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第1章 転生

第2話 目覚め

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「サミュエル、しっかりして!!ねえ、目を開けてよ!!」 

「やばい、逃げろ~」
 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、

 誰かが遠ざかって行く音がする。

 俺は目を開ける。
 そこには銀色の長い髪を下ろした、姉のアメリアの顔が見える。
 俺より2つ年上の姉は、俺のことをなにかと心配してれる。
 優しい姉だ。
 
「大丈夫です、アメリアねえさま」
 そう言って俺は立ち上がる。
 どうやら倒れていたようだ。

 公爵家の跡取り息子エリック12歳とその取り巻き達に、柿を木から採ってほしいと頼まれ、登っている途中で足を滑らせ落ちたようだ。

 よく考えればわかることだ。
 だが12歳の子供の頭ではそう思わなかった。
 しかし公爵家の跡取り息子の頼みでは断れない、それだけはわかっていた。
 

 その時に頭を打ったのか、思い出したことがある。
 俺は転生者だ…。
「サミュエル、サミュエル!!誰か人を呼んできて~!!」 

 そこで俺は再び気を失った。



 それから俺は屋敷に運ばれ3日間寝込んだ。
 生前の記憶がフラッシュバックのように蘇った。

 俺が倒れたのは名門ロレーント学院。
 貴族や富裕層の子供は幼少のころは屋敷に家庭教師を招き学び、12歳でこの学院に入学する。
 そして3年間ここで学びさらに優秀な者は、上の魔法学院や騎士学院へ進む。
 ある意味ここで結果を出せば、将来は約束されたようなものだ。
 だがそれに興味の無いものが居る。
 それは親がすでに上位の貴族の場合だ。
 公爵家の跡取り息子エリックのように。


 俺の名はサミュエル ・フロリオ。
 ここ王都ではそこそこ知れた商家の一人息子10歳だ。
 姉はアメリア12歳。
 父はレイモンド、30歳。
 母はナディア25歳。
 4人家族で父と母は従妹いとこ同士で恋愛結婚だ。
 だからなのか富裕層によくあるような第二夫人や愛人が居ない。
 そのため跡取りである俺を大事にしてくれている。

 しかし俺は幼少の頃から体が弱く、寝込みがちだった。 
 屋敷で家庭教師を付けてもらい勉強をしている。
 学院はここ王都にあり姉は屋敷から学院に通っている。
 王都以外から通う貴族は全寮制で、3年間は夏季休みなど以外は自領には帰れないが地元に住んでいるので姉は通いで勉強している。
 そんな姉を時々俺は馬車に乗り、姉を迎えに行くことがある。
 家の中に居ても飽きるしね。

 そんな時に待っていると、公爵家の跡取り息子に声を掛けられたと言う事だ。
 いくら俺が外に出ないと言っても12歳になれば、子供達のお披露目会がどの屋敷でも行われる。
 著名人達を呼び子供達の将来の嫁や夫を捜すためだ。
 まあ、それを捜しているのは子供側ではなく、伝手が欲しい親側なのだが。
 そんな俺も10歳になってからは、社交界の雰囲気に慣れるためにも、なにかあればお披露目会には顔を出している。
 すぐに帰るけどね。
 だから同じ王都に住んでいれば、知らないはずがない。

 爵位は五つあり順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となる。
 公爵家は会社で言えば王家の分家となり王族の親戚だ。
 そのため、誰も逆らえない。

 しかし貴族の内情は赤字の家が多く、商家から借金押している場合が多い。
 足りない分は自分達で用立てなくてはならない。

 権威や屋敷、使用人や祭事の付き合いや、もろもろの出費を補うには金が掛かる。
 そのため、我が家の商会でも貴族に金を貸し付けているようだ。
  対面事情では貴族は偉く、影では商人に頭があがらない。
 
 ある意味、貴族なのに世知辛せちがらいぞ。
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