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第7部 視野を外へ
第46話 閑話 アイザック・エリントン
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私の名前はアバンス商会会長、アイザック・エリントン 。
この街アレンの塩取引を一手に仕切る、界隈で一番大きい商会だ。
この国、ジリヤ国は内陸で海がない。
しかし塩は生活必需品、旅は危険で魔物や盗賊がでることもある。
そこに目を付けた祖父がリベル国より、危険を冒してまで塩の取引をしたのがこの商会の始まりだ。
そして父の代には各商会も沿岸部まで買い付けに行くより、アバンス商会でまとめて仕入れたほうが手間がなく、価格も統一できると信用を得た。
その話を聞いたのは商業ギルドのギルドマスター、アレック様からだった。
マジック・バッグの中で塩と不純物を分離させ、その手間賃で商売を始めたエリアスという少年がいると。
私も長いことこの業界に携わってきたが、そんな話は聞いたことがない。
もしもそれが本当なら、マジック・バッグの方が計り知れない価値があるのでは?と、私は思った。
アレック様も私と同じ意見でただ当人はマジック・バッグより、精選処理の方に目が行くらしい、と笑っていた。
マジック・バッグをオークションで売れば、遊んで暮らせるだけの大金が手に入るのにだ。
そして商業ギルドで分離された塩を見せてもらった。
素晴らしい!
塩を精選処理すると、とても手間がかかり価格も高騰する。
店の利益を乗せると、どうしても精選処理した塩は高すぎる。
そのため、不純物が入った塩をメインに扱っているのだ。
精選処理された塩は上位の貴族に喜ばれ高く売れる。
探りを含めてその少年に会ってみるか。
少年は『なごみ亭』という元宿屋に下宿していると聞く。
その宿屋も少年が作った調味料で、今は食堂として大層繁盛しているいるとか。
朝の忙しい時間帯を避け午前に『なごみ亭』に足を運んだ。
食堂の女の子に少年を呼んでもらった。
彼は13~15歳くらいに見え美形で黒髪、黒い瞳の少年だった。
なぜか人の心を引きつけ夢中にさせる、雰囲気を持つ少年。
丁寧な対応で受け答えし、見た目以上の年齢なのかも知れないと思った。
商談に入ると
「『味元』は商業ギルドの広い販売網を使い国境を超え世界に広めたい。消耗品は購入を繰り返するので、数が売れれば薄利多売でも十分以上に儲かる」、と言われた。
なんという考え方だ。
まして自分の店の商品を『世界に広めたい』などと、大層な夢は聞いたことがない。
『マヨネーズ』の独占販売を申し出たが賞味期限が短く、量産体制が出来ていないそうだ。
量産体制ができれば考える、とは言ってくれたが。
『マヨネーズ』の情報料は商業ギルドでなんと、50,000,000円もの値を付けているのだ。
店で負担するには金額が大きすぎる。
だがこれを逃すのは惜しい。
だから『独占販売』なのだ。
『味元』は卸してもらい、塩塩300kgの精選処理をお願いした。
マジック・バッグに塩300kgを収容し、短い時間で処理が終わる。
そんなことはあり得ない!
そんな多大な価値のあるマジック・バッグの使い方がこれなのか?
* * * * *
「アイザックさん。こんにちわ!」
そんなある日、エリアス様が訪ねてきた。
200年ぶりに女神ゼクシー様の神託が降り、この少年が『愛し子』様だと言う噂は一部の教会関係者の間ではすでに噂になっている。
もはや『この少年』ではなくエリアス様だが。
なにやらまた新しい調味料ができたとか。
「はい、『醤油』と『ソース』です。」
「『醤油』と『ソース』?」
「『醤油』は煮物、焼物、ダシに合い、『ソース』は揚げ物に合います」
「揚げ物とは?」
「これです」
そう言うと彼はマジック・バッグから皿を取り出した。
皿の上には刻んだキャベツが乗せてあり、その上には何かが乗っている。
フォークを差し出され思わず受け取った。
「こちらがそうです。オーク肉に衣を付け油で揚げた『カツ』と、同じように衣を付け醤油というものを付け揚げた鳥肉『唐揚げ』です」
カツと言っていた衣肉と刻みキャベツに黒い液体をかけ差し出された。
「この黒い液体が『ソース』です。どうぞ、召し上がってください」
「うむ」
(まだ暖かいではないか!作ったばかりにしては暖かすぎる。だが『愛し子』様である以上、詮索はできない)
オーク肉にかぶりつくと、
〈〈〈〈〈 ……………………!! 〉〉〉〉〉
外は『カリッ』と中は『ジューシー』!
叩いて筋を切り揚げたオーク肉は柔らかく、なんと美味しいことか!
