30 / 128
第5部 従業員
第30話 閑話 アルバン
しおりを挟む
私の名はアルバン。
12歳で商人に丁稚奉公に入り、それから五年。
汗水垂らして働きながら一生懸命に仕事を覚えた。
その間に僅かだがお金を貯め、同じ店で働いていたアルシアと知り合い結婚した。
それを機会に俺は独立した。
馬車を買い行商を妻と始めた。
それから三年後にアディが生まれた。
その愛らしい顔を見ては、『この子のために頑張らないと』と思ったものだ。
この子のためにも店を持ちたいと、先物取引に手を出したのが運の尽き。
売れると言われて買った穀物が大暴落。
売っても赤字になるばかり。
遂に支払いも出来なくなり、家族三人して奴隷に堕ちた。
そんなある日、奴隷を買いにお客が来ていると言われ、家族三人が呼び出された。
そこにいたのは13~5歳くらいの珍しい黒髪に黒い瞳の男の子が一人。
こんな子が奴隷を買えるのか?と疑問に思ったが、奴隷商のオズマンドさんが相手をしている以上間違いないのだろう。
美形で黒髪、黒い瞳の少年。
なぜか人の心を引きつけ夢中にさせる、雰囲気を持つ少年。
私だけ気に入られても妻と娘と、一緒で買われなければと必死に訴えた。
「お願いします!何でもしますから!妻と娘も一緒に」
「どうか子供と引き離さないでください!」
「お母さん~!お父さん~!!」
と、娘は泣きだしている。
三人で購入金額は700万円。
それだけ出せばかなり言い奴隷が二人買える。
駄目かと思っても諦められない。
なぜなら親子三人で購入してもらえる可能性は低いからだ。
妻はまだ家事や読み書き、料理ができるが娘はまだ五歳。
娘だけ残って売れたとしても、異常者の慰み者になるだけ。
なにも出来るわけはなく、ここで別れたら二度と会うことはできないだろう。
そんなお客の出した条件が『奴隷解放』後も守秘義務が発生する、だった。
そんな条件で親子三人、買ってもらえるなら何でも呑もう。
しかも契約は制約魔法になり三人で1,000万円にもなった。
1,000万円と聞いても、
「それで構いません。お願いします」と焦る様子もなく。
ここまでお金を出す意味が分からない。
それとも買われた後でとんでもない仕打ちが待っているのか?
しかしこちらには選択権がない以上、藁にもすがる思いだった。
我々三人は奴隷契約をし、エリアスと言う名の少年の後をついて歩ている。
彼の家に向かっているのだ。
貴族様なのか?
マジック・バッグを持っており1,000万円の大金を、ポンと出せるのは貴族しかない。それも高位の。
歩いていくと『お食事処 なごみ亭』と看板がある店に入った。
以前は宿屋で今はここで下宿をしているという。
店の人たちに紹介され空いている部屋を一部屋、借りてもらえた。
『狭いようなら隣の部屋も借りるけど』、と言われた。
『奴隷なのに部屋がもらえるなんて。一部屋で十分です』といった。
板の間でも仕方ないのに。なんて心が広いお方なんだ。
エリアス様には奴隷であることを極力、黙っているように言われた。
これから私も営業に回る都合上、奴隷では相手にしてもらえないからだ。
制約魔法で胸に紋章を刻んでいるので、黙っていれば奴隷だと分からない。
そのため、へつらう必要もないと言われた。
奴隷ではなく給料前払いの雇用だと思ってほしいと言われた。
そんなことがあるのだろうか?
実際、給料分以上に働いているのに解放されない奴隷も多いと聞く。
年齢を伺うと17歳で親族は無く、私と同じ商人だとか。
17歳でここまで大成功を、収めているなんて聞いたことがない。
私も元商人の端くれ、お役に立ってみせる。
しかも生活用品や三人分の着替え、下着と靴を買うようにと20万円も渡された。
いったい何をどれだけ買う気なんだ?
