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第8部 開拓村

第56話 今後の産業

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 季節は流れ9月になった。
 初めての稲の収穫となりイーヴァインさん、ゲラルトさん、オズバルドさんとアナベルさんと俺の5人で刈り取った。

 さすがに面積が広く収穫量があり、みんな堪えたようだ。
 そして収穫後はすぐに麦を植える予定だ。

 そして野菜、ブドウやリンゴなど果物もたくさん採れた。
 ブドウがあるならワイン造りもいいな。

 開拓村セトラー初の収穫となり、約束していたアバンス商会のアイザックさんが買取りにやってきてくれた。
 以前約束をしていたムッカ(牛もどき)が見つかり、オス2頭、メス3頭を連れてきてくれた。
 もちろん、代金は払ったよ。

 以前は居なかった鳥人族のシビルさんたちがおり驚いていた。
 イーヴァインさんたちと同じようにハーピーと勘違いしたらしい。
 鳥人族だと言ったら、さらに驚いていた。
 鳥人族自体、珍しいらしいからね。


「いや~、素晴らしい。見事な稲と野菜。そして果物ですな~」
屋敷にアイザックさんたちを招き、リンゴジュースを出したら、美味しそうに飲みながら言った。
「これからすぐに麦を植え、野菜や果物も次回に向け育てて行きます」
「ではまた買取りに参ります。しかし凄いものですな。僅か5人でこの収穫量とは。しかし先ほどの道具はなんですかな?見たことがありませんが」

 俺はこの機会に農機具をたくさん作っていた。
 くわすき千歯せんばだ。
 そして道具のところまで行き説明した。

「これはくわすきと言いまして、地面を掘ったり、土砂などをかき寄せたり、土の中の雑草の根を切るのに使います」
「ほぅ」
「そして千歯せんばです。木製の台に櫛状の歯を取付けて、その歯の間に稲や麦の束を通し、稲穂からモミの部分をしごき落とす農具です」
「これは凄い!農具に鉄を使い、作業性も考えられている。売って頂けますかな?」
「ええ、いいですよ。3セットづつなら、お帰りまでに用意しますから」
 そう、俺は言いながらストレージ内で『創生魔法』を使い3セットづつ造った。


 聞いたところではアバンス商会は今、冷蔵馬車を使い海沿いのジリヤ国から、海産物を大量に仕入れ大儲けしているらしい。
 冷蔵馬車のおかげです、と言っていた。
 
「アイザックさん、これをどうぞ。見本です」
 そう言って俺は1本のタオルを渡した。
 
「綿で出来たタオルです。吸収性が良く肌に優しい生地です。この生地で下着を作れば売れる思いますよ」
「ほう、これは手触りが良い。しかも下着も出来るとは。どのくらい手に入りますかな?」
「まだ試験段階でそこまでは。やりたいことは沢山ありますが、人が居なくて」
「そこがエリアス様の凄いところですよ。普通はやりたいことすら、見つかりませんから」


  *    *    *    *    *

 あった!こんなところに。
 俺はアスケルの森の中を探索している。
 アスケルの森は山脈側に行けば行くほど、未開拓で人が入ったことがない。
 そのため、貴重な資源が眠る可能性があるのだ。
   見つかったのはワタ、綿だ。

 この国の生地はゴワゴワだ。
 生地も麻や魔獣の毛を使ったウールが多い。
 繊維産業が発達していないせいなのかゴワゴワだ。
 考えてみてほしい下着がゴワゴワで我慢できるのか?
 否!
 靴下も長く膝上まであり、男でも貴族はタイツが主流だ。
 普通の靴下が欲しい。
 地球のフンワリとした綿の肌座触りになれた俺としては不満だった。

 地球では夏に花が咲き、熟して中から白い綿花が顔を出したら収穫時期だ。
 綿は種子の周りに付いて綿と種子を分ける作業が必要になる。
 ローラーを上下に付けた作業用の器具を作り、その間にワタを通して綿と種子に分けるのだ。
 そして吸水性の高いタオルやローブ、肌触りの良い靴下、下着などにできる。

 綿の実を収穫できるだけして、その場を去った。
 人が揃ったら来年は綿と種を分け綿産業を興したいものだ。
 
 その時に作ったものを、今回アイザックさんに渡したのだった。
 

 だがもう1つ欲しいものがある。
 それは絹だ。
 この世界で絹は高級生地だ。
 なぜかと言うと絹は蜘蛛の魔物が出す、魔物繊維を加工したものだからだ。

 地球の様に絹を出す、カイコはいないのだ。

 そして蜘蛛の魔物はタラテクトから始まり、上位の魔物アラクネーになるほど絹は上質になり手触りがよく輝きを増す。

 だが多くの冒険者が挑むも手に入れることは難しい。
 なぜなら絹は魔物の巣であり、巣には魔物が居るからであった。

 そして恐ろしいことが起こった。
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