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第13部 蒸気機関車
第117話 蟹汁
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岩の隙間の入り口から中に入って行く。
俺達、山小人は山岳地帯の内部に住居を構えて生活する種族だ。
「ただいま帰ったぞ」
「お帰りなさい、マルコス親方」
戻った3人はみんなに歓迎された。
「レッドクラブは、どうでしたか?」
待っていた住民の1人が言う。
「あぁ、レッドクラブはもう通り過ぎた。というよりほとんどが討伐されたよ」
「討伐された?」
「あぁ、エリアスという奴が居て…」
外に出てあったことをマルコスは話始める。
レッドクラブを追っていくと、ほとんどのレッドクラブは討伐されていたこと。
その倒したレッドクラブを、鍋で茹でて食べていた男が居たこと。
そのレッドクラブがとても旨く、その時にだしてもらったスティルワインというブドウから造った酒の口当たりがとてもよく、レッドクラブによく合っていたこと。
男が持っていた刀がとても美しく、目を見張るものがあったこと。
証拠としてバスターソードを3人分、もらってきたこと。
そのバスタードソードを手に取り、住民達は驚いている。
鍛冶を自負する自分達の技術でも、とても真似できない代物だったからだ。
とても美しく芸術的な輝きをしていた。
石炭という鉱物があれば、これができるという。
そして鉱山を持っており鉄、鋼、銀、銅、鉛が使い放題だそうだ。
だが解せないことがある。
なぜ、マルコス親方達に合うバスターソードを3本持っていたのかだ。
ドワーフは人族に比べ身長が低い。
人族用のバスターソードなら長すぎる。
だが各自の身長に合うように3本共、微妙に長さが違うのだ。
まるで3人の身長に合わせたかのように。
いったいどうやって、事前に分かったのか?
そしてサーベルウルフの群れを一瞬で肉片に変えた、血塗られた黒い悪魔を造った男だと。
その血塗られた黒い悪魔の整備を、俺達に任せてもらえると。
住民達は興奮した。
綺麗な武器が造れるだけではなく、超破壊兵器の整備も任せてもらえるとは。
そしてそれを研究し、更に高みを目指すのだ!
村は高い塀で囲み、小麦や大麦、野菜も作って生活している。
住民は人族の他にダークエルフ、鳥人族、ホビットもいる。
異種族に対しての偏見もない様だ。
この出会いは必然。
鍛冶の神様が、そのエリアスという男にめぐり合わせてくれたのだ。
機会を逃してはいけない。
誰もがそう思い全員一致で移住することに決めた。
そして返事をする2日後を、指折り数えて待つのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「と、いう事があったんだよマリー」
「でも良かったですね、エリアス様。ドワーフが見つかって」
「あぁ、これで鍛冶仕事もできるようになるからね」
「今までエリアス様お1人でやっていましたから」
「そうだね。だから、来てくれると良いんだけど」
「必ず来てくれますよ。この村に来たくない人なんて居ませんから」
そう言いながらエリアス達は、茹でたレッドクラブを食べているのであった。
初めて食べるレッドクラブに住民達は当初、戸惑っていた。
だがエリアスがバクバク食べ始めると、他にも食べる人が出てきた。
そしてあっという間に、レッドクラブの旨さにみんな気づいた。
そしてレッドクラブを茹でたダシ汁に、野菜と蟹の身を入れ煮込んで蟹汁にした。
今度は身を焼いて食べ、その晩はみんなで蟹パーティーを堪能した。
みんな知らなかった。
この領では王都以上の贅沢な食事をしているのだという事を。
そして益々、この領以外で生活できなくなっている自分達に気づかなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
俺達、山小人は山岳地帯の内部に住居を構えて生活する種族だ。
「ただいま帰ったぞ」
「お帰りなさい、マルコス親方」
戻った3人はみんなに歓迎された。
「レッドクラブは、どうでしたか?」
待っていた住民の1人が言う。
「あぁ、レッドクラブはもう通り過ぎた。というよりほとんどが討伐されたよ」
「討伐された?」
「あぁ、エリアスという奴が居て…」
外に出てあったことをマルコスは話始める。
レッドクラブを追っていくと、ほとんどのレッドクラブは討伐されていたこと。
その倒したレッドクラブを、鍋で茹でて食べていた男が居たこと。
そのレッドクラブがとても旨く、その時にだしてもらったスティルワインというブドウから造った酒の口当たりがとてもよく、レッドクラブによく合っていたこと。
男が持っていた刀がとても美しく、目を見張るものがあったこと。
証拠としてバスターソードを3人分、もらってきたこと。
そのバスタードソードを手に取り、住民達は驚いている。
鍛冶を自負する自分達の技術でも、とても真似できない代物だったからだ。
とても美しく芸術的な輝きをしていた。
石炭という鉱物があれば、これができるという。
そして鉱山を持っており鉄、鋼、銀、銅、鉛が使い放題だそうだ。
だが解せないことがある。
なぜ、マルコス親方達に合うバスターソードを3本持っていたのかだ。
ドワーフは人族に比べ身長が低い。
人族用のバスターソードなら長すぎる。
だが各自の身長に合うように3本共、微妙に長さが違うのだ。
まるで3人の身長に合わせたかのように。
いったいどうやって、事前に分かったのか?
そしてサーベルウルフの群れを一瞬で肉片に変えた、血塗られた黒い悪魔を造った男だと。
その血塗られた黒い悪魔の整備を、俺達に任せてもらえると。
住民達は興奮した。
綺麗な武器が造れるだけではなく、超破壊兵器の整備も任せてもらえるとは。
そしてそれを研究し、更に高みを目指すのだ!
村は高い塀で囲み、小麦や大麦、野菜も作って生活している。
住民は人族の他にダークエルフ、鳥人族、ホビットもいる。
異種族に対しての偏見もない様だ。
この出会いは必然。
鍛冶の神様が、そのエリアスという男にめぐり合わせてくれたのだ。
機会を逃してはいけない。
誰もがそう思い全員一致で移住することに決めた。
そして返事をする2日後を、指折り数えて待つのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「と、いう事があったんだよマリー」
「でも良かったですね、エリアス様。ドワーフが見つかって」
「あぁ、これで鍛冶仕事もできるようになるからね」
「今までエリアス様お1人でやっていましたから」
「そうだね。だから、来てくれると良いんだけど」
「必ず来てくれますよ。この村に来たくない人なんて居ませんから」
そう言いながらエリアス達は、茹でたレッドクラブを食べているのであった。
初めて食べるレッドクラブに住民達は当初、戸惑っていた。
だがエリアスがバクバク食べ始めると、他にも食べる人が出てきた。
そしてあっという間に、レッドクラブの旨さにみんな気づいた。
そしてレッドクラブを茹でたダシ汁に、野菜と蟹の身を入れ煮込んで蟹汁にした。
今度は身を焼いて食べ、その晩はみんなで蟹パーティーを堪能した。
みんな知らなかった。
この領では王都以上の贅沢な食事をしているのだという事を。
そして益々、この領以外で生活できなくなっている自分達に気づかなかった。
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読んで頂いてありがとうございます。
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