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第1部 転移者

第4話 空耳

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「 歩こう歩こう♫、私は現金大好き♪~」
 字余り!

 あれから私は随分歩いた気がする。
 転移した時は確か太陽は低いところにあったけど、今は真上に昇っている。
 何時間歩いているんだろう?
 さすがにもう足が痛い…。
 
 腕時計をネットスーパーで買おうと思ったけど、買った時にその時間が合っているか分からないからやめておいた。
『この道を真っ直ぐに行けば街に行けます』、そう言ったよね女神様…。
 まさか逆方向だったとかはないのね。
 道端に立っていたから右側に真っ直ぐなのか、左側に真っ直ぐなのかなんて普通考えないよ~。
 引き返そうか?
 でもどのくらいで着きます、とも言われてないから合っているのかもしれないし。
 それに道である以上はその先には、どちらに進んでも村か街には着くはずよ。
 そうよ。私って頭がいい!!
 このまま行こう。

 太陽は沈み始め辺りは暗くなっていく。

「歩こう歩こう⤵、歩くの大好き…、どんどん行こう↘」
 はあ、はあ、はあ、
 もう歩けません。
 こんなところで野宿ですか?
 野宿に必要な毛布とかキャンプ用品をネットスーパーで揃えたら、街に着く前に資金が無くなりそうだわ。
 それに女神様は魔物が居る様なことも言っていたけど。
 身を守るのはネットスーパーで購入した鋼の包丁1本なのね。
今宵こよい虎徹こてつは血に飢えておる!!』ぐはははは!!
 
 ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、
  ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、
       えっ?!
  ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、
   ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、

 そんな一人劇場をしていると突然、道の前に白毛に黒の大型犬が3匹現れた。
 シベリアン・ハスキー??

 後を振り向くと、そこにも2匹居た。
 挟まれた?

 夕暮れ時の散歩かな?
 でも飼い主さん、放し飼いは駄目だと思うけど。

 前方に居る3匹の内、1匹が特に体が大きく毛並みも白ではなく銀色に見えた。
 すると突然、後の1匹が私の腕に噛みついて来た!!
 キャ~~!!
「ガンッ!!」
 モグ、モグ、モグ、

 その隙に今度は、前方の1匹が私の頭に噛みついてくる。
「ガシッ!!」
 モグ、モグ、モグ、

 あれ?
 痛くないわ。
 な~んだ。
 5匹共、体は大きいけどきっとまだ子供なのね。
 甘噛みするなんて。

 すると残りの3匹も、私の手足に噛みついてくる。
 さすがにこれでは堪らないわ。

 こら!
 離れなさい!!
 そう思い私は離れないワンコ達に、チョップを軽くお見舞いしていく。

 バスッ!!バスッ!!ボコッ!!バスッ!!ボコッ!!

   キャン!!キャン!!キャン!!キャン!!キャン~!!

 ワンコ達は涙目になりながら、私から離れていく。
 軽くですよ。
 軽く叩いただけでしょう?

 もう、大げさなんだから。
 元々、犬や猫好きの私はワンコ達をワサワサ撫でていく。

 ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ
    キャウ~~ン!! キャウ~~ン!!
  ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ
    キャウ~~ン!!キャウ~~ン!!
  ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ
    キャウ~~ン!!キャウ~~ン!!
   ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ
  ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ、ワサワサ

 ワンコ達は観念したようにお腹を出して、私に撫でられるままになっている。
 そして私はしばらくモフモフを堪能した後、ワンコ達から離れた。

 するとワンコ達5匹が集まり、なにやら顔を突き合わせている。
 ワンコ部下A『兄貴、この女は駄目ですぜ』
 ワンコ部下B『そうですよ。全然、歯が立ちませんよ』
 ワンコ部下C『もう敗北ですぜ』
 ワンコ部下D『こんなことは初めてでさ』
 銀色のワンコ『そうだな。完全に俺達の完敗だ。俺達は力が全てだ。負けた以上は、この女がこの群れの新しいボスだ!!』
 ワンコ部下A・B・C・D『『『あ、兄貴~!!』』』

 ワン、ワン、ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、ワン、
  ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、ワン、ワン、ワン、
   ワン、ワン、ワン、ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、

 私の耳にはワンコ達が、そんなことを言っているような気がした。
 まあ、あくまで私のアフレコ、空耳だけど…。



 涼香すずかは知らなかった。
【スキル】異世界言語の能力により、ある程度の知能がある生き物とならコミュニケーションが取れると言うことを。
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