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第9部 王都

第66話 王都へ 5日目 ワイバーン討伐

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 バーク山脈へワイバーンを討伐に行くことになった。
 だが準備がある。
 できれば新しい武器が欲しいものだ。
 それには金属がいる。

 ノルベール公爵に聞き、金属が欲しいというと鍛冶ギルドを紹介してくれた。
 朝一番で紹介状を手に鍛冶ギルドに向かう。

 ここだ。
 製鉄の臭いがする。
 来たついでに帰りに廃材をもらっていくか。

 中に入ると受付に髭づらの小柄な男が居た。
「何のようだい」
 俺はノルベール公爵からの紹介状を出し
「硬くて武器に出来るような、丈夫な金属が欲しい」
「金属?何に使うんだい」

「ワイバーン討伐」

「!!」

「あるのか、ないのか?」
「今あるのはミスリルと、アダマンタイトが少しだな。何を作るんだい?」
「槍だ」
「それなら今あるアダマンタイトの量で充分だ」
「ミスリルと、どう違う?」
「ミスリルは鉄よりも軽く、錆びず魔法を通しやすい。切れ味は良いが、決して固くはない」
「アダマンタイトをもらおう」
「あいよ、他に欲しいものはあるかい?」
「実はいらなくなった廃材が欲しいのだが」
「廃材か、こちらも片づける手間が省けて助かるからな。たくさんあるが、どうやって持っていくんだい?」

 俺はポンッ、ポンッとバッグを叩いた。
「マジック・バッグかい。それは便利だ。はいよアダマンタイトだ」
 アダマンタイトは俺のこぶし3つ分くらいあった。
 代金を払い廃材のある場所に案内してもらった。
 そして山のような廃材を、全てストレージに収容した。
「おぁ、どんだけ入るんだい!おったまげた」
 そんな声を後に鍛冶ギルドを出た。


 俺はウォルドの街の宿屋に向かった。
 ドゥメルグ公爵に挨拶をし、これから討伐に出ることを話した。
 
「気を付けて行って来いよ。ドゥメルグ公爵家の使用人のことで、君に行ってもらうのは忍びないが。他に頼る人も居ないからな」
「駄目で元々だと思ってください。それにもう侍女の方たちは…」
「あぁ、おそらくはもう、生きてはいないだろうな」
 公爵はそう言ってくれた。
 これで肩の荷が下りた。
 救うのではなく倒すこと前提で行こう。
 そして倒せると思っている俺が居ることに驚く。

 そしてその前にすることがある。
 武器創りだ。
 今回用の武器をストレージの中で創って置いた。


 俺はウォルドの街を出て、バーク山脈に向かい走る。
 身体能力が高い俺は馬以上に走るのが早い。
 
 山脈に近づくにつれ魔物や魔獣の影が見える。
 それを避け走って行く。

 しばらく走り『鑑定』スキルでワイバーンを探す。
 山の中腹まで登り『鑑定』の範囲を広げていく。
(いた!)
 ここから見える向かいの山の中腹にいた。
 俺は全速力で走った。
 近づくとワイバーンは2匹だった。

 俺は走りながらストレージから、アダマンタイトで創っておいた武器『グレイヴ』を出した。
 片刃の刃を柄にはめ込み、刃渡り60cm、柄は2m。
 刃を剣状にしたような形で鋭く大きな刃を持つ。
 突くだけではなく切りつけたり、振り回したりすることもできる薙刀なぎなたのような武器だ。
 刃の部分はアダマンタイト、柄は製鉄し創ってある。
 
〈〈〈〈〈 グワァ~!! 〉〉〉〉〉

 1匹が俺に気付き翼を広げ、飛び立とうとした。
 俺は風の魔法を『グレイヴ』にまとわせ、羽に投げつけた。

「「「「 ドンッ!! 」」」」

 『グレイヴ』は高速で羽に突き刺さりぶち抜いた。
 そしてぶち抜いた先にストレージの収容口を開き収納した。
 これをやれば、投げて収納、投げて収納を繰り返しできる。

「「「「 グァ~~~~~!! 」」」」

 穴をあけられたワイバーンは奇声を上げ落ちる!
 もう片方の羽に向け『グレイヴ』さらに投げ貫通させ収容する。

 緑竜グリーンドラゴン戦で使った絶対収納を身にまとった。
 体全体をストレージでおおう防御技だ。
 外から受ける物理攻撃は受け止め、衝撃は収納することが出来る。

 そして素早く踏み込んで突き、槍を回して攻撃する。
 
「ズガッ!」
「シュッ!!」
「グェ~~!」
「ドサッ!」

 飛べなくなったワイバーンは、刀傷を多数受け息絶えた。

 残った1匹は翼を広げ威嚇はするが、飛び立たない。
 よく見ると両脚の間に卵が見える。
 さらわれた馬車は跡形もなく壊され、血の跡がついていた。
(子供を育てるために栄養が必要だったのか、ならばせめて)

 俺はワイバーンまで走る、高く飛び上り横に一刀『グレイヴ』振る!

「「「 クゥ~~~~~~ン!! 」」」

 ワイバーンは悲しそうな声を出して息絶えた。

 俺はワイバーン2匹と、2つあった卵も収納した。
 生命力が弱い卵ならストレージで収納可能だった。

 それからウォルドの街に戻り、宿屋に居たドゥメルグ公爵に結果報告をした。
 ワイバーンは2匹おり子供を育てるため、さらっていた可能性を説明。
 攫われた馬車は跡形もなく壊され、生存者はいなかったと報告した。
 マリーお嬢様とカトリーンお嬢様は、侍女を助けられなかった話を辛そうに聞いていた。

 ワイバーン2匹と卵は持ち帰ってきたことを伝えた。

 そしてそのままドゥメルグ公爵と一緒に、ノルベール公爵家に向かった。
 そして詳細を話しワイバーンの件は終わったことを説明した。

「わが領のことなのにすまなかった。ついてはワイバーンと卵を買取りたいのだが」
 ワイバーンやドラゴン種の肉は美味しく、血と肉は滋養強壮に効き、骨も加工すると武器や防具になり高く売れ、捨てるところは無いくらいだそうだ。
 そして今回は卵があり、卵が手に入るのは前代未聞と言っていた。

 肉は美味しいと聞き1匹は手元に残し、卵を含め残りは売ることにした。
 ノルベール公爵家の庭にワイバーン1匹と卵2個を出した。
 ストレージをマジック・バッグだと言っているが、容量の大きさだけで国宝級だと驚かれた。
 俺はもう面倒になり、スキルやストレージに関しては隠さないことにした。

 そしてノルベール公爵より討伐料という何億もの迷惑料と、ドラゴンバスターの称号をもらった。
 すでに緑竜グリーンドラゴンを倒しているが言わないでおいた。

 いよいよ明日は王都だ。
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