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第10部 結婚

第81話 閑話 コタツと女神ゼクシー

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 俺は教会に参拝に来ている。
 女神ゼクシー像にひざまずいて、目を閉じ祈った。

 すると白い靄のようなものに包まれた場所にいた。

「はい、はい~!いらっしゃ~い」
 黒縁ののメガネをかけ、緑の長い髪をボサボサに束ねた女神がいた。

「こんにちわ。母さん」
「よく来たわね。王都からアレンの街まで大変だったでしょう?」

 半纏はんてんを着てコタツに入りお茶を飲み、せんべいを食べている女神ゼクシーがいた。

「さ、寒いでしょ。コタツに入れば」
 確かに季節は秋だが、この世界の狭間はざまも季節は関係あるのか?


「母さん、その恰好はなんですか?」
「最近、色々あって外に出ないからね。家にいるのにお化粧しても意味ないから」
「いくらなんでも。そう言えばマリー達に祝福を与えてくれて、ありがとうございました。2人共とても喜んでましたよ」
「えっ、あっ。そ、それは良かったわ。オホホホホ」
「あ、そうだ。これをどうぞ」

 俺はストレージから以前作っておいた、クリームシチューとスプーンを出した。

「まあ、美味しそうね」
「クリームシチューです」

 ズズズ~!

「美味しい~!!寒いときには温まって最高ね」
「母さん、ここも季節があるんですか?」
「いや~ね。雰囲気よ、雰囲気」
「普段はここでなにをしているんですか?」
「ここから下界を眺めて人々の生活を見守っているのよ」

 ある意味、女神はその人の人生をリアルで見れる立場にあるのだ。
 刑事ドラマ、恋愛もの、成上がり物、毎日好きなドラマがリアルで見れるのだ。


「あぁ、そう言えばあなた、ここ数日で一皮むけたわね」
「えっ!!」
「な、なにをやっているの?どこを押さえているの」
「いや、だって俺やマリー達との事を見ていたのかと…」
「ち、違うわよ、人としてよ。み、見てないわよ馬鹿ね~」

 だけ。
 私に出来ることはただ、下界を見ているだけ。
 そう見ている事しかできない。
 たとえ人族が滅んで、魔物の闊歩する世界になったとしても干渉は出来ない。
 それが決まり事。

「食後には甘いものですね」
 俺はカスタードクリームのどら焼きを出した。
「まあ、これも美味しい。お茶によく合うわ」
「それは良かった。母さん」

 そんな話をしながら楽しい親子の時は過ぎた。

「それじゃあ、母さん。また来ますね」
「えぇ、待っているわ。私のエリアス」

 俺は現実社会に戻った。
 また来ることをアルバンさん達に話した。
 今度来た時のために社員証をもらい、工業団地?を後にした。

  *    *    *    *    *

 私は女神ゼクシー。
 この世界を司る女神。

 私に出来ることはただ、下界を見ているだけ。
 そう見ている事しかできない。

 今日は息子エリアスが遊びに来てくれて、とても楽しい1日だったわ。
 また来てくれないかしら。

 さてまたDVDでも見ようかな。

 ポチッと。

 DVDのラベルには『王都の夜は猫が鳴く。猛君たけるくん』と、手書きで書いてあった。
 
 女神ゼクシーにも深い『闇』があった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※アンダーリム:枠が下だけあるメガネのタイプ。
 ファンタジーめがねの定番。

『王都の夜は猫が鳴く』は、第77話を読んで頂けるとお話が分かります。

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