上 下
16 / 35
第1章 始まりの物語

第16話 マルタ村

しおりを挟む
「見えて来たわ!!あれがマルタ村よ」
 遠くに見える村をアンジェラが指を指す。
「さあ、あと少し頑張ろう、と」

 見えてきたのは20~30世帯の家が建つ農村だった。
 村の周りには魔獣防止なのか木の柵で覆われている。
 レオは目立つからポーチに入れて、と。

 門の前には男が1人が立っている。
「止まれ!この村になんのようだ?」
「私です、ライアンさん。雑賀屋の娘、アンジェラです」
「アンジェラ?なんだアンジェラか。一緒に村を出たドリク達はどうしたんだ?」
 私は黙り首を横の振った。

 この国では命は軽い。
 明日はどうなるかわからないのが普通だった。

「そうか、まっ、お帰り。さあ、中にお入り」
 そう言うとライアンさんは門を開けてくれた。

 私は村の中を歩いて我が家の向う。
「まあ、アンジェラちゃん。お帰りなさい」
「おお、戻って来たのか」
 道行く人が声を掛けてくれる。

 そして小さい店が見えて来た。
 ここが私の実家だ。
「ただいま!!」
 そう言ってドアを開ける。

「まあ、アンジェラどうしたの?お父さんアンジェラよ」
 奥から父が出てくる。
「なんだと。おぉ、アンジェラ4年ぶりか。大人になったな」
「それで今日は里帰りかい?」
「いいえ、おかあさん。そうではないわ。ここに戻って来たの」
「戻って来たと言っても、ここでは生活が成り立たないわよ」
「大丈夫、お金はあるわ」

 私はそう言うとこの村を出てからのことを話した。
 街に出て冒険者となり一緒に村を出たドリク、ウィリアム、クラレンスとパーティを組んだこと。
 ブラッディベアに襲われ、私を守るために相打ちになったことなど…。

「それは辛かったね、よく頑張ったよ」
「ドリク達の家族にも冒険者ギルドでもらった報奨金や、素材を売ったお金を分けて回らないと」
「それは少し休んでからにしたら」


「こんにちは!」
 ドアが開くとそこにはウィリアムの両親がやって来た。
「アンジェラちゃんが戻って来たと聞いたからさ。ウィリアム達はどうしたんだい?」
「それが…実は…」
「こんにちは!!あれあんた達もきてたのかい」
 ドリク、クラレンスの親達もやって来た。

 そして街へ出てからのこと。
 森で仲間に起こったことを話しだす。
「そうかい、そうかい。ドリクは立派にアンジェラちゃんを守ったんだね」
「うちのクラレンスも立派になったものだ」
「ウィリアムはどんな男に育ったのかい?」
 村をでてからの四年間のことをたくさん聞かれた。
 まるで空白の期間を取り戻すかのように…。

 報奨金のお金を各家に渡した。
 その金額の多さにみんな驚いていた。
 


 その晩は私の店でお酒を村人に振舞った。
 ささやかだけどみんなで食べ物も用意し献杯けんぱいをした。
 使者と語らう様に、思い出を語り合った。


 その頃レオは…。
 いつまで俺はポーチに、入っていればいいのかな?
 うっ、トイレに行きたい!!
 もぐすもれる!!

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

献杯けんぱい
 亡くなった人を偲んで飲むこと。

 いつも応援頂いてありがとうございます。
 物語はまったり、のんびりと進み更新は不定期となる場合もあります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーし俺を閉じ込め高見の見物をしている奴を殴り飛ばす~

うみ
ファンタジー
 港で荷物の上げ下ろしをしたり冒険者稼業をして暮らしていたウィレムは、女冒険者の前でいい顔をできなかった仲間の男に嫉妬され突き飛ばされる。  落とし穴に落ちたかと思ったら、彼は見たことのない小屋に転移していた。  そこはとんでもない場所で、強力なモンスターがひしめく魔窟の真っただ中だったのだ。 幸い修行をする時間があったウィレムはそこで出会った火の玉と共に厳しい修行をする。  その結果たった一つの動作をコピーするだけだった外れスキル「トレース」が、とんでもないスキルに変貌したのだった。  どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまう。  彼はあれもこれもコピーし、迫りくるモンスターを全て打ち倒していく。  自分をここに送った首謀者を殴り飛ばすと心の中に秘めながら。    脱出して街に戻り、待っている妹と郊外に一軒家を買う。  ささやかな夢を目標にウィレムは進む。   ※以前書いた作品のスキル設定を使った作品となります。内容は全くの別物となっております。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...