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第8部 領地経営

第57話 ヴィラーの村

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 俺達はアレンの街を出発し、後れを取り戻すかのように走っている。
 クリームシチュー発祥の地テオドーラを通り過ぎ、エターブの町も通り過ぎた。
 途中で分かれ道になり、北上するとヴィラーの村だそうだ。
 目的地のヴィラーの村までは2~3時間くらいか。

 話しで聞いていた分かれ道に来た。
 このまま真っ直ぐ進むと、王都の東側にあるウォルド領に行く。
 俺達は北上しヴィラーの村へ向かった。

 ヴィラーの村へ続く道は悪く凸凹している。
 これでは雨が降ったら、ぬかって大変だろうな。
 そんなことを考えながら走った。

 しばらく走ると2mくらいの高さの木の塀が見えてきた。
 俺達は門のところまで走った。

「そこで止まれ!」
 門に近づくと門番がいて止められた。

「俺達はここに赴任してきたセルベルト男爵だ」
 俺は懐から男爵の紋章を出して見せた。
 冒険者風の服を着ている俺達を見て、驚いているようだった。

「だ、男爵様でしたか、失礼いたしました。さっ、中へお入りください」
 門番をしていた男はロビーと言う名で21歳。
 普段は猟師をしており、門番は交代制でしていると言った。

「村長の家に案内いたします。さあどうぞ」

 門を通るとメインの通りがあり、その両側に平屋の家が広がる。
 どちらかと言うと納屋レベルの家が多い。
 店らしき家も何軒かあり、最低限の買い物はできそうだ。

 そして歩いて行くと、他の家より一回り大きい家に着いた。
「アーマン村長、村長いますか!」
「なんだロビー。大きな声を出して」
 家の中から白髪の60歳前後の細面の人が出てきた。

「男爵様がみえました」
「おぉ、そうでしたか。長旅お疲れ様でした。さぁ中へどうぞ」
 冒険者風の俺達を見てロビーさんと同じように、驚いたようだが家の中に案内してくれた。
 家の中に入ると少し広い居間があった。
 聞くと集会所にもなっているそうだ。

「さぁ、どうぞ」
 席を勧められ、俺達は座った。

「私はこの村の村長を仰せつかっておりますアーマンです。宜しくお願い致します」
「私はエリアス・ドラード・セルベルト。そしてこちらから妻のオルガ、ルイディナ、パメラです」
「奥様が3人ですか。王都からの早馬で、大体のお話は伺っております。キングを倒された功績で男爵様になったとか」
「えぇ、そうです。冒険者のみんなで力を合わせて倒しました」
「ほう、みんなで力を合わせて、ですと。それはなんと謙虚な」

 そしてアーマン村長に村の話を聞いた。
 このヴィラーの村の人口は約200人。
 3~4人家族と考えたら50~60世帯くらいか。
 おもに農業は大麦、ライ麦を植え生活をしているそうだ。

 農業は耕地を2つに分け1つの耕地では夏に大麦・ライ麦を、もう1つの耕地は休ませ、その間は羊・牛・豚などの家畜を飼って家畜が落とす糞尿で土地を回復させている。
 翌年はその2つの耕地を交替する。
 俗にいう二式農業だ。


 そして前任者の男爵の時は税率(収穫物の取り分)は4割だったそうだ。
 だが男爵の消費癖が酷く、商人にお金を借りはじめた。
 その返済のため、更に村人に税金を新たにかけ始めた。

 そんなことはどの領地でも多少であればやっている事だ。
 だがやり過ぎだ。
 農民一人一人から取る人頭税。
 莫大な相続税。
 塩や薪などの生活必需品にも税金をかけ、結婚すれば結婚税を掛けた。
 そして初夜権しょやけんを作り、婚約したばかりの男女の初夜において新郎よりも先に新婦と性交することができる権利を主張した。
 それが嫌なら税金お金を払えと。
 最後には呼吸をする事や、生きている事に対して税金を払えと言い出した。
 
 奇麗な女性が居る家には色んな税金を掛け、払えない場合は女性の体を要求した。

 そんなことが続き、王国の監査役に摘発され爵位剥奪となったそうだ。
 この国は脱税や地方貴族の横暴については、とても厳しい国だ。
 国民を虐げると結果として、国の損失になることを王国は分かっているからだ。

 そしてしばらく統治者不在が続き、俺が来たと言う訳だ。

「アーマン村長、今まで男爵の収穫物の取り分は4割と聞いていましたが、暮らしはどうなのでしょうか?」
「ごらん頂いた通りです。けして豊かではありません」
「そうですか、実はここに来る前にドゥメルグ公爵様から、私の取り分は来年の秋の収穫分から4割ではなく3~3.5割位にするように言われてきました」
「3~3.5割ですか。それは助かります」
「ですがそれだと年360~400万くらいの収入しかなく、家族4人では暮らしていけません」

「では、また税率を上げると言われるのですか!!」
 アーマン村長がテーブルを叩き、大きな声を出して立ち上がった。

「いいえ、そうではありません。それなら収穫を上げれば良いのです」
「収穫を上げるですと!」
「私達もお金が欲しい。貴方達も生活がある。それなら今よりも多く収穫が出来るようにすればいいのです」

 そして俺はこれからのことを話し始めた。
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