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第5部 終息

第30話 ヘルガさん(小ネタ)

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 冒険者ギルドに着いた俺はドアを開け中に入った。
 昼のこの時間は空いていて好きだな。

 受付を見るとアリッサさんは、冒険者の相手をしていた。
 顔見せに来たので、終わるまで依頼書でも見ようかな。
 そう思い掲示板のところに行こうとした時だ。

「やめて下さい!」
「このアマッ」
 大きな声がした方を見ると、15~6歳の受付の女の子が腕を掴まれている。
 新人だろうか?
 見るとスキンヘッドのイカツイ冒険者に絡まれていた。

「数字がほしいんだろ?なら俺と一回付き合えよ。」
「痛い!放してください。ここはそういう所ではありません」
「このDランクのガスパール様が稼いでやるよ」
 あ、いるんだ。こういう奴。

 冒険者にはそれぞれ、受付に担当がいる。
 ギルドも売上が無いと成り立たない。
 冒険者のサポートをすることで、受付にも報酬が出る仕組みだ。

 そして見渡すと誰も反応しない。
 アリッサさんやコルネールさんも。
 数人いる他の冒険者の人も見向きもしない。
 なぜだ?

「きゃ~~!!」
 俺は仕方なく、近寄って声を掛けた。
「やめてください。嫌がっているじゃないですか?」
「なんだと、小僧!誰に向かって口を利いてると思ってんだ」

「確かに俺は歳より若く見えますが17歳です。小僧ではないと思います
「「「 17歳!! 」」」
 ギルドにいた他の人達が俺の言葉に反応した。
 このことには反応するんだ?

(まあエリアス君。元気になったのね、良かった)
 1人アリッサは微笑んだ。

「オ、オジサンだとお~!俺はこう見えても23歳だ」
「ではいい年をした大人が、なぜこんな分別もないことをするのでしょうか?」
「この女も売上が無いと困るだろう。だから交換条件を出して何が悪い」
「それに手を放してあげてください。痛がってるじゃないですか」

「なっ、お前に俺の何がわかるんだ?この女が薦める依頼は報酬は良いが危険な物ばかり。それでも俺はこの女のために、頑張って依頼をこなしてきたのに。それなのにこの女ときたら一度も…」

 あ~、これはあれだ。
 女の子の見返りを求めて仕事を受けていた、てことだ。
 自分にもその分、報酬は入るはずなのに。
 受付の人の報酬は、自分が稼いでいるんだから付き合えよ、てことなんだ。
 しかもロリコンかよ。
 これは立ち入らない方が良かったな。

 女が悪いのか?
 それとも男が悪いのか?
 そんな手法に騙された男が悪いのか~、それとも騙した女か悪いのか~。
 あぁ、あの時、君に出会わなければ~。
 こんな思いはしなかったのに~。
 この思いも麻疹はしかのように一時のやまい~。
 すぐに治るさ、と自分を慰める~。
 なんか、演歌の歌詞ができそうだ。
 歌詞を作るなら、舞台はやっぱり港町みなとまちかな?

「おい、坊主。なにが港町だ?アレンの街に海はねえぞ」

 あっ、まずい。
 また口に出ていたのか。
 気を付けないと。

「だから、何に気をつけるんだよ」

「ガスパールさん、もうそれくらいにしたら。みんなも呆れてるわ」
「いや、でもアリッサさん。この坊主が」
「坊主ではありません。Miracle manミラクル マン(奇跡の人)の1人、エリアス君よ」
「お、お前があのレッドキャップを倒したエリアスか!」
「いいえ、一人ではなく、みなさんと倒したんですよ」
「そ、そうか、すまねえ。あの時、他の依頼で街を離れていたが、戻ってきたらスタンピードがあったと聞いて。残ったみんなが頑張ってくれたおかげで、帰る場所が無くならなくてよかった。感謝するぜ」
「あ、いいえ。自分にできることを、やったまでですから」
「ガスパールさん。私からもヘルガによく言っておくから、今日のところは、ね?」

(あの受付の人、ヘルガさんて言うのか)
「わかったよアリッサさん。じゃあ、またなエリアス。何かあったら言ってくれ」
 そう言ってガスパールさんはギルドを出ていった。

 みんな関わり合わないわけだ。
 俺も知っていたら関わらなかった。

 ちょうど、アリッサさんも手が空いたようだ。
 挨拶をしておこう。
 そう思いアリッサさんのところに、移動しようと思ったときに声を掛けられた。
「あなたがエリアス君」
「はい、そうですが」
 俺はヘルガさんの前にいることをすっかり忘れていた。

 ヘルガさんは髪は青みがかった黒色。
 ミディアムでストレートだ。

「ねえ、私のものにならない?」
「へ?なりません」
「は、早いわね。即答なの!」
「ええ、俺は物ではないし。アリッサさんに今日は用事があったので」
「アリッサさんが担当なの?私にチェンジしない?」
 ここは飲み屋か?
 アリッサさんの目の前で言う?

「俺はアリッサさんがいいので」
「アリッサさんのどこがいいの?見た目、若そうだけど中身はおばさんよ」
「なんですって、ヘルガ。もう一度言ってごらんなさいよ」
 アリッサさんも受付越しに言ってくる。
 まあ確かにアリッサさんは250歳の森妖精エルフだからね…。
 15~6歳の女の子から見たらね。
 ヘルガさん、なんで知ってるんだろう?
 それに新入社員なのかな?
 その割にはれてるようだけど?

「誰が、ですって?」
 あっ、ここにもオルガさんと同じように、相手の思考が読める超能力者が!

「思考が読めるて、あなたが喋…「「エリアス君、具合はもう大丈夫なの?」」
「ええ、アリッサさん。大丈夫です。ご心配をお掛け致しました」
 ヘルガさんが話している途中で、アリッサさんがさえぎった。

「ヘルガ。私とエリアス君は仲の良いお友達なの、ジャムをもらえるほどね」

「「「「 えっ!ジャムですって 」」」」

「そうよ。この前、ブルーベリージャムをもらったわ。それにイチジク山盛もね」

「「「「 ブルーベリージャムにイチジク山盛りですって!! 」」」」

「しかも、『森の果物は季節ごとに違うから、その都度たくさん採ってきますね』とも言ってくれたわ」

「「「「季節ごとにたくさん、果物をくれるですって!!」」」」

「そうよ、だからあなたの入る余地はないの。わかった?」
「ジャム、果物、最高の愛の言葉…あわわ、あわわ、あわわ」
 ヘルガさんは両手をわなわなし、白目を向き泡を吹きそうになってた。
 大丈夫か?

「エリアス君。実はギルド長が呼んでいるの。お時間いいかしら」
「はい、大丈夫です」
「良かった。では私と一緒に2階に来てくれるかしら」
「分かりました」

 俺はアリッサさんと一緒に2階に上がり、ドアを叩いた。
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