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第1章 始まりの物語

第7話 冒険者ギルド

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 アンジェラが解体を終えるのを待ち、俺達は街に向い歩き出した。

 彼女はブラッディベアの牙、爪、魔石を袋に入れ肩から下げ歩く。
 そして仲間の遺品。
 毛皮と肉は重くて剥ぎ取りや、持ち運びができそうも無いので諦めた。

 アンジェラはこれを機会に田舎に帰り、実家の雑貨屋を手伝いたいそうだ。
 持ち帰る素材だけでも、しばらく食べていけるくらいの金額になるみたい。
『モモンガのあなたに、お金の話をしてもわからないでしょう?』と笑っていた。
 わかりますよ、えぇ。
 働いていましたからね。

 俺達は何とか日が暮れる前に街に入れた。
 そのまま報告を兼ねてアンジェラは、冒険者ギルドに寄ると言う。

 俺はアンジェラの肩に乗り夕暮れ時の道行く人々を見渡す。
 買い物帰りの主婦、子供の手を引きながら歩く母親。
 どこの世界も風景は同じなんだな、と思ってしまう。
 まあ、建物はきらびやかではないけどね。

 しばらく歩くと他の建物に比べると、一回り大きい二階建ての建物が見えて来た。
「さあ、ここよ」
 アンジェラは俺に話しかける。

 スイングドアを開けそのまま中に入る。

 ここが冒険者ギルドか…。
 うっ、汗臭い…。
 雑巾の匂いだ。

 冒険者が戻ってくる時間だったのか、とても騒がしくたくさんの人がいた。

 わい、わい、がや、がや
  がや、がや、わい、わい、

 そんな中をアンジェラは受付に向い、荷物を下げ歩いて行く。

「おい、アンジェラ!!ドリク達は今日は一緒じゃないのかい?」
 知り合いだろうか?
 男が声を掛けて来る。

「ドリク達三人は私を庇って死んだわ」
「死んだだと?!」
「えぇ、東の森に入ったら…、ブラッディベアに襲われて…」

「「「 なに~?!ブラッディベアだと!! 」」」

 ギルド内に大きな声が響く。

「ブラッディベアだと」
「あのB級の魔物か!!」

「ブラッディベア…」「ブラッディベアだと…」
 「ブラッディベア…」「ブラッディベア…」
  「ブラッディベアか…」「ブラッディベア…」
 「ブラッディベア…」「ブラッディベアなんて…」
 「ブラッディベアが居るなんて…絶望的だ」

 その言葉が波紋の様にギルド内に広がって行く…。

「静かに、みんな静かにして!!」

 見ると凛とした感じの20代半ばと思われる受付の女性が一喝する。
「だってジェニーさん。ブラッディベアですぜ」
 ジェニーと言うのかこの人は。

「そこのあなた、詳しい話を聞かせて頂戴」
「はい、私達が森に入ると…私の仲間が…」

 事前に打ち合わせした通りアンジェラは淡々と話し出す。
 森でブラッディベアと遭遇したこと。
 仲間のドリク、ウィリアム、クラレンスの三人は勇敢に戦い、相打ちになったと…。

 そうでも言わなければ怪しまれる。
 ムササビが上位の魔物を倒したなんて誰も信じてくれないだろう。

「あなた達四人はEランクの駆け出しのはずでしょう。それを三人で倒したなんて」
「これが証拠です」

 そう言うとアンジェラは、受付のカウンターにブラッディベアの素材を置いた。

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