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第6部 怒涛の『マヨネーズ』伝説

第31話 『マヨネーズ』販売開始!

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 朝が来た。
 一階の食堂に降りていくと丁度、アルバンさんたちが食事をしていた。
 俺が朝、遅く起きるのを事前に伝えておいたから、先に食べるように言っておいたのだ。

「お早うございます」
 そう言って俺は丁度、席が空いたので同じテーブルに着いた。

「いただきます!」と手を合わせ食事を始める俺。

「エリアス様、『いただきます』とはどう言う意味でしょうか?」

「はい、『いただきます』は食事を作ってくれた人に対する感謝や、食材となった野菜や肉などに感謝するという意味があります。食べ終わったら『ごちそうさま』と言って、更に感謝と敬意を表すのです」

「ほう、食事前に神に感謝する祈りの言葉と同じですね。今日から我々もそうしましょう」

「無理に変える必要はありませんよ」と、俺は笑った。


 食事の後、俺の部屋にアルバンさんを呼び、現在の我が家の収入源について話しておいた。
 ①塩と砂の精選処理は不定期。依頼待ち。
  100g当たり売値33,000円の0.2%の手数料が入る。
 ②『味元あじげん』の製造販売は商業ギルドへ毎月1,000個卸し月200万円の収入。
 ③『マヨネーズ』は情報料が高く『なごみ亭』しか使用許可を出していないこと。
 
「塩と砂の精選処理ですか。マジック・バッグでそんなことが出来るなんて…」

「これは企業秘密ですからね」

「ええ、勿論です。定期的な収入は『味元あじげん』のみですね。『マヨネーズ』が惜しい。量産化が出来ればいいのですが」

 ストレージ内で製造し販売も考えたが、『味元あじげん』の様に俺以外の人が作れないのでは問題だ。
 誰かが『マヨネーズ』の情報料を買い取るまで、人の手で作りたいと思っていたところだ。

 貯えもまだ20,000,000円くらいはある。
 奴隷や人を雇うこともできる。
 
 ただ作っても販売ルートがない。
 そうだ!以前、アバンス商会のアイザックさんが『マヨネーズ』を販売したいと言っていた。
 これを機に手を繋ぐのも良いかもしれない。

「アルバンさん。まずは『マヨネーズ』を作る前に販売ルートの確保です。思い当たる店があるので一緒に行きませんか?」

「販売ルートですか。その店の名は?」

「アバンス商会です。以前、精選処理を頼まれた時に『味元あじげん』や『マヨネーズ』販売をさせてほしいと言ってたからね」

「アバンス商会ですか!この界隈では一目置かれる大商会ですね」

「そうです、そこならある程度の量なら受け入れてくれるはずだ」

 その時に原材料となる大豆、植物油、塩を仕入れれば少しは安くしてもらえるはずだ。

 ただ販売前に反響を知りたいな。
 そうだ『なごみ亭』に置かせてもらて販売してもらおう。

「アルバンさん。販売前にどのくらいの反響があるのか調べる必要があります」

「はい。ただどうやって」

「『なごみ亭』に置かせてもらうんです。食事に来たお客さんに販売してもらえば」

「それはいいアイデアですね!さっそくやりましょう」

  *    *    *    *    *

 朝の忙しい時間帯が終わった頃を見計らい、サリーさんたちに話をした。

「実はご相談がありまして」

「相談?ビルを呼んでくるわ。待っていて」
 そう言うとサリーさんは厨房にビルさんを呼びに行ってくれた。

「ようエリアス君。相談があるんだって、なんだい?」

「実は…」

『マヨネーズ』を卸しで売ろうと考えていること。
 その前にどのくらいの反響があるのか調べたいので、『なごみ亭』で店頭販売をしてほしいことを伝えた。

「それは助かる!売ってくれ、と言うお客も多くてさ~。断るのも大変だったんだ。空き時間の間に店でも『マヨネーズ』を作っていたが、忙しくてとても手が回らない。卸してくれるなら、こんなに嬉しいことはないよ」

「価格ですが『味元あじげん』と同じ価格統一で、300gで3,000円でどうでしょう?」

「300gで3,000円ねぇ」

「少し量が少なくありませんか?」
 と、アルバンさんが言う。

「『マヨネーズ』は長期保存ができないので、300gくらいの方が使い切れて丁度良いと思いまして」

「それにしても値段が平均賃金一日分の3,000円だと高くありませんか?」

「いえ、逆にです。あまり手頃な価格だと、購入者が多くなりすぐに売切れです。1,000円で欲しい人が九人いるより、3,000円でも買う人が三人いれば良いのです。人件費、材料費を考えたらそれくらいの値段にしないと採算が取れません」

「そうですか。今後の事業拡大を考慮したら、それくらいの金額の方がいいかもしれませんね」

「取り分は店側は三割でどうでしょうか?」

「俺にはそんな難しい話は分からないからな。二人に任せるよ」と、笑うビルさん。


 その晩から『なごみ亭』で50個ほど試しに『マヨネーズ』を売ることにした。
 ここから怒涛の『マヨネーズ』伝説が始まる?!
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