上 下
24 / 52
第2章 始動開始

第24話 契約

しおりを挟む
 私は馬車二台をストレージ内で、板バネを加工して取り出した。

「レナさんいったい、なにをしたのかね?」
「車輪のところを見てください。馬車の乗り心地が良くなるように、板バネを付けたのです」
「板バネだと?!」
「はい。板を層状に積み重ねて造り、路面からの衝撃を吸収する物です」
「そんなことで軽減するのか?しかも収納魔法はそんなことが出来ると言うのか?」
「私は木工加工が得意でして…、あはははは!!」
 と、訳の分からないことを言いながら私は笑う。


「乗ってみればわかります。さあ、どうぞ」
「あぁ、物は試しと言うからね。では乗ってみようか」
 公爵はそう言うと馬車に乗り込む。

 パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、
  パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、
   パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、
  パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、
 パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、パカ、

 馬車は順調に走り出す。
「これは凄い!!こんなに乗り心地が良いとは思わなかった」
「そうですね、おじい様。これならお尻は割れませんね」
「こら、ヘーゼル。そんなこと言うものではない」
 公爵がヘーゼル公女をたしなめる。
 それは孫が本当にかわいくて仕方がないと言う顔をしている。

「レナさん、これを売りだすことは考えていないのかね」
「売り出すですか?私は馬車販売をする気は無いのでありません」
「そうではない。では構造と権利を売ってくれないか。貴族はなになしらの事業をやっていてね。丁度、木工加工をやっているのさ」
「えぇ、いいですよ。私には宝の持ち腐れですから」
「では街の宿屋に着いたらさっそく、契約を交わそう」
 そう言うとマドック公爵は嬉しそうに笑った。

 予定では夕方に隣街ラルフに着き、宿屋に泊まる。
 明日はその領の領主グレタ公爵の晩餐会。
 そして明後日の朝、タラスの街へ戻る予定だそうだ。
 なんだかせわしないわね。

 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 ★板バネ
 クルト王国 西暦✖✖✖✖年

 その年、マドック公爵家が『板バネ』という馬車用のバネの特許を所得。
 馬車製作部門に参入する。

 馬車の乗り心地の悪さを改善する、『板バネ』を馬車に装備し販売を始める。

 舗装整備もされていないその時代では、馬車は乗り心地が悪いものだった。
 しかし、歩きでは体裁が悪い富裕層は、そう言う物だろうと我慢していた。
 それを一掃したのが『板バネ』を装備した馬車だ。
 乗り心地はとてもよく、その快適さに人々は魅了された。

 その快適さはやがて諸外国にも広がり、今のいしずえを築いた。
 各地に馬車工場を築き、雇用促進に励みたくさんの人々の暮らしに貢献した。
 これが産業革命の一端になったと言っても過言ではない。

 今でも『板バネ』博物館に行くと、第一号の馬車が展示してある。
 ただ一号機だからなのか、二号機以降の馬車と『板バネ』の構造が違う。
 しかも製造されてから数百年経つ今でも、変りないく輝いているという。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...