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第3章 開花

第40話 雨

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 しと、しと、しと、しと、しと、
 しと、しと、しと、しと、しと、
  しと、しと、しと、しと、しと、
 
 雨は中々、止みそうにない。
 夕方になり辺りは暗くなってきた。
 今夜はここで泊りね。

「さあ、お風呂に入って体を温めてください。そのままでは風邪を引きますよ」
「いえ、ですがお風呂なんて入ったことがありません」
「大丈夫です。教えますから」
「あ、ありがとうございます」
「今日は雨も止みそうもないし、もう遅いから泊まって行って下さい」
「いえ、でもそこまで甘えるわけには…」
「まあ、そういわずに。お子さんが風邪を引いてしまいますよ」
「ではお言葉に甘えて泊まらせて頂きます。申し遅れました私はエルミナ、この子は娘のヨランデです。さあ、挨拶をしなさい」

「こんにちは」
 ヨランデちゃんははずがしがり、おかあさんに抱き着いた。
「まあ、この子ったら。もう10歳だというのにまだまだ子供で」
「仕方ありませんよ。私の名はレナです、よろしくお願いいたしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますレナさん」
「ではお風呂に入りましょうか。タオルと石鹸は、と」
 エルミナさんたちの服は濡れているので、私の予備の服を着てもらうことにした。
 子供用の服はないのでヨランデちゃんには大きいけど我慢してね。

「はいどうぞ」
 突然、何もないところからタオルがでてきたので、エルミナさんたちは驚いている。
「これを使ってくださいね」
「は、はい。ありがとうございます」

 そして風呂場に入り使い方を説明する。
 まあ、たいした説明じゃあないけど。
 よお~く温まってね。


「いいお湯加減でした。こんなにさっぱりするなんて」
「ヨランデちゃんも温たまった?」
「うん、体がホクホクしてるよ」
「それにあの石鹸は良い匂いがしますね。はじめて使わせて頂きました」
「喜んでいただけでよかった」
「では髪を乾かしましょうか」
「え?乾かすのですか」
「じゃあ、最初はヨランデちゃんからね。こちらにきて」
 そういうと私は鏡台の椅子に座わらせた。

「じゃあ、いくね」
 ゴォ~~!!
「あ、暖かい!!」
「これであっという間に乾くからね」
 私は空気を収納し、ストレージ内の火で温めて噴射した。
「はい、出来上がり。今度はエルミナさんね」
「あ、ありがとうございます」
 この世界の人は髪が長い女性が多い。
 きっと理容費がかかるからかな。
 だから髪の毛が長いエルミナさんの方が、時間がかかるから後にしたの。

 なんだかこうしていると家族のような気になる。
 久しぶりにほのぼのとした気持ちになった。

 その晩は部屋が一部屋しかなくなったので、エルミナさんたちには居間で布団を敷いて寝てもらった。
 おやすみなさい、また明日…。

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 物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となる場合もあります。
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