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第7部 視野を外へ
第44話 開拓の条件
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翌日、ドゥメルグ公爵家に向かった。
公爵家より以前もらった礼服ではなく、新品で仕立てたものを着ている。
店主ならいつ公の場に出ることがあるかもしれないからだ。
対応に出たメイドさんに昨日の話をし、取り次いでもらった。
部屋に案内され少し待たされた後にドゥメルグ公爵が入ってきた。
部屋に入るなり膝まづきそうになったドゥメルグ公爵を俺は止めた。
「やめてください。公爵。どうしたんですか?」
「そうはいかないんだよエリアス君。女神の『愛し子』様なら立場は国王より上だからね」
「俺は俺です。普通に接してください」
「わかったよ。助かる」
「昨日はこのような用事で来られたのですか?」
「アレン領主のこの私が『愛し子』様が降臨したのに、何もしないわけにはいかないからね」
「『愛し子』でも俺はなにも変わりません」
「君はそう思っても周りは放っておかないだろう。女神の神託にある干渉、拘束かなわずなら周りも何もできないだろう。神罰を受けたくないからね。それに女神から勝手御免が下りたんだ。この国でいやこの世界で何をしても咎められることはないんだよ」
「そんな気はありません。私は面白おかしく生きて行ければいいので」
「普通に考えれば夢物語だ。では他に望むことは無いのかい?」
「お聞きしたいことがあります。街の外にある木や岩を勝手に切ったり、採取することは可能でしょうか?」
「多少なら別だが州ごとに分かれている境界内は、街のものとなり駄目だな」
「では自然に生えている果実、果物はどうでしょうか?」
「それは構わない。雑草と同じだからな」
「では村を作りたいと言ったら可能でしょうか?」
「村だと。村は街で暮らせない人たちが集まり、開拓し造るものだ。魔物や魔獣が出る森の中で、とても苦しくそして開拓を条件に畑を耕し税として、穀物や野菜の一部を収めるなら可能だが、なぜ?」
「はい、私が望むものを造りたいからです」
「だから村を起こし自分で造ると言うのか?」
「はい、そうです」
「場所の希望はあるのかね?」
「近くに川が流れているアレンの街から東側の、アスケル山脈方面に作れればと思います」
「アスケル山脈方面か。あそこは開拓する予定もないから特に構わない。開拓した際に出た木や岩、土などは好きにして構わない。今、地図を持ってくる」
ドゥメルグ公爵は立ち上がり部屋を出た。
そして執事のアルマンと何やら大きい紙を巻いたものを持ってきた。
「ようこそいらっしゃいました、エリアス様」
「おじゃましています、アルマンさん」
そしてアレンの街の地図を広げ村を作る場所を決めた。
「村人は何人くらいの予定なんだ?」
「今のところは私、一人です」
「一人だと?それは村ではない。一人ぐらいなら森の中に小屋でも建て、住むくらいなら税は掛からない」
「ですが穀物などを育てる開墾を考えたら、一人では生活できません」
「そうだ、アルマン。最低、毎日食べられるだけの野菜や穀物が採れるだけの畑を、耕さないと生活できないからだ」
「それは気に、なさらないでください。私が知りたいのは、どの位の面積なら利用しても良いのか、ですから」
地図を指差しながら説明をする。
「ではここの場所当たりから、アスケル山脈方面に進む分には、いくらでも好きにして構わない」
ドゥメルグ公爵が指を差していたのは、街から歩いて2時間くらいの場所から森の中に入った場所だった。
「本来なら許可は出さないところだが。なにをするかは聞かないでおこう。ただ住人が100人食べていけるようになったら、税として収穫量の4割を払ってもらおう。そしてそれまでは定期的に屋敷まで報告に来るように」
「それでお願いします」
そしてドゥメルグ公爵はあることを思いついた。
「ただし条件がある。近日中に晩餐会があるんだが。これは近郊の公爵や貴族たちが集まり友好を深め情報交換する場になる。先日の『カステラ』では弱いんだ。その時に出す料理で来訪者を驚かすようなメニューを考えてほしいのだが。それができれば念書も書こう。どうかな?」
「分かりました。やりましょう!晩餐会はいつでしょうか?」
「来週金曜の19時からだ」
「ではさっそく、料理長ジャンさんと打ち合わせをしたいと思います。厨房に行っても構わないでしょうか?」
「さっそくかい?アルマン、エリアス君を厨房に案内してやってくれ」
