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第13部 蒸気機関車

第106話 勘違い

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「我々には鍛冶技術はないんだよ」

 アルベルトさんは寂しそうな顔をして言う。

「みなさんはお酒が好きですよね」
「もちろん大好きさ」

 そ、そんな。
 所詮はファンタジー、山小人ドワーフの鍛冶屋は空想物語だったのか。

「では皆さんの得意な事はなんでしょうか?」
「得意な事だと、変な事を聞くんだな。そうだな農耕かな」

 農耕か、空想と現実は違うんだな。

「農耕ですか、ではいかがでしょうか。実は俺達はこの森を開拓して村を作っています。そこにきませんか?小麦や大麦、野菜も作っており食事も1日3食です」
「村を作っているのか、こんな辺境の大型の魔物が多い森の中でか」
「はい、俺は人族の中で公爵の爵位を持っていまして、この森の開拓する権利を王国からもらっています。高い塀で村を囲み、そこには闇妖精ダークエルフや鳥人族の人も居ますよ」
「な、なに、貴族だと。それに闇妖精ダークエルフや鳥人族もいるのか」

「住民は俺を入れて45人です。そしてその内9人が人族です」
「では残りの36人が亜種族と言う訳か」
「ええ。そうです」
「我々の事を亜種族と言わないところは気に入ったよ。その村はここからどのくらい離れているんだい」
「蒸気機関車なら35分くらいです」
「35分??」
 あぁ、そうか時間の概念がないのか。

「歩きなら朝日が昇り、夕方暗くなる事には着きます」
「そんなに離れているのか、知らないはずだ」
「でも蒸気機関車なら、あっと言う間です。行ってみませんか?」
「今からか?」
「すぐに着きますよ、帰りもお送りしますから」
 アルベルトさんは少し考えているようだった。

「わかった、行こうではないか。他の部族とも力を合わせていかなければ、この森では生きていけないからな」
「長老様、危険です」
「大丈夫だ、ガエタン。彼らが私達に危害を加えるとは思えないからな」
「では我々4人もお供致します」
「よろしいかなエリアス殿」
「えぇ、勿論ですよ」

 9人乗るには蒸気機関車は狭いので、俺はストレージから客車を出した。

〈〈〈〈〈 ドン!! 〉〉〉〉〉

 同時に俺は軽くジャンプし、他の8人もジャンプしていた。
 小ネタがわかる人達だ。

「では後ろの客車に乗りましょう」
 俺とアルベルトさん達6人は客車に乗った。

「では出発しますぜ」
 イーヴァインさんがそう言うと機関車は動き出した。

 シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
     シュポポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ

    〈〈〈〈〈〈〈〈 ポ、ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 客車の中で他の人達と自己紹介をした。
 アルベルトが長老で、若手のまとめ役がガエタンさん。
 そして若手のランスさん、ウーログさん、ギゼラさんだ。

 と言ってもみんな若く見えるのだが。
「みなさん若く見えますね」
「我々の種族は人族の倍くらい寿命があるから。そう見えるのかもしれんな」
 そんな話をしながら機関車は進む。

「しかし早いな、この蒸気、機関車?は」
「言いづらければC61シロクイチでも良いですよ」
C61シロクイチ?」
「あだ名みたいなものです」

 そしてセトラー領に戻って来た。
 見上げる様な城壁の高さにアルベルトさん達は驚いていた。

 城門を入り格納庫に蒸気機関車を収容した。

「さあ、着きました。降りましょう」
 俺達は客車を降り、外に出た。

「す、素晴らしい。こんなに広い土地を開拓しているなんて」
 アルベルトさんが驚いている。
 
 セトラー領は開墾が進み、少し中央奥に俺の屋敷がある。
 その屋敷を守るかのように、ダークエルフの家が左右に放射状に延びているのだ。
 そして見渡す限りの田畑、これだけの広さをどうやって。
 いったい何百人で毎日耕せば、ここまで広くなるのだろうか?

「エリアス殿、この村には45人しか住民はいないと聞いていたが」
「えぇ、そうですよ」

「おかえりなさいませ、エリアス様」
 振り返るとカロリーナが居た。
 そしてマリー。
 侍女のナターシャさんとサブリナさん。
 ナターシャさんの彼氏のディオさんが居た。

「ただいまみんな、今日はお客様を連れて来たよ。彼らは山小ドワ…「小人族ですか」
 ディオさんが驚いたように声を上げる。

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