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第12部 産業革命

第90話 駅作りの許可

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 俺は今、アレンの街中まで鉄道を引く為、ドゥメルグ公爵のところに来ている。

「突然お伺いして申し訳ありません」
「なに構わないさ。マリーは元気かい?子供が出来たそうじゃないか」
「はい、生まれてくるのは12月か1月くらいになると思います」
「カロリーナ王女様も同時に懐妊されたとか。男の子だといいがな」
「私はどちらでも構いません。元気に生まれてくれれば」
「だが男子が産まれて来なければ家が絶えるぞ」
「その時はまた頑張りますから」
「あはは、君はまだ若いからな。で、今日は何だい。面白い話なんだろう」
「えぇ、実は…」

 まず以前、作る約束をしていたクロスボウを100台納品した。
 1台50万だ。

 そして俺は鉱山と炭鉱を掘り当てたことを話した。
 その時の公爵の顔が見ものだった。
 口をアングリと開け目を見開いていた。

 そうだろうな。
 鉱山一つあれば大金持ちだからね。
 フライパン・鍋・やかんなど、製鉄技術を使った物を作り売り出すことを話した。
 
 そして石炭という燃える石が出る炭鉱を見つけたこと。
 石炭があれば木炭よりも高温になり、不純物の少ない鉄ができる。
 鉄の加工がしやすくなれば、色んな物が作れるようになる事を。

 鉱物は今まで発掘される場所が遠く、少なかったから高価だった。
 だが身近な所から発掘されれば、安く市場に出回り加工技術も発展するはずだ。

 そしてそれを運ぶのが蒸気機関車だ。
 俺はストレージから、セトラー領とアレン領のジオラマを出した。
 セトラー領とアレン領を結ぶ鉄道の話。
 蒸気機関車を走らせ10tの重さの荷物を、アレン領からセトラー領まで15分で運べることを話した。

「「15分だと! 」」

「はい。鉄道をアレン領から王都まで引けば、馬車で6日かかるところを2時間で着きます」

「「 2時間!! 」」

「それに蒸気機関車は荷物だけではなく、客車を付ければ人も載せられます」
「「 人もか! 」」

 ドゥメルグ公爵は驚いてばかりだ。
 それはそうだろう、これからは移動手段が大きく変わるんだ。

「その為にアレンの街の中に蒸気機関車を止める『駅』を作りたいのです。駅用の門を別に作り、そこから200mは線路を引きたいのですが」
 蒸気機関車は幅約3m、高さ約4m、長さ約20mはある。
 貨物車両を4つ繋げるだけでも、もう長さが100mにもなる。
 そのため、蒸気機関車と貨物車両を最大9つ繋げることを考え、城門から200mは線路は欲しいところだ。

 ドゥメルグ公爵は考えているようだ。
 では後一押し。
「ウォルド領とアレン領の間に線路を引き、蒸気機関車を走らすことも可能です」
 ウォルド領は王都よりのアレン領の隣りの州だ。

「ただその場合は道が舗装されていないと駄目ですが」
「あぁ、エリアスが提案した公共事業を、ウォルド領に向けて進めている最中だ」
「では工事が終わったら鉄道を引き、蒸気機関車もプレゼントしましょうか?」
「ほ、ほんとうか?」
「えぇ。ウォルド領主ノルベール公爵と、ドゥメルグ公爵のご判断になりますが」
「その時はノルベール公爵に相談しよう。嫌とは言わないだろうが。見返りは何だ」
「蒸気機関車を使って出た売上げの1割をください」
「1割か。随分、安くしてくれるんんだな」
「えぇ、1割でも十分です」

 そう思うのも無理はない。
 今までになかった蒸気機関車は輸送が早くでき人の移動も速くなる。
 それなら利益の2~3割でもおかしくないと思うだろう。
 物資と人を運び、これからお金を生み出すことが分かっているんだから。

 だが俺はいずれジリヤ国、全土に鉄道を広げようを思っている。
 絶対に他の州も欲しがるはずだからだ。
 恩を売って利益を継続して得ることが出来る。
 それなら1割でも十分だ。
 それに侯爵と言う立場で、あまり報酬が大きいと反感を買うだけだ。


「早く道を整備しないといけないな。遅くなればなるほど、儲けが遅くなるからね」
 さすが領主様。
 お金の事はしっかりしている。

「わかった、アレンの街の門を入ったところに『駅』を作る許可をだそう」
「ありがとうございます。お義父様」
「君にお義父様と言われると何か変だな」
「私もです。これで鉄道が通ればアレンの街は『食文化』だけではなく、『食文化と鉱物』の街と呼ばれますね。そして産業が立ち上がれば人が増え、消費が多くなり税収が上がり良い事ばかりですね」

「そう言う君が一番儲かるのではないかな?」
 うぎっ!俺は適当にごまかした。
「ではこれから城門のところに行き、鉄道用の門と駅を作り線路を引いてきます」
「分かった。では私も行こう」
「では面白い乗り物を創りましたので、それに乗って城門まで行きませんか?」
「面白い乗り物?」
「実際に見て頂いた方がいいでしょう。庭にでませんか?」

 そう言うと俺と侯爵は庭に出た。
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