こんな複雑な味の調味料は初めてだ。
野菜と果物の複雑な味がする。
そしてこの唐揚げもオーク肉とは違う旨味がある。
ただ食べれば良いという毎日の食事とは大違いだ。
「エリアス様。あなたはこんな料理の知識を一体どこで…」
聞いてはいけないことだった。
『愛し子』であるからには追及ができない。
「『なごみ亭』でこれから段々と、この『醤油』と『ソース』を使った料理を出していきます。特許はまだ取っていないので開示はしていませんが、商業ギルドにも卸します。アイザックさんも一口乗りませんか?卸す金額は『味元』と同じになりますけど」
おぁ、今度は私も誘って頂けるのか。
『味元』、『マヨネーズ』、『醤油』、『ソース』。
この4つの調味料でこの街は、いいやこの世界の食文化は大きく変わっていく。
その波に乗らせて頂けるとは…。
このアイザック、どこまでもついて行きます。
この街アレンの塩取引を一手に仕切る、界隈で一番大きい商会だ。
この国、ジリヤ国は内陸で海がない。
しかし塩は生活必需品、旅は危険で魔物や盗賊がでることもある。
そこに目を付けた祖父がリベル国より、危険を冒してまで塩の取引をしたのがこの商会の始まりだ。
そして父の代には各商会も沿岸部まで買い付けに行くより、アバンス商会でまとめて仕入れたほうが手間がなく、価格も統一できると信用を得た。
その話を聞いたのは商業ギルドのギルドマスター、アレック様からだった。
マジック・バッグの中で塩と不純物を分離させ、その手間賃で商売を始めたエリアスという少年がいると。
私も長いことこの業界に携わってきたが、そんな話は聞いたことがない。
もしもそれが本当なら、マジック・バッグの方が計り知れない価値があるのでは?と、私は思った。
アレック様も私と同じ意見でただ当人はマジック・バッグより、精選処理の方に目が行くらしい、と笑っていた。
マジック・バッグをオークションで売れば、遊んで暮らせるだけの大金が手に入るのにだ。
そして商業ギルドで分離された塩を見せてもらった。
素晴らしい!
塩を精選処理すると、とても手間がかかり価格も高騰する。
店の利益を乗せると、どうしても精選処理した塩は高すぎる。
そのため、不純物が入った塩をメインに扱っているのだ。
精選処理された塩は上位の貴族に喜ばれ高く売れる。
探りを含めてその少年に会ってみるか。
少年は『なごみ亭』という元宿屋に下宿していると聞く。
その宿屋も少年が作った調味料で、今は食堂として大層繁盛しているいるとか。
朝の忙しい時間帯を避け午前に『なごみ亭』に足を運んだ。
食堂の女の子に少年を呼んでもらった。
彼は13~15歳くらいに見え美形で黒髪、黒い瞳の少年だった。
なぜか人の心を引きつけ夢中にさせる、雰囲気を持つ少年。
丁寧な対応で受け答えし、見た目以上の年齢なのかも知れないと思った。
商談に入ると
「『味元』は商業ギルドの広い販売網を使い国境を超え世界に広めたい。消耗品は購入を繰り返するので、数が売れれば薄利多売でも十分以上に儲かる」、と言われた。
なんという考え方だ。
まして自分の店の商品を『世界に広めたい』などと、大層な夢は聞いたことがない。
『マヨネーズ』の独占販売を申し出たが賞味期限が短く、量産体制が出来ていないそうだ。
量産体制ができれば考える、とは言ってくれたが。
『マヨネーズ』の情報料は商業ギルドでなんと、50,000,000円もの値を付けているのだ。
店で負担するには金額が大きすぎる。
だがこれを逃すのは惜しい。
だから『独占販売』なのだ。
『味元』は卸してもらい、塩塩300kgの精選処理をお願いした。
マジック・バッグに塩300kgを収容し、短い時間で処理が終わる。
そんなことはあり得ない!
そんな多大な価値のあるマジック・バッグの使い方がこれなのか?
* * * * *
「アイザックさん。こんにちわ!」
そんなある日、エリアス様が訪ねてきた。
200年ぶりに女神ゼクシー様の神託が降り、この少年が『愛し子』様だと言う噂は一部の教会関係者の間ではすでに噂になっている。
もはや『この少年』ではなくエリアス様だが。
なにやらまた新しい調味料ができたとか。
「はい、『醤油』と『ソース』です。」
「『醤油』と『ソース』?」
「『醤油』は煮物、焼物、ダシに合い、『ソース』は揚げ物に合います」
「揚げ物とは?」
「これです」
そう言うと彼はマジック・バッグから皿を取り出した。
皿の上には刻んだキャベツが乗せてあり、その上には何かが乗っている。
フォークを差し出され思わず受け取った。
「こちらがそうです。オーク肉に衣を付け油で揚げた『カツ』と、同じように衣を付け醤油というものを付け揚げた鳥肉『唐揚げ』です」
カツと言っていた衣肉と刻みキャベツに黒い液体をかけ差し出された。
「この黒い液体が『ソース』です。どうぞ、召し上がってください」
「うむ」
(まだ暖かいではないか!作ったばかりにしては暖かすぎる。だが『愛し子』様である以上、詮索はできない)
オーク肉にかぶりつくと、
〈〈〈〈〈 ……………………!! 〉〉〉〉〉
外は『カリッ』と中は『ジューシー』!
叩いて筋を切り揚げたオーク肉は柔らかく、なんと美味しいことか!
こんな複雑な味の調味料は初めてだ。
野菜と果物の複雑な味がする。
そしてこの唐揚げもオーク肉とは違う旨味がある。
ただ食べれば良いという毎日の食事とは大違いだ。
「エリアス様。あなたはこんな料理の知識を一体どこで…」
聞いてはいけないことだった。
『愛し子』であるからには追及ができない。
「『なごみ亭』でこれから段々と、この『醤油』と『ソース』を使った料理を出していきます。特許はまだ取っていないので開示はしていませんが、商業ギルドにも卸します。アイザックさんも一口乗りませんか?卸す金額は『味元』と同じになりますけど」
おぁ、今度は私も誘って頂けるのか。
『味元』、『マヨネーズ』、『醤油』、『ソース』。
この4つの調味料でこの街は、いいやこの世界の食文化は大きく変わっていく。
その波に乗らせて頂けるとは…。
このアイザック、どこまでもついて行きます。
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