【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ

文字の大きさ
上 下
24 / 128
第4部 それぞれの思惑

第24話 アバンス商会

しおりを挟む
 あれから数日が過ぎた。

 そんなある日、俺にお客が来た。

「エリアスお兄ちゃんにお客さんが来てるよ」
『なごみ亭』の一人娘、アンナちゃんが俺を二階まで呼びに来た。

 何だろうと降りていくと、50代くらいの商人風の恰幅の良い男性が居た。

「私はアバンス商会のアイザックと申します。突然伺いすみません」

「いえ、その様なことは。エリアスと申します。今日はどんな御用でしょうか?」

「商業ギルドで伺ってまいりました。塩の精選処理を請け負って頂けるとか。また『味元あじげん』や『マヨネーズ』の販売元もエリアス様と伺っておりますが」

【スキル・鑑定】簡略化発動
 名前:アイザック・エリントン 
 種族:人族
 年齢:52歳
 性別:男
 職業:アバンス商会会長
 レベル:17

(会長さんか、その割には腰が低いな)
「エリアスで結構ですよ。はいその通りです。立ち話も何ですからこちらにどうぞ」と、テーブルに案内した。
今は昼間の閉店している客のいない時間帯なのだ。

「具体的にはどのようなお話でしょうか?」 
「はい、『味元あじげん』はギルドに卸していると伺いましたが、可能であれば私共にも販売させて頂けないでしょうか?また『マヨネーズ』の独占販売を結んで頂ければと思いまして」 

(『マヨネーズ』を個人で作るなら情報料50,000,000円を払わなければならない。それなら権利を持っている俺から『マヨネーズ』を仕入すれば初期投資がない分、負担が少なくなるわけか)
「『味元あじげん』はすでに店頭販売価格が決まっております。商店に卸す場合は一律4,000円で良ければ販売可能です。」
「なぜ販売価格を決めるなどと…」
「私の趣旨としては個人の利益より、この街に食文化を芽吹かせたいだけなんです。宿屋やレストランや屋台で使ってもらい、そこから切磋琢磨して美味しいものを作ってもらいたいだけなんです」

「あなたも商人なら稼げるときに稼いだ方がいいのでは?」

「はい、だから商業ギルドなんです。『味元あじげん』は賞味期限がありません。そのため遠くの街や国に輸出しても品質に問題がないんです。この街アレンやジリヤ国と言う狭い範囲ではなく広めたい。だから商業ギルドの広い販売網を使い全国的にいえ、国境を超え世界的に広めたいのです。消耗品は購入を繰り返すので、数が売れれば薄利多売でも十分以上に儲かりますから」

「そんな壮大なお考えがあるとは。私の様なものでは考えられないお話です。では『マヨネーズ』はいかがでしょうか?」

「『マヨネーズ』は賞味期限があり、7日くらいしか持ちません。そのため、たくさん売ろうと思ったらその場所に、製造工場を作り配送できる範囲で売ることになります。ただ今は量産体制が出来ておらず『なごみ亭』使用する分で精いっぱいなんです。量産体制ができれば考えますが」
(ま、ストレージで材料があれば簡単に作れるけど)

「わかりました、では『マヨネーズ』は諦めましょう。『味元あじげん』は卸してください。それと精選処理をお願いできないでしょうか?実は商業ギルドでその話を聞いた際に『味元あじげん』や『マヨネーズ』の話を聞いたのです」 

「そうでしたか、100g当たり売値33,000円の20%の手数料を頂きます。それとマジック・バッグに1度収容するので、俺を信用してもらえないと仕事を受けることが出来ません」

「それは勿論、商業ギルドのアレックさんより伺っております。エリアス君は欲のない信用に値する人だと」

「アレックさんがそんなことを、照れますね。精選処理する塩はどのくらいありますか?」
「はい、300kgほどになります」
「それだと2,000万円近くになりますが宜しいんでしょうか?」
「はい、かまいません。それ以上の利益がこちらでは出ますから」
「いつ伺えばよろしいでしょうか?」
「当店はいつでも構いません」
「ではまだ昼過ぎですので、今から伺いましょう!それ程時間は掛かりませんから」「そんなに早くですか!ではさっそく参りましょう!」

 出かけることをアンナちゃんに言い、アバンス商会に向かった。
 
 アバンス商会に着き倉庫に向かった。
 倉庫にはたくさんの塩が積み上げられており、これが全て売りさばけるとのこと。
 塩は10kg単位に袋に入っており300kgなら30袋で分かりやすい。
そして不純物を入れる袋を1つ用意してもらった。

 始めようと思ったらアイザックさんがジ~と俺を見ていた。
「では始めてください」と言われ俺は塩をストレージに収容した。
 一瞬で塩が消えたことにアイザックさんは驚いている。

「私も商売柄マジック・バッグを持っておりますが、せいぜい入っても今の1/5。
しかも一度ではなく分割で入れてです。いったいどちらで手に入れられたのでしょうか?」
 (あれ?マジック・バッグて、そんな感じなんだ。今度からは気を付けよう)

「このマジック・バッグは曽祖父の代から受け次いでいるものなので、分かりません。これから作業をしますのでお待ちください」 
と、やってるい振りをするために俺は目を閉じた。

(このエリアスと言う少年は一体なにものなんだ。一見幼そうだが言葉使いもしっかりしており、手数料の計算の速さから高度な教育を受けたのが分かる。それにマジック・バッグだ。塩300kgは馬車一台分だ。そんなに収容できるなら仕入れに行くのも楽になり、軍からも移動の際の荷物運びを頼まれるなど引く手あまただろう。
しかも一瞬で収容できるなんて。私のマジック・バッグの容量でもここら辺では多いはずなのだ。だがせいぜいが貴重品を入れておくくらいだ。この少年には何かがある。仲良くしておいて損はないだろう)

「終わりました、アイザックさん。確認してください」

「もう終わりましたか?」

「はい、分けるだけですから」

 それが普通ではないのだ。バッグの中で塩と不純物と分けるなんて聞いたことがない。
「これからもよろしくお願いします。エリアス様とは、長い付き合いになりそうですからな」

(そんなに精選処理の仕事をくれるんだ。助かるな)
「こちらこそよろしくお願いします」

 そして俺は2,000万円近い手数料をもらい宿に戻った。
 順調すぎる、なにか怖いな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...