これだけの大金を持たせてくれ、
「ここを今出ても貴方達は行くところも無いはず。20万のお金では逃げてもその場だけで、いつまでも暮らせませんから信用していますよ」と言われた。
戻ってきた時に『マヨネーズ』という調味料を作り、販売することを説明された。
その夜はご主人様と『なごみ亭』で夕食を食べた。
メニューは1種類だけだったが、とても美味しく親子三人で久しぶりに笑った。
『マヨネーズ』の他に『味元』という調味料も作って、売っていることを聞きさらに驚いた。
僅かな時間で今日は驚くことばかりだ。
ご主人様がどうやってここまで大きくなったのか、私も元商人の端くれとして知りたいと思った。
そして1,000万円の価値を親子三人に、見出してくれたご主人様に私は心からの忠誠を誓おう。
12歳で商人に丁稚奉公に入り、それから五年。
汗水垂らして働きながら一生懸命に仕事を覚えた。
その間に僅かだがお金を貯め、同じ店で働いていたアルシアと知り合い結婚した。
それを機会に俺は独立した。
馬車を買い行商を妻と始めた。
それから三年後にアディが生まれた。
その愛らしい顔を見ては、『この子のために頑張らないと』と思ったものだ。
この子のためにも店を持ちたいと、先物取引に手を出したのが運の尽き。
売れると言われて買った穀物が大暴落。
売っても赤字になるばかり。
遂に支払いも出来なくなり、家族三人して奴隷に堕ちた。
そんなある日、奴隷を買いにお客が来ていると言われ、家族三人が呼び出された。
そこにいたのは13~5歳くらいの珍しい黒髪に黒い瞳の男の子が一人。
こんな子が奴隷を買えるのか?と疑問に思ったが、奴隷商のオズマンドさんが相手をしている以上間違いないのだろう。
美形で黒髪、黒い瞳の少年。
なぜか人の心を引きつけ夢中にさせる、雰囲気を持つ少年。
私だけ気に入られても妻と娘と、一緒で買われなければと必死に訴えた。
「お願いします!何でもしますから!妻と娘も一緒に」
「どうか子供と引き離さないでください!」
「お母さん~!お父さん~!!」
と、娘は泣きだしている。
三人で購入金額は700万円。
それだけ出せばかなり言い奴隷が二人買える。
駄目かと思っても諦められない。
なぜなら親子三人で購入してもらえる可能性は低いからだ。
妻はまだ家事や読み書き、料理ができるが娘はまだ五歳。
娘だけ残って売れたとしても、異常者の慰み者になるだけ。
なにも出来るわけはなく、ここで別れたら二度と会うことはできないだろう。
そんなお客の出した条件が『奴隷解放』後も守秘義務が発生する、だった。
そんな条件で親子三人、買ってもらえるなら何でも呑もう。
しかも契約は制約魔法になり三人で1,000万円にもなった。
1,000万円と聞いても、
「それで構いません。お願いします」と焦る様子もなく。
ここまでお金を出す意味が分からない。
それとも買われた後でとんでもない仕打ちが待っているのか?
しかしこちらには選択権がない以上、藁にもすがる思いだった。
我々三人は奴隷契約をし、エリアスと言う名の少年の後をついて歩ている。
彼の家に向かっているのだ。
貴族様なのか?
マジック・バッグを持っており1,000万円の大金を、ポンと出せるのは貴族しかない。それも高位の。
歩いていくと『お食事処 なごみ亭』と看板がある店に入った。
以前は宿屋で今はここで下宿をしているという。
店の人たちに紹介され空いている部屋を一部屋、借りてもらえた。
『狭いようなら隣の部屋も借りるけど』、と言われた。
『奴隷なのに部屋がもらえるなんて。一部屋で十分です』といった。
板の間でも仕方ないのに。なんて心が広いお方なんだ。
エリアス様には奴隷であることを極力、黙っているように言われた。
これから私も営業に回る都合上、奴隷では相手にしてもらえないからだ。
制約魔法で胸に紋章を刻んでいるので、黙っていれば奴隷だと分からない。
そのため、へつらう必要もないと言われた。
奴隷ではなく給料前払いの雇用だと思ってほしいと言われた。
そんなことがあるのだろうか?
実際、給料分以上に働いているのに解放されない奴隷も多いと聞く。
年齢を伺うと17歳で親族は無く、私と同じ商人だとか。
17歳でここまで大成功を、収めているなんて聞いたことがない。
私も元商人の端くれ、お役に立ってみせる。
しかも生活用品や三人分の着替え、下着と靴を買うようにと20万円も渡された。
いったい何をどれだけ買う気なんだ?
これだけの大金を持たせてくれ、
「ここを今出ても貴方達は行くところも無いはず。20万のお金では逃げてもその場だけで、いつまでも暮らせませんから信用していますよ」と言われた。
戻ってきた時に『マヨネーズ』という調味料を作り、販売することを説明された。
その夜はご主人様と『なごみ亭』で夕食を食べた。
メニューは1種類だけだったが、とても美味しく親子三人で久しぶりに笑った。
『マヨネーズ』の他に『味元』という調味料も作って、売っていることを聞きさらに驚いた。
僅かな時間で今日は驚くことばかりだ。
ご主人様がどうやってここまで大きくなったのか、私も元商人の端くれとして知りたいと思った。
そして1,000万円の価値を親子三人に、見出してくれたご主人様に私は心からの忠誠を誓おう。
17
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる