229 / 254
第19章 召喚されしもの
第228話 召喚再び
しおりを挟む
その夜、世界で初めて女神ゼクシーの神託が降りた。
〈〈〈〈〈 神託を授ける!!召喚されしエリアスは勇者である。この世界を魔物の脅威から解き放つのは、勇者ではなく聖女である。再び魔力を溜め聖女召喚の儀式を行うがよい!! 〉〉〉〉〉
翌朝、シャルエル教のロターリ司祭は、大慌てで登城し神託を国王に告げた。
前回はビッチェ王女の独断による勇者召喚だったが、今回は女神ゼクシーによる神託を受け聖女召喚を行うのだ。
国も動かない訳には行かなかった…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ジリヤ国西暦899年5月15日
私はビッチェ・ディ・サバイア。
やっ、やったわ。
ついに待ちに待った、この日が来たのよ。
あれから3年が経った。
やっと異世界から聖女を召喚できるほどの魔力を、儀式用の魔石に貯えることが出来た。
でも、もし聖女召喚に失敗したら次はもうない…。
なぜなら王宮の派閥連中が聖女召喚に、異を唱えるようになったからだ。
聖女召喚をするために、シャルエル教に支払う金額が馬鹿にならない。
そして私は私財を投げ打ち冒険者ギルドを設立した。
冒険者ギルドの件はエリアス様が発案で、国王から2人で取り組む様に言われたけど…。
まさか私がお金を出すなんて…。
国王は冒険者ギルド必要性を認めてくれたけど、家臣団から反対の意見が多く出たようだわ。
後ろ盾のない女の私が言う新しい意見など誰も賛同してくれない。
登録者第一号はエリアス様で彼は魔物が出現すれば、どこにでも冒険者として出かけて行った。
そして私もリンリン、ランランと共に登録をした。
エリアス様は討伐した魔物の素材を売却し、そのお金をギルドの運営資金に回してくれている。
召喚した勇者を冒険者ギルド運営のために働かすなんて間違っているわ…。
でも働きたくても働くところが無く、仕事に就けない人達からはとても喜ばれた。
魔物討伐は命がけだけど、それ以外にも薬草採取などでも僅かだけど収入を得ることが出来たから。
それからお箸産業の会社も同時に立ち上げた。
森林伐採で出た鉄木を使い会社を興した。
今まで汁物はスプーンで、それ以外の肉類は手で食べる地域が多かった。
はさむ食材が多い料理には箸を使うことで産業を興し、その売上も冒険者ギルドの運営に回した。
でもしばらくすると事態が変わった。
勇者召喚をした時は魔物討伐だけでも感謝されたのに…。
聖女召喚の神託が降り人々の中に欲が起き始めた。
魔物討伐だけではなく、魔物そのものが居なくなればと…。
私達親子をよく思わない派閥は、実は召喚自体に失敗しており女神ゼクシーが見かねて神託を卸してくれたと噂する者も出てきている。
そして聖女ではなく勇者を召喚してしまった私は、隣国中の笑いものになり王宮内での立場が更に悪くなってしまった。
まさか勇者と聖女がいるなんて、文献には書いていなかった。
だから失敗しても次の予算はもうもらえない。
教団はダラダラと魔力を貯え、作業に時間を掛け金品を巻き上げようとする。
エリアス様が暇を見ては魔力を召喚用の魔石に貯えてくださらなければ、もっと時間が掛かっていただろう。
それに私は18歳になった。
大人びてきた私にはもう、ロターリ司祭は興味が無いようだった。
もう潮時なのだろう。
オバダリア侯爵も鑑定を見誤った当初は私にすり寄って来たけど、最近では『借りは返した』と言わんばかりに自国領に戻り引きこもっていた。
結局、誰もこの国のことなど考えていない。
今と同じ暮らしが明日も明後日も続くと思っている人達だ。
私にはシャルエル教やオバダリア侯爵の後ろ盾はもうない。
だから次はない。
でも前回は成功したもの、今回もきっと大丈夫よ。
そう思いたかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
サバイア国王、ガストン宰相や、たくさんの閣僚。
エリアス様やオバダリア侯爵の見守る中、召還の儀式が始まる。
神官が6人とロターリ司祭が魔法陣に魔力を注ぐ。
魔石に貯まった魔力も放出され辺り一面が輝く。
「黒白の羅、二十二の橋梁、六十六の冠帯。混迷の暁、天を挺る空の羅、大いなる力、滲み出す混濁の紋章、ヒトの名を冠す者よ。蒼白なる月よ、闇を照らす牙となれりて、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現せ、召喚!!」
魔法陣が青白く輝く。
薄暗い神殿の中が明るく照らしだされる。
お願い成功して!