「分かりました。公爵様」
俺はアルマンと一緒に厨房に向かった。
公爵家より以前もらった礼服ではなく、新品で仕立てたものを着ている。
店主ならいつ公の場に出ることがあるかもしれないからだ。
対応に出たメイドさんに昨日の話をし、取り次いでもらった。
部屋に案内され少し待たされた後にドゥメルグ公爵が入ってきた。
部屋に入るなり膝まづきそうになったドゥメルグ公爵を俺は止めた。
「やめてください。公爵。どうしたんですか?」
「そうはいかないんだよエリアス君。女神の『愛し子』様なら立場は国王より上だからね」
「俺は俺です。普通に接してください」
「わかったよ。助かる」
「昨日はこのような用事で来られたのですか?」
「アレン領主のこの私が『愛し子』様が降臨したのに、何もしないわけにはいかないからね」
「『愛し子』でも俺はなにも変わりません」
「君はそう思っても周りは放っておかないだろう。女神の神託にある干渉、拘束かなわずなら周りも何もできないだろう。神罰を受けたくないからね。それに女神から勝手御免が下りたんだ。この国でいやこの世界で何をしても咎められることはないんだよ」
「そんな気はありません。私は面白おかしく生きて行ければいいので」
「普通に考えれば夢物語だ。では他に望むことは無いのかい?」
「お聞きしたいことがあります。街の外にある木や岩を勝手に切ったり、採取することは可能でしょうか?」
「多少なら別だが州ごとに分かれている境界内は、街のものとなり駄目だな」
「では自然に生えている果実、果物はどうでしょうか?」
「それは構わない。雑草と同じだからな」
「では村を作りたいと言ったら可能でしょうか?」
「村だと。村は街で暮らせない人たちが集まり、開拓し造るものだ。魔物や魔獣が出る森の中で、とても苦しくそして開拓を条件に畑を耕し税として、穀物や野菜の一部を収めるなら可能だが、なぜ?」
「はい、私が望むものを造りたいからです」
「だから村を起こし自分で造ると言うのか?」
「はい、そうです」
「場所の希望はあるのかね?」
「近くに川が流れているアレンの街から東側の、アスケル山脈方面に作れればと思います」
「アスケル山脈方面か。あそこは開拓する予定もないから特に構わない。開拓した際に出た木や岩、土などは好きにして構わない。今、地図を持ってくる」
ドゥメルグ公爵は立ち上がり部屋を出た。
そして執事のアルマンと何やら大きい紙を巻いたものを持ってきた。
「ようこそいらっしゃいました、エリアス様」
「おじゃましています、アルマンさん」
そしてアレンの街の地図を広げ村を作る場所を決めた。
「村人は何人くらいの予定なんだ?」
「今のところは私、一人です」
「一人だと?それは村ではない。一人ぐらいなら森の中に小屋でも建て、住むくらいなら税は掛からない」
「ですが穀物などを育てる開墾を考えたら、一人では生活できません」
「そうだ、アルマン。最低、毎日食べられるだけの野菜や穀物が採れるだけの畑を、耕さないと生活できないからだ」
「それは気に、なさらないでください。私が知りたいのは、どの位の面積なら利用しても良いのか、ですから」
地図を指差しながら説明をする。
「ではここの場所当たりから、アスケル山脈方面に進む分には、いくらでも好きにして構わない」
ドゥメルグ公爵が指を差していたのは、街から歩いて2時間くらいの場所から森の中に入った場所だった。
「本来なら許可は出さないところだが。なにをするかは聞かないでおこう。ただ住人が100人食べていけるようになったら、税として収穫量の4割を払ってもらおう。そしてそれまでは定期的に屋敷まで報告に来るように」
「それでお願いします」
そしてドゥメルグ公爵はあることを思いついた。
「ただし条件がある。近日中に晩餐会があるんだが。これは近郊の公爵や貴族たちが集まり友好を深め情報交換する場になる。先日の『カステラ』では弱いんだ。その時に出す料理で来訪者を驚かすようなメニューを考えてほしいのだが。それができれば念書も書こう。どうかな?」
「分かりました。やりましょう!晩餐会はいつでしょうか?」
「来週金曜の19時からだ」
「ではさっそく、料理長ジャンさんと打ち合わせをしたいと思います。厨房に行っても構わないでしょうか?」
「さっそくかい?アルマン、エリアス君を厨房に案内してやってくれ」
「分かりました。公爵様」
俺はアルマンと一緒に厨房に向かった。
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