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第3部 仲間

第20話 俺

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 ライオンラビットを狩り帰る途中、気づいたことがあった。

「ステータスオープン!」
 名前:エリアス・ドラード・セルベルト
 種族:人族
 年齢:17歳(58歳)
 性別:男
 職業:防御魔法士
 レベル:7
 HP 80
 MP 130
 筋力  31
 攻撃力 30
 防御力 58
 知力  67
 器用さ 31
 素早さ 53
 運   61
 EXP  45/100

 状態:良好

【スキル】
 生活魔法
 火:LV1
 水:…
 氷:…
 風:LV1
 光:…
 世界の予備知識:LV1

【ユニークスキル】
 異世界言語
 鑑定
 時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV2

【メンタルスキル】
 沈着冷静:LV1
 高速思考:LV1
 魅力(人の心を引きつけ夢中にさせる力。発動しないこともある):LV2

【加護】
 女神ゼクシーの加護
 愛し子

 あぁ、やっぱり。
 ストレージがLV2に上がり嬉しいが、魅力もLV2になってる。
 魔物や魔獣が時々、俺を見つめて動かなくなる事があるのは『魅力』のおかげか。
 
 では『紅の乙女』のメンバーや冒険者ギルドのアリッサさんが俺に優しいのは…。
 なんだ、そうか。
 そうだよな。
 なんか、悲しくなってきた。
 異世界に来てモテモテなんて、おかしいと思ったんだよ。

 俺は酷く惨めな気持ちになり、いつの間にか下を向いて歩いてた。
 今日は活躍したルイディナさんと、腕を組んで歩いて帰っている。

「どうしたのかな、エリアスは?元気がないぞ」
 急に元気がなくなった俺に気づいたのか、お姉さん口調で声をかけてきた。

 俺は立ち止まり、下を向き黙っていた。
 俺の顔を覗き込むルイディナさん。

 ポトッ、ポトッ、ポトッ、ポトッ

 立ち止まった、俺の足元だけ雨が降ってきた。
 「エリアス?」
 心配そうなルイディナさんの声。
 これも偽りなのか。
 俺の異変に気付いたオルガさんやパメラさんも声をかけてくる。

「エリアス君、どうしたの?具合が悪いの?」
「エリアスっち、何があったの?」
 これも偽りか。
 心配そうに顔を覗き込み、優しい声をかけてくれる2人も偽りなのか。

 俺は悲しくて、悲しくて泣いた。
 大粒の雨が降る。

 突然泣き出した俺に3人は驚いただろう。
 オルガさんはオロオロし、パメラさんは俺の名前を呼んだ。
 そしてルイディナさんは何も言わず、俺を抱きしめてくれてた。

 しばらく泣いた後、俺は恥ずかしくて顔を上げる事ができなかった。
 そして3人は何も言わず、ほほ笑んでくれた。
 それだけで良い。
 たとえ偽りでも一人よりは、みんなに優しくされる方がまだ良い。


 俺たちは冒険者ギルドに帰ってきた。
 今回の受付はアリッサさんにした。

「ただいま、アリッサさん。ライオンラビットの買取をお願いします」
「えっ!ライオンラビットですって!」
 ギルドにアリッサさんの声が響き、その場にいた冒険者みんなが振り向く。
 隣に居る『紅の乙女』担当のコルネールさんが悔しそうな顔をする。
「はい、13匹狩れました」
「凄いわ、エリアス君。新記録よ。いったいどうやって?」
「4人のチームワークで狩ったんです」
 そう俺はごまかした。
「では解体場にいきましょう」
 俺たちは解体場に行き、アンセルさんにライオンラビット13匹を渡した。
 アンセルさんもとても驚き、程度が良いから良い値段で引き取れると言ってた。

 査定が終わるまで、飲食コーナーで俺は1人待っていた。



 私は冒険者ギルドの受付、アリッサ。
 エリアス君が今日も無事に帰ってきたけど、元気がないみたい。
 何かあったのかしら?
 私は『紅の乙女』のメンバーに声をかけてみた。

「ねえ、ちょっといいかしら?」
「なにかしら、アリッサさん」
「3人に聞きたいことがあるの。エリアス君はどうしたの?様子が変だわ」
「それが分からないのよ」
「森に入る時まで、元気だったのに」
「ライオンラビットを狩って、帰り道から様子が変なの」
「13匹も狩れれば大喜びのはずなのに」
「なにかとても悲しい顔をして」
「突然、泣き出すから私達も驚いちゃって」

「泣き出した!?」

「えぇ、そうなの。それからずっとあんな感じ」
「おっぱい押し付けても、反応ないし」

 えぇ~、 おっぱいを押し付けた?
 なに言ってるの?

 さらに私は聞いた。
「そういえばエリアス君のご家族の話とか聞いていないの?」
 オルガさんていう人がそれに答えた。
「出会った時に聞いたけど、小さい村で育って両親が他界したのを機に、村の人から土地を狙われ追い出されたって」

 そんな、なんて可哀想なの。
 小さい村ならありえそうな話だわ。
 開墾できる面積は限られてるもの。
 でも私に何が出来るのかしら?
 彼の心を癒してあげる何かが、できるのかしら。



 待っている間、俺は考えたことがある。
 『魅力』で状態異常になっているなら、鑑定スキルで分かるはずだ。

【スキル・状態鑑定】発動
 名前:オルガ 
 状態:良好

【スキル・状態鑑定】発動
 名前:ルイディナ
 状態:良好

【スキル・状態鑑定】発動
 名前:パメラ
 状態:良好

【スキル・状態鑑定】発動
 名前:アリッサ
 状態:良好

 !!状態異常になってない。
 と、言う事は俺の思い違い。
 そうだよな。
 転移の時に俺が望んだのは、『人から好かれるようにしてほしい』だ。
 だから『魅力』でじゃないんだ。
 良かった。良かった、本当に。

「エリアス君、買取り額が出たわよ」
 アリッサさんが呼んでいる、行かないと。
 俺は受付に向かい歩き出した。

  *    *    *    *    *
 
 私はこの世界『エニワン』を管理する女神ゼクシー。
 この前の合コンで私は数合わせで、誰も相手をしてくれなかったわ。
 やっぱり男は女神になってから数万年の私より、数千年の若い子が良いのね。
 でも男は酸いも甘いも知った方が良い女だって、分からないのかしら。

 そう言えば彼はどうしてるかな?
 エリアスだっけ。
 おっ!
 意外にまともね。
 転移と共に心もリセットされ、精神も17歳に引っ張られ純真無垢になってるわ。
 これは当たりかも?

 あぁ、『魅力』に悩んでいるのね。
 右も左も分からない世界に転移するんだもの、1人では寂しいよね。
 だから身近な人ができやすいように、それくらいあってもいいかな?て思って授けたけど。
 まあ、結局、『魅力』は人の心を引き付けて夢中にさせる力で、『魅了』は人の心を引き付けて、 とりこにする力だからね。
 今は『魅了』のライト版て、ところかな。
 いずれは完全な『魅了』にバージョンUPするかもしれないけど。

 まっ、彼が死ぬまで『魅力』は続くから、それが本当だと思ってればいいわ。

 あ~、やっぱりビールには唐揚げが一番合うわ!
 ゲフッ。

 女神ゼクシーにとって佐藤 慎吾の転移は、些細な事でしかなかった。

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