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第13部 蒸気機関車

第123話 打ち合わせ

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 俺はヨハネス様が連れて来た、作業員に一連の作業内容を教える。
 初めてだから最初はちゃんと教えてやらないとね。

 その中に調味料製造の頃から手伝ってくれている、顔なじみの派遣の人が20人くらい居る。
 その人達にアルバンさんが指示を出す。

 まずはアバンス商会へ店頭販売用に石炭を届けてもうらう。
 火力の強い石炭を、木炭代わりに使ってもらえるように販売するんだ。

 そして別班は商業ギルドと鍛冶ギルドに石炭、鉱物を卸す役割だ。

 貨物車から石炭、鉱物を、それぞれスコップでリヤカーに降ろしていく。
 そして彼らはエリアス商会の文字と大きな鷹が世界を脚で掴み、翼を広げているロゴの入ったリヤカーに山盛りの鉱物を積み各自、配達の為に駅を出ていく。

「エリアス様。お願いがございます」
「なんでしょうか、アルバンさん」
「実は今までは良かったのですが、ここまで大きく事業展開するとなると手が足りません」
「まあ、そうなりますね」

「実は以前から派遣されて来る人達ですが、彼らを直接わが社の社員にしたいのですが、いかがでしょうか?真面目で勤勉ですので」
「勿論構いません。人数や待遇面もアルバンさんにお任せしますから」
「え、お任せ頂けるのですか?」
「これから商会は大きくなります。それに伴い任せられる人材が必要となります」
「これから更にですか!」

「ちょうど今は出発地点を一歩、踏み出したくらいのところですね」
「これで一歩ですか!!」
「えぇ、そうです。だからまず、人を雇い責任者を育てていましょう」
「わ、分かりました。これからが本番なのですね」



「ヨハネス様、お願いがあります」
「なんでしょうか、エリアス様」
「あなたのところから派遣されている方を、アルバンさんが何人か社員にしたいと言っています」
「おぉ、そうでしたか」

「その際に教会には1人に付き、3ヵ月分の給与と同額分を寄付いたします」
「そんなに頂けるのですか」
「教会も直接雇用になるとその分、お布施が減りますから」

 今、シャルエル教会から派遣されて来ている人達は、エリアス商会が教会に寄付と言う名目で給与を支払い、その中から教会はお布施として一部をもらい残りを労働者に支払っている。

 そして出向先に直接雇用となることで教会も収入が減る。
 だから3ヵ月分の給与と同額分の金額を支払う。
 紹介予定派遣制度みたいなものだ。


 そして配達に行った人達が、戻って来るのを待って社員雇用の話をした。
 全員とても驚き、頑張って働いていた甲斐があったと喜んでいた。
 人数は全員で20名。
 調味料製造の頃からの付き合いだ。
 これからは主にその人達に駅を任せることになる。

 今は15時くらいだろうか。
 蒸気機関車から鉱物を全て降ろし、倉庫に移し作業は終わった。
 だが俺はアレンの街でやることがある。
 イーヴァインさん達だけ、先にセトラー領に帰ってもらった。

 
 俺とアルバンさん、大司教ヨハネス様、アバンス商会のアイザックさんでエリアス商会に向かっている。
 1週間ぶりに来たはずなのに、シャルエル教の建物は更に大きくなっていた。
 そして入口には『シャルエル工業団地』と大きな看板が付いている。
 意図的に『教』は抜いているんだね。
 その方が聞こえが良いな。


 その敷地の中にエリアス商会と、アバンス商会がある。
 
 俺達は3階建てのお屋敷の様なエリアス商会に入った。

「お帰りなさいませ」
「ただいま、今帰ったよアルシア」
 ドアの向こうでアルバンさんの奥さんの、アルシアさんが出迎えてくれた。

「こんにちわ、アルシアさん」
「まあ、エリアス様、ようこそおいでくださいました」

 挨拶を済ませた後、俺達4人は3階の客間に移動した。

 奥のソファに俺とアルバンさん、テーブルを挟み向かいのソファはヨハネス様、アイザックさんだ。

「それでは今後の打ち合わせをしましょうか?」
「エリアス様、お願いがございます」
「なんでしょうか?アイザックさん」
「実は自転車を売ってほしいのです」
「自転車ですか?それはこれからシャルエル製鉄所で、作って行くはずですが」
「それでは間に合わないのです」
「どう言うことでしょうか?」
「私からお話いたします」
 アルバンさんが代わりに話し出す。

「実は1週間くらい前から、自転車の問い合わせが多いのです。スケルの森の侯爵様が乗っていたと。丁度、エリアス様がドゥメルグ公爵様のところに伺った日ぐらいからです」
「あっ!」
「それと貴族らしい大人と女のお子さん4人が、見たことも無い乗り物に乗り、チリンチリンと、ベルを鳴らしながら城門の方に向っていくのを見たと言う人も」
「あの日ですか」

 思い出した。
 あの日はアレン領に入ってから俺は、自転車に乗りエリアス商会まで来たんだ。
 そしてその後、ドゥメルグ公爵、執事のアルマンさん、義理の妹カトリーンと4人で自転車に乗り城門まで来て駅を創ったんだ。

 調子に乗ってベルをチリンチリン!チリンチリン!と、鳴らすから目立ったのか。
 いいや、逆に良い宣伝になったか。

 そのことを3人に話した。
 そして良いことを思い付いた。
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