギーさん達はそれぞれ身分証を出している。
 私の番が来た。

「私は村から出て来たばかりなので身分証はありません。これから冒険者ギルドに行って調教師テイマーとこの子の登録をするとことです」
「それなら街に入るのに君は500円、魔物は300円もらうよ。冒険者ギルドに所属すれば、次回からは掛からないから」
「お金が無くて、手持ちは魔石しかないのですが」
 私はそう言って魔石を手の平に乗せて見せる。
「あぁ、魔石ならこの小さいの8個で800円だよ」
「換金もお願いで済ますか」
「分かった、こちらについて来て」

 そう言われ門番の兵士と詰め所に移動する。
 私は残っている魔石大25個を換金することにした。
「この魔石なら25万円分だね」
「ありがとうございました」
 そう言って私はみんなが待つ馬車に戻った。


 街の中に入るとシルバーを見て、すれ違う街の人々はみんな驚いている。
 魔物はやっぱり珍しいのかな?
 私は辺りをキョロ、キョロと見渡す。
「王都は人がたくさんいて驚いたでしょう」
 ヤルコビッチさんが、私に聞いてくる。
 え?これがたくさん?

 私は王都が思っていたより小規模であることに驚いていた。
 人も少なく町並みは木造のあばら家が建ち並ぶ、以前テレビで見た終戦直後の風景に見えていた。
 あぁ、ここは以前の世界とは違う発展途上国なのね、とそう思った。

 ヤルコビッチさんとは一旦お別れし、お店の場所を聞き後で伺うことになった。
 私達は冒険者ギルドに向かう。
 先に私の冒険者登録が済まないと、自由に動くことが出来ないからだ。
 冒険者パーティ『燃える闘魂』の皆さんは、依頼完了のサインをヤルコビッチさんにもらいギルドに届けを出すみたい。
 私はギルドが初めてだからシルバーは入口で待たせ、ゲオルギーさん達と一緒に入ることにした。
 「良い子にしているのよシルバー。ここは人の街だから自分から相手に何かをしては駄目だからね。でも嫌なことをされたり、自分の身を守るためならいいわ」
 魔物だからって迫害されても良い訳が無いからね。


 ギィ~~。
 私達はスイングドアを開け中に入る。
 人はまばらで窓口は5つ、10代後半から20代半ばの女性がそれぞれ立っている。
 ゲオルギーさん達は緑の髪をした、一番若そうな十代後半の女性の受付に向った。
 やっぱり若さか !若いほうがいいのか?!
 ピチ、ピチ、チャプ、チャプ、ラン、ラン、ランか?

「この時間、冒険者は仕事に出ていてるから空いているのです」
 そんなことを考えていると、犬族のジョヴァンニさんが教えてくれる。
「そ、そうなのですか」
 そう言えばギルドは仕事を斡旋するところだって聞いたわ。
 昼間のこの時間にまだ仕事を探してたら生活ができないよね。

「やあ、ジェシー。元気だったかい?」
 ゲオルギーさんが受付の女性に声を掛ける。
 ジェシーと言うのね、あの人は。
 まあ異世界に来て住民が平たい顔で、圭子とか太郎だったら夢が無いわよね。

「はい、ゲオルギーさん。元気にしていましたよ」
「護衛依頼完了だ、頼む」
 そう言うとヤルコビッチさんのサインが書かれた完了書を渡した。
「はい、確かに確認しました。ただいま報酬をお持ちしますね」
 一旦、奥に入り戻って来た。
「お待たせいたしました。報酬になります」
「ありがとう。頂くよ」
 そう言うとゲオルギーさんは、巾着袋の様な物に硬貨を入れた。

「あぁ、それから彼女の登録を頼むよ」
「彼女さんですか?」
 ジェシーが驚いている。

 え?いきなり告白ですか?
 そんな素振りも今まで見せなかったのに、そんな突然…。
 心の準備が…。
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