【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ

文字の大きさ
上 下
104 / 128
第13部 蒸気機関車

第103話 スティルワイン

しおりを挟む
 俺達の横の列の席にはカロリーナの侍女のナターシャさんと、ダークエルフのディオさんが同じ席に並んで座っている。
 その向かいにはマリーの侍女のサブリナさんが、イケメンなダークエルフと並んで座っている。

『ナターシャさんとサブリナさんはモテモテみたいじゃないか?』
『えぇ、そうなんですよエリアス様。でもナターシャはディオさんと付き合い始めてから、半年も経つのにまだ結婚を申し込まれていない、て嘆いていますわ』
 カロリーナが答えればマリーも同じように答える。

『サブリナも最近ラビさんと言う今、隣に座っている彼氏が出来たんですけど、そんな話はないようです』
『エルフは長生きだから、俺達と時間の観念が違うのかもしれないね』
『時間の観念ですか』

『カロリーナ、では聞くけど。好きな人と明日は会えるけど、1年後には会えないと分かっていたらどうする?それまでの時間を大切にしたいと思わないかい』
『それはそう思いますわ。でも別れは事前には分からないものですわ』
『エルフと人族なら分かるでしょ。ナターシャさん達が今30歳位だとしたら、生きても後20~40年くらいだ。でも400~500年生きるエルフにすれば、それは4~5年くらいの感覚でしかない』

『では、どうすればいいのでしょうか、エリアス様』
『マリー、それはね。彼女達は早くしないと子供も産めず後20~40年で、年老いて死んでしまう事を彼らに教えてあげればいいんだよ』
『そう言うものでしょうか?』
『今日会えたから明日も会える。いつでも側に居てもらえると思うのは勘違いだね』


「分かりました、エリアス様」
「へ?」
 横を見るとダークエルフのディオさんとラビさん、ナターシャさんとサブリナさんがこちらを見ていた。
「私も人族とエルフの時間の流れの違いを忘れておりました」
 そうディオさんが言う。
「お、俺もです」
 ラビさんもそう言う。

「ナターシャさん、お待たせして申し訳ありませんでした。あなたの残った月日を私にください」
 ディオさんは片膝をつき、ナターシャさんに手を差し出した。
「ええ、もちろんよ。喜んで」
 ナターシャさんは嬉しそうに微笑んだ。

 そして向かいの席でもラビさんが始めた。
「サブリナさん、どうか俺の…「はい、喜んで!」
 サブリナさんはラビさんの首に手を回して答えた。
 はや、返事、はや早い

「ありがとうございました。エリアス様」
 ナターシャさんがお礼を言う。
「俺はなにもやってないけど」
「いえ、あれだけ大きな声で、私達のことをお話しされているとさすがに」
 追い打ちをかけるようにディオさんが言う。
「何やらコソコソ話をしている風でしたが、丸聞こえでしたよ」

〈〈〈〈 I screwed upやらかしちまった!! 〉〉〉〉〉

 車両の中は一気にお祝いムードに染まった。

 そしてストレージの中になる赤ブドウを時空間魔法で、時間を加速させアルコール発酵し4人のために赤ワインを創った。
 俺のストレージ内は時空間魔法で時間が停止している。
 だが時空間魔法なので時間を、加速させることができるのだ。
 しかし使い方としては醤油やソースを熟成、発酵させるだけの地味な使い方しかできないのだが。

「4人のために赤ブドウで新しいお酒を造りました」
 そう言いながら俺はストレージの中の『創生魔法』でグラスを人数分だけ創った。
 
「さあ、みなさん。飲んでください」
 俺はストレージからワインを樽で出した。

 そしてみんな樽からそれぞれ、ワインを注ぎ飲み始めた。
「美味しい~!」
「口当たりが最高」
「これはブドウですね。ブドウでお酒を作るなんて、さすがエリアス様です」
 カロリーナが美味しそうに飲んでいる。

「これは優しい味ですね」
(だから、優しい味て、どんな味だよ)


「なんという名前のお酒でしょうか?」
「マリー、これはね」
 俺は少し考えた。
「スティルワインだよ(泡立たない非発泡性の、ブドウの果汁を発酵させたお酒)」
平穏スティルワイン、まあ、なんて4人の始まりに相応しい素敵な名前なのでしょう」

 季節は春。
 桜に似た花が線路の両脇に咲き、風に揺られて花弁はなびらが落ちていく。
 その花吹雪の間を蒸気機関車は走って行く。
 
 俺はストレージからカツや唐揚げ、とっておきのクリームシチューを出した。
 それから更に車両の中は盛り上がり、飲めや歌えの楽しい時間が過ぎた。

 それから数年後にスティルワインが販売され、結婚式やお祝い事に欠かせないお酒となった。
 そして花が咲く時期に蒸気機関車に乗り、お酒や料理を楽しみながら州を移動する『お座敷列車』が大流行した。
 もちろん火付け役はエリアス商会だ。






 シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
     シュポポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ

    〈〈〈〈〈〈〈〈 ポ、ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 その頃、機関車車両では、
「おい、なんか後ろの車両が騒がしくないか?」
「気のせいだろイーヴァイン。機関車の音がうるさくて何も聞こえないぞ」
「それよりも前に集中しろよ」
「あぁ、わかったよ」

 こうして機関車は鉱山へ向かうのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【完結】空飛ぶハンカチ!!-転生したらモモンガだった。赤い中折れ帽を被り、飛膜を広げ異世界を滑空する!-

ジェルミ
ファンタジー
俺はどうやら間違いで死んだらしい。 女神の謝罪を受け異世界へ転生した俺は、無双とスキル習得率UPと成長速度向上の能力を授かった。 そしてもう一度、新しい人生を歩むはずだったのに…。 まさかモモンガなんて…。 まあ確かに人族に生まれたいとは言わなかったけど…。 普通、転生と言えば人族だと思うでしょう? でも女神が授けたスキルは最強だった。 リスサイズのモモンガは、赤で統一された中折れ帽とマント。 帽子の横には白い羽を付け、黒いブーツを履き腰にはレイピア。 神獣モモンガが異世界を駆け巡る。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載しております。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...