上 下
32 / 98
第5部 終息

第32話 初デート?

しおりを挟む
 俺は冒険者ギルド長のパウルさんに呼ばれた。
 話の中でアレンの領主、ドゥメルグ公爵様より呼出しが掛かっている事を知った。
 俺は公爵家に行く事になり、礼服がないことに気づいた。
 俺はそうしたことに疎く、パウルさんがアリッサさんを付けてくれた。
 こうして俺とアリッサさんは、礼服を買いに行くことになった。


 俺達はギルドの1階に降りた。
 そしてアリッサさんは他の受付の人に、外出することになったことを話した。

「え~、それってどういう事?今は時間中だよね」
「ギルド長の指示なのよ。ヘルガ」
「じゃあ私が行くわ」
「なんであなたが行くのよ」
「洋服屋に行くなら私でもできるわ」
「そ、それは。ギルド長の指示だから私が行くわ。行きましょう、エリアス君」
 そう言うとアリッサさんは俺の手を取りギルドを出た。

「ほんと、困った子ね。ヘルガは」
「アリッサさんはヘルガさんと、仲良くないんですか?」
「そんなことはないわ。彼女とは長い付き合いだもの」
「ヘルガさんて、ギルドに勤めてどのくらいなんですか?」
「そうね。かれこれ40~50年…えっ、何でもないわ忘れて」
 40~50年?ヘルガさんもエルフなのか?

 そしてギルドを出てから、ずっと手を繋いでいるけど?

 2人で歩いて行くと洋服屋に着いた。
 この世界の洋服は千差万別だ。
 地球の中世ヨーロッパ的な服があると思えば、近代的な服もある。
 きっと転生者などが持ち込んだものだろう。

「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか?」
 金色の髪の奇麗な店員さんが出てきた。
 アリッサさんが代わりに対応する。
「公爵家に呼ばれても、恥ずかしくない礼服が欲しいわ。すぐ着れる服とオーダーメイドを各一着ずつお願い」 
「公爵家ですか。ではこちらなどは、いかがでしょうか?」
「そうね~」
 それから俺はアリッサさんの着せ替え人形になった。

 結局、いつ呼ばれても良いようにと中古品はネイビーグレーのスーツを。
 そしてオーダーメイドは濃紺のスーツで、出来るまでに1週間かかるそうだ。
 
 俺達は店を出た。
 来た時と同じようにしましょうね、とアリッサさんに言われ、手を繋いで歩いた。
 これはあれか。
 俺が不慣れだから、迷子にならないようにか?

 そして広場の前を通りかかると、大道芸人がいた。
 ピエロやジャグリングを見せ、集まった人達を楽しませている。

 そう言えばこの世界は娯楽がない。
 TVもPCもないから夜もつまらない。
 動画配信で音楽でも聴ければいいけど。
 暗くなると明かりを点けるのに、油代がかかるから早く寝る。
 だから早起きなんだけど。

 お酒を飲む男なら酒場か、女の人が居るお店に行くのもありだけど。
 みんな空いている時間は何をしてるんだろう?

 疑問に思ったのでアリッサさんに聞いてみた。
「アリッサさん」
「はい、なんでしょう?」
「夜とかお休みの日は何をしてますか?」
「えっ、夜とか休みの日ですか?」
 なぜ疑問形を疑問形で答える?
 聞いてはいけないことだったのか?

「そ、そうね。夜はご飯を食べてから、お酒を少し飲むくらいかな。休みの日は買い物です」
「そうだよね。どこに行くにも街の中だけだし。芝居小屋とかあるのかな」
「あるわよ。芝居に興味があるのエリアス君は」
「いや~そう言う訳ではないけど、空いた時間は何をしているのかと思って」

(えっ、そんなに私のことが気になるのかしら?)
「そんなに気になるの?」
「うん、とっても気になる」
(いやっ、エリアス君てもしかしたら、独占欲が強い子なのかしら。会えない時の私がどうしているのか、気になるのね)


「ねえエリアス君」
「なんでしょう」
「これって初デートだよね?」
「えっ」
「でも今度はちゃんとしたデートがしたいな。エヘッ」
「うん、そうですね」
 恥ずかしそうにうつむく、アリッサさんの可愛らしさに見とれた。

 俺達は冒険者ギルドに戻ってきた。
 俺は途中で帰っても良かったが、最後まで送らないといけないような気がして。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

最強の回復魔法で、レベルアップ無双! 異常な速度でレベルアップで自由に冒険者をして、勇者よりも強くなります

おーちゃん
ファンタジー
俺は勇者パーティーに加入していて、勇者サリオス、大魔導士ジェンティル、剣士ムジカの3人パーティーの雑用係。雑用係で頑張る毎日であったものの、ある日勇者サリオスから殺されそうになる。俺を殺すのかよ!! もう役に立たないので、追放する気だったらしい。ダンジョンで殺される時に運良く命は助かる。ヒール魔法だけで冒険者として成り上がっていく。勇者サリオスに命を狙われつつも、生き延びていき、やがて俺のレベルは異常な速度で上がり、成長する。猫人、エルフ、ドワーフ族の女の子たちを仲間にしていきます。

完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-

ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。 第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。 スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。 迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。 空間を切り取り収納できる『空間魔法』。 思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。 少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか? 『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載中です。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

処理中です...