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第13部 蒸気機関車

第118話 生活の基礎

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 あれから2日経った。
 俺はイーヴァインさん達と一緒に蒸気機関車に乗り、ドワーフのマルコス親方達と約束をした場所の近くまで来ていた。

 そこから俺は歩いて約束の場所に向かった。
 すると20人くらいのドワーフ達が居るのが分かった。
「おいエリアス。みんな連れて来たぞ」
 マルコス親方が人の中から出てきた。

「こんにちはマルコス親方。これはどうしたことでしょうか?」
「な~に。みんなに話したら移住したいという事になってな」
 見るとそれぞれ手荷物を各自持っていた。

「本当ですか。それは良かった。それでは、行きましょうか」

 そして漆黒の蒸気機関車の姿が見えてくると、みんな興奮しだした。
「す、凄~い!」
「大きい~」
「こんな大きな物が走るのか」
 ドワーフの人達はまるで子供のように、目を輝かせて蒸気機関車を見ている。
 
「どうやったら動くんだ?」
「動かし方を教えてくれ」
 みんな口々に言いはじめる。

「蒸気機関車を動かす側は、そんなにたくさんの人は乗れません。だから順番でよければ見ることは出来ますから」
「おぉ、それでいいぞ」
「順番か…」
「ではみなさん、客車に乗ってください」

 ドワーフ達がぞろぞろと客車に乗り込む。
「では、みなさん。席に座ってください。出発しますから」
 俺はマイクを使い、機関主側に居るイーヴァインさん達に出発するように伝えた。

    〈〈〈〈〈〈〈〈 ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 汽笛の物凄い大きな音が辺りに響く!
 シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
     シュポポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ

 そしてC61シロクイチは走り出す。

「こ、これは凄い!」
「速い~」
 ドワーフ達はみんな驚いている。
 そして彼らは交代で蒸気機関車側に行き、操作をしているところを見学した。

 マルコス親方達はとても興味を示し、どうやって動くのか聞いてくる。
 石炭を燃やしてお湯を沸かし、発生した蒸気で動輪を回していることを説明した。

「なんと湯気を利用しているとは?!」
「そんなことは思い付かなかった」
「エリアスがこんな凄いことを考えたのか?」
「いいえ、マルコス親方。俺が考えたわけではありません」
「では誰が?」
「それは言えません」
「それはそうだな、そんな簡単に技術を教えることはせんだろう」

 彼らを纏めているのはマルコス親方で、長老的な存在はいないそうだ。
 彼らは全員で21人。
 大人の男性10人、女性7人、子供が4人で大人の女性7人は既婚者だ。
 だが女性と男性の区別がつかない。

 俺はマルコス親方と同じ席側に座り、向き合っている。
 隣に座っているマルコス親方の奥さんを紹介されたが、言われないと女性と分からないくらいだ。
 みんな男女共に髭を生やしている。
 よく見ると女性は男性よりやや体が小さく、鼻の下の髭を剃っているようだが。

 セトラー領まではまだ時間がかある。
 俺はストレージの中でスティルワインを『創生魔法』で造り振舞った。
「セトラー領に着くまでの間、ささやかですが楽しんでください」
「おう、これはこの前飲んだワインとかいう酒か」
「えぇ、そうです」
「弱い酒だが美味しかったな」

 みんなスティルワインを気に入ったようで楽しそうだ。
 俺はマルコス親方に他の種族の事を聞いてみた。
 すると遠くに見かけることはあっても、交流は無かったという。
  
「エリアス、お前はこの森で何をやりたいのだ?」
「まあ、あなた。エリアス様と言わないと駄目でしょう。私達の領主様なんだから」
 マルコス親方の横に座っている奥さんのエリーズさんが言う。

「俺は別に構いませんよ。堅苦しいのは苦手ですから」
「なら、これからも気軽に話すぜ」
「えぇ、それでお願いします。さっきの質問の答えですが、そうですね。俺は面白楽しく生活できてければいいと思ってます」

「面白楽しくか、それが出来ればいいが難しいな」
「その通りです。その為には生活の基礎を固めなければなりません」
「生活の基礎か」

「えぇ、基礎が出来れば生活も安定し安心して暮らしていけます。でも1人では出来ません。だからみんなで力を合わせ、10年、20年後の未来のために頑張るのです」
「未来のためにか。森に暮らしていると食っていくのに精いっぱいだ。そんなことは考えられなかった。だがそれを目指しているなんて。だがなぜ異種族なんだ?」

「どういう意味でしょうか?」

「人族のお前がなぜ異種族と関わる」
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