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第8部 領地経営
第72話 たんぱく質
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俺達はワイルドボアの肉を卸に、アルマン食堂に向かっている。
まだ午後2時くらいのはずだから、お店は暇なはずだ。
「こんにちわ!」
「あら、エリアス様。こんな時間にどうしたんだい?」
ドアを開けるとコーネリアさんとニーナさんが掃除をしていた。
「実はワイルドボアを狩ったので売りに来ました」
「まあ、ワイルドボアを!ちょっと待っててね。あんた、ちょっとあんた」
コーネリアさんが厨房の奥に消えていく。
しばらく待つと夫であるこの食堂の主人、アルマンさんを連れて戻って来た。
「やあ、エリアス様。ワイルドボアを狩ったんだって。どこにあるんだい?外かい」
「いえ、ここにあります」
俺は首からさせているバッグを叩いて見せた。
「マジック・バッグか。さすがに便利な物を持ってるな。ではこちらに出してくれないか」
そう言われ俺達は裏庭に案内された。
「さぁ、ここなら邪魔にならず、多少の血の匂いがしても問題ないからな」
そう言われ俺はストレージからワイルドボアを出した。
「「「 ドンッ!! 」」」
「ほぅ~、これはデカいな!これを狩って来たのか、凄いな」
全長2mはある大きなワイルドボアだ。
「それに血抜きもしてあるのか。これで美味しい肉が食べられるよ」
アルマンさんはそう言うと、解体用のナイフを用意し解体を始めた。
「コーネリア!いるか」
「なんだい、あんた。大きな声をだして」
「うちの店だけではこの肉の量は捌ききれない。ニーナと2人で他の店や住人に声を掛けて、ワイルドボアの肉が欲しい奴を集めてきてくれ」
「わかったよ、お前さん。ちょっと待ってておくれでないかい」
コーネリアさんは江戸時代のおかみさんの様な喋り方をして、ニーナさんを連れて出ていった。
その間、俺達はアルマンさんの解体を見ていた。
これで多少は手順を覚えたから、自分で出来るかもしれないな。
そんな事を考えていると、たくさんの人達が鍋を持ってやって来た。
「おぉ、なんて立派なワイルドボアだ」
「これは凄いな、領主様が狩ったのか。俺に1ブロックおくれ」
「はい、まいど!」
「私は2ブロックよ」
「はいよ~!」
集まった人達が、アルマンさんに欲しい量を言う。
1ブロックで大体、幅20cmくらいで厚さ5cmくらいの大きさの肉だ。
そしてアルマンさんがその大きさに切り分けていく。
各自が持参した入物に肉を入れ持ち帰る。
代金はコーネリアさんが用意をした鍋に各々が入れていく。
「ほら魔石だ」
そうアルマンさんに言われ、5cmくらいの魔石を渡された。
「よ~し、残りは俺の店でもらっておくか」
気が付くと肉は残り3ブロックくらいになっていた。
「じゃあ、解体料金と集客の金額を引くと、これくらいかな」
アルマンさんはそう言うと、お金を鍋に入れた。
「「 チャリ~ン! 」」
その音は小銭の響きだった。
鍋からお金を出し、見ると小銭がたくさんあった。(泣)
「みんなお金なんて持ってないからな。自分の払える金額を入れていったのさ」
きっと1万円にも満たない額だろう。
冒険者ギルドに売れば4~5万くらいにはなったかもしれない。
だがこの村では貧しく、通貨を持っている人が少ない。
しかも冷蔵庫が無いこの世界では生肉は傷むのが早い。
冒険者ギルドがあるような人口が多い街なら、すぐに肉も売れるだろう。
だがこの村では値段が高ければ誰も買わない。
危険な思いをして狩ってもお金にならない。
だから猟師が少ない。
その猟師も魔物ではなく、野鳥などを狩るくらいだから肉は量が出回らない。
牛、豚を飼ってはいるが、毎日食卓に上がるほどの数はない。
しかし肉は生活する上で大切な食材だ。
体を動かすのは筋肉だ。
その筋肉を作る栄養素で大切なのがたんぱく質だ。
特に肉は『良質なたんぱく質』が豊富に含まれている。
肉は筋肉や血液を作るだけでなく、骨を作るメカニズムを促進し、ホルモンのバランスを整える効果もある。
『骨を丈夫にする』のがカルシウムなら、『骨を伸ばす』作用がたんぱく質だ。
体力維持や子供の成長期にも欠かせないものだ。
だからこの村の人達のためにも、安いのは仕方がない。
だから、だから、たくさん肉を食べて健康に過ごしてほしいから。
安いのは仕方がない。
ポン。
誰かが肩に手を置いた。
見るとオルガさんだった。
「エリアス君、肉はそんなに体に必要な物だったのね。よく分かったわ」
「そうだぞ、エリアスっち。勉強になったぞ」
おっと、どうやら口に出ていたらしい。
『さすがエリアス君だわ。こんなに安く叩かれても、顔色一つ変えないなんて』
【メンタルスキル】沈着冷静の効果で愕然としているのに、それが顔に出ないエリアスだったのだ。
「こんばんわ!」
夕食の時間帯になり再び4人でアルマン食堂を訪れた。
店はいつもよりとても混んでいた。
「今夜はワイルドボアのシチューだよ。滅多に食べれないからね~、大人気さ」
うん、知ってる。
狩って来たの俺達ですから。
「だから1人700円だよ」
いつも1人500円なのに…。
200円、高くなっていた。
滅多に食べれないから高くなるのは分かるが…。
今日の夕ご飯の味は、涙の味がした。
まだ午後2時くらいのはずだから、お店は暇なはずだ。
「こんにちわ!」
「あら、エリアス様。こんな時間にどうしたんだい?」
ドアを開けるとコーネリアさんとニーナさんが掃除をしていた。
「実はワイルドボアを狩ったので売りに来ました」
「まあ、ワイルドボアを!ちょっと待っててね。あんた、ちょっとあんた」
コーネリアさんが厨房の奥に消えていく。
しばらく待つと夫であるこの食堂の主人、アルマンさんを連れて戻って来た。
「やあ、エリアス様。ワイルドボアを狩ったんだって。どこにあるんだい?外かい」
「いえ、ここにあります」
俺は首からさせているバッグを叩いて見せた。
「マジック・バッグか。さすがに便利な物を持ってるな。ではこちらに出してくれないか」
そう言われ俺達は裏庭に案内された。
「さぁ、ここなら邪魔にならず、多少の血の匂いがしても問題ないからな」
そう言われ俺はストレージからワイルドボアを出した。
「「「 ドンッ!! 」」」
「ほぅ~、これはデカいな!これを狩って来たのか、凄いな」
全長2mはある大きなワイルドボアだ。
「それに血抜きもしてあるのか。これで美味しい肉が食べられるよ」
アルマンさんはそう言うと、解体用のナイフを用意し解体を始めた。
「コーネリア!いるか」
「なんだい、あんた。大きな声をだして」
「うちの店だけではこの肉の量は捌ききれない。ニーナと2人で他の店や住人に声を掛けて、ワイルドボアの肉が欲しい奴を集めてきてくれ」
「わかったよ、お前さん。ちょっと待ってておくれでないかい」
コーネリアさんは江戸時代のおかみさんの様な喋り方をして、ニーナさんを連れて出ていった。
その間、俺達はアルマンさんの解体を見ていた。
これで多少は手順を覚えたから、自分で出来るかもしれないな。
そんな事を考えていると、たくさんの人達が鍋を持ってやって来た。
「おぉ、なんて立派なワイルドボアだ」
「これは凄いな、領主様が狩ったのか。俺に1ブロックおくれ」
「はい、まいど!」
「私は2ブロックよ」
「はいよ~!」
集まった人達が、アルマンさんに欲しい量を言う。
1ブロックで大体、幅20cmくらいで厚さ5cmくらいの大きさの肉だ。
そしてアルマンさんがその大きさに切り分けていく。
各自が持参した入物に肉を入れ持ち帰る。
代金はコーネリアさんが用意をした鍋に各々が入れていく。
「ほら魔石だ」
そうアルマンさんに言われ、5cmくらいの魔石を渡された。
「よ~し、残りは俺の店でもらっておくか」
気が付くと肉は残り3ブロックくらいになっていた。
「じゃあ、解体料金と集客の金額を引くと、これくらいかな」
アルマンさんはそう言うと、お金を鍋に入れた。
「「 チャリ~ン! 」」
その音は小銭の響きだった。
鍋からお金を出し、見ると小銭がたくさんあった。(泣)
「みんなお金なんて持ってないからな。自分の払える金額を入れていったのさ」
きっと1万円にも満たない額だろう。
冒険者ギルドに売れば4~5万くらいにはなったかもしれない。
だがこの村では貧しく、通貨を持っている人が少ない。
しかも冷蔵庫が無いこの世界では生肉は傷むのが早い。
冒険者ギルドがあるような人口が多い街なら、すぐに肉も売れるだろう。
だがこの村では値段が高ければ誰も買わない。
危険な思いをして狩ってもお金にならない。
だから猟師が少ない。
その猟師も魔物ではなく、野鳥などを狩るくらいだから肉は量が出回らない。
牛、豚を飼ってはいるが、毎日食卓に上がるほどの数はない。
しかし肉は生活する上で大切な食材だ。
体を動かすのは筋肉だ。
その筋肉を作る栄養素で大切なのがたんぱく質だ。
特に肉は『良質なたんぱく質』が豊富に含まれている。
肉は筋肉や血液を作るだけでなく、骨を作るメカニズムを促進し、ホルモンのバランスを整える効果もある。
『骨を丈夫にする』のがカルシウムなら、『骨を伸ばす』作用がたんぱく質だ。
体力維持や子供の成長期にも欠かせないものだ。
だからこの村の人達のためにも、安いのは仕方がない。
だから、だから、たくさん肉を食べて健康に過ごしてほしいから。
安いのは仕方がない。
ポン。
誰かが肩に手を置いた。
見るとオルガさんだった。
「エリアス君、肉はそんなに体に必要な物だったのね。よく分かったわ」
「そうだぞ、エリアスっち。勉強になったぞ」
おっと、どうやら口に出ていたらしい。
『さすがエリアス君だわ。こんなに安く叩かれても、顔色一つ変えないなんて』
【メンタルスキル】沈着冷静の効果で愕然としているのに、それが顔に出ないエリアスだったのだ。
「こんばんわ!」
夕食の時間帯になり再び4人でアルマン食堂を訪れた。
店はいつもよりとても混んでいた。
「今夜はワイルドボアのシチューだよ。滅多に食べれないからね~、大人気さ」
うん、知ってる。
狩って来たの俺達ですから。
「だから1人700円だよ」
いつも1人500円なのに…。
200円、高くなっていた。
滅多に食べれないから高くなるのは分かるが…。
今日の夕ご飯の味は、涙の味がした。
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