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第5部 従業員

第29話 従業員

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 奴隷商に来ている俺は目の前にいる、三人の親子を購入するかどうか悩んでいる。
 
 三人の親子は購入してほしいらしく、必死にアピールしている。
 売れないと他の奴隷商に引き渡され、粗悪な客しかいないところに落ちていくらしい。
 だから必死なのか。

「奴隷にする際の契約はありますか?」

「はい。雇い主に危害を加えてはいけない、ということです。危害を加えた場合は、奴隷の首輪が締まります」

「では条件があります。商売上色々あるので、支払った分、働いたと思ったら『解放』します。ただしその後も俺のことは守秘義務を守ってください」

「『奴隷解放』後も守秘義務が発生する、と言うことでしょうか?」

「はい、そうです。それが条件です」

「やります、それで構いません…「その条件を飲みますから、お願いします…」
 と親子が言った。

「その場合ですと契約魔法を掛けることになり、費用が別途一人100万円掛かりますが」

(1,000万円か、それでもまだ2,000万円は残っているからいいか)
「それで構いません。お願いします」

「はい、では早速、奴隷契約をしましょう。契約魔法を掛けますので首輪の代わりに胸に紋章を刻みます。違反行為をすると、胸が締め付けられる様になっております」

 奴隷契約はナイフで切って出た俺の血を魔法のスクロールに垂らし、契約される側がそこに手を置くというものだった。

「はい、これで契約終了となります」

 俺はストレージから1,000万円を出しテーブルに置いた俺に、オズマンドさんは驚いた顔をしていた。
 それはそうだろう、薄っぺらなバッグから大金貨100枚が出てきたのだから。

「ではまたのお越しをお待ちしております」

 オズマンドさんの見送りの声を背に受け、俺たち四人は奴隷商を出た。

 三人は上から羽織るムームーの様な服を着ている。
 (着替えや下着も揃えないといけないな、後で買いに行かせよう)


 『なごみ亭』に着き住込みで新しく従業員を雇ったと言い、三人をビルさん達に紹介した。

 三人には奴隷であることを極力、黙っているように伝えた。
 これからアルバンさんにも営業に回ってもらう都合上、奴隷では相手にしてもらえないからだ。
 契約魔法で胸に紋章を刻んでいるので、黙っていれば奴隷だと分からないからね。
 そのため、へつらう必要もないことを事前に言っておいた。

 奴隷ではなく給料前払いの雇用だと思ってほしいと伝えた。

 そして空いている部屋を一部屋、社宅として借りてあげた。
『狭いようなら隣の部屋も借りるけど』、と言ったら『奴隷なのに部屋がもらえるなんて。一部屋で十分です』といわれた。

「ご主人様は何をされている方なのでしょうか?」
 と、アルバンさんに聞かれた。

「商人です」

「私と同じ商人ですか。それならお役に立てるかもしれません。他に家族の方はいらっしゃらないのですか?」
 父母も他界し親族も居ないこと説明した。

「まだお小さいのに」
 と、小さい声が聞こえたが
「これでも17歳なんですよ」と言ったら驚いていた。

 そもそも子供が1,000万円なんて大金を持っているわけがない。
『僕は童顔なだけで17歳なんです~』てバッジでも作って胸に貼っておくのか?
 毎回、説明するのも面倒になってきた。

 三人を二階の部屋に案内した。

 そして足りないものを買い揃えるように指示を出した。
 20万円を入れた巾着を渡し生活用品の他に、洋服屋に行き三人分の着替えや下着と靴を購入するように言った。

「こんな大金を持たせて預けて頂けるので?ご主人様」

「ご主人様ではなくエリアスと呼んでください。あァ、それからアディちゃんはお兄ちゃんでお願いします」

「「「 はい畏まりました。エリアス様(お兄ちゃん) 」」」

「ここを今出ても貴方達は行くところも無いはず。20万のお金では逃げてもその場だけで、いつまでも暮らせませんから信用していますよ」

「そこまで私たちのことを」

「俺も若輩者ですから何かあれば遠慮なく言ってください」
 と、言ったら三人は感動したようだった。
 世間に冷たくされ、欺かれることばかりで心が荒んでいたようだ。

 落ち着いたとことで三人を買い物に行かせた。

 その後、戻ってきた三人に『マヨネーズ』という調味料を作り、販売することを説明した。

 アディちゃん はまだ小さいから手伝い。
 その内、読み書きを教えてあげよう。

 その夜の夕食は『なごみ亭』で食べた。
 店は相変わらずとても混んでいた。
 あまりの美味しさに三人共、目を丸くして驚いていた。
 『マヨネーズ』の他に『味元あじげん』という調味料を俺が作って、売っていることを話したらさらに驚いていた。

 これで明日から『マヨネーズ』が作れる。

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