もう無理、誰でもいいから助けて。
同じ思いはもう嫌。
その為だったら私は…。
そして目が開けられないほどの眩い光が起きた。
その場に居た者が目を開けると、そこには…。
………………………。
…………………………………。
………………………………………………。
誰も現れなかった…。
気が付くと先ほどまでそこに立っていたはずの、エリアス様も同時に消えていた。
〈〈〈〈〈 神託を授ける!!召喚されしエリアスは勇者である。この世界を魔物の脅威から解き放つのは、勇者ではなく聖女である。再び魔力を溜め聖女召喚の儀式を行うがよい!! 〉〉〉〉〉
翌朝、シャルエル教のロターリ司祭は、大慌てで登城し神託を国王に告げた。
前回はビッチェ王女の独断による勇者召喚だったが、今回は女神ゼクシーによる神託を受け聖女召喚を行うのだ。
国も動かない訳には行かなかった…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ジリヤ国西暦899年5月15日
私はビッチェ・ディ・サバイア。
やっ、やったわ。
ついに待ちに待った、この日が来たのよ。
あれから3年が経った。
やっと異世界から聖女を召喚できるほどの魔力を、儀式用の魔石に貯えることが出来た。
でも、もし聖女召喚に失敗したら次はもうない…。
なぜなら王宮の派閥連中が聖女召喚に、異を唱えるようになったからだ。
聖女召喚をするために、シャルエル教に支払う金額が馬鹿にならない。
そして私は私財を投げ打ち冒険者ギルドを設立した。
冒険者ギルドの件はエリアス様が発案で、国王から2人で取り組む様に言われたけど…。
まさか私がお金を出すなんて…。
国王は冒険者ギルド必要性を認めてくれたけど、家臣団から反対の意見が多く出たようだわ。
後ろ盾のない女の私が言う新しい意見など誰も賛同してくれない。
登録者第一号はエリアス様で彼は魔物が出現すれば、どこにでも冒険者として出かけて行った。
そして私もリンリン、ランランと共に登録をした。
エリアス様は討伐した魔物の素材を売却し、そのお金をギルドの運営資金に回してくれている。
召喚した勇者を冒険者ギルド運営のために働かすなんて間違っているわ…。
でも働きたくても働くところが無く、仕事に就けない人達からはとても喜ばれた。
魔物討伐は命がけだけど、それ以外にも薬草採取などでも僅かだけど収入を得ることが出来たから。
それからお箸産業の会社も同時に立ち上げた。
森林伐採で出た鉄木を使い会社を興した。
今まで汁物はスプーンで、それ以外の肉類は手で食べる地域が多かった。
はさむ食材が多い料理には箸を使うことで産業を興し、その売上も冒険者ギルドの運営に回した。
でもしばらくすると事態が変わった。
勇者召喚をした時は魔物討伐だけでも感謝されたのに…。
聖女召喚の神託が降り人々の中に欲が起き始めた。
魔物討伐だけではなく、魔物そのものが居なくなればと…。
私達親子をよく思わない派閥は、実は召喚自体に失敗しており女神ゼクシーが見かねて神託を卸してくれたと噂する者も出てきている。
そして聖女ではなく勇者を召喚してしまった私は、隣国中の笑いものになり王宮内での立場が更に悪くなってしまった。
まさか勇者と聖女がいるなんて、文献には書いていなかった。
だから失敗しても次の予算はもうもらえない。
教団はダラダラと魔力を貯え、作業に時間を掛け金品を巻き上げようとする。
エリアス様が暇を見ては魔力を召喚用の魔石に貯えてくださらなければ、もっと時間が掛かっていただろう。
それに私は18歳になった。
大人びてきた私にはもう、ロターリ司祭は興味が無いようだった。
もう潮時なのだろう。
オバダリア侯爵も鑑定を見誤った当初は私にすり寄って来たけど、最近では『借りは返した』と言わんばかりに自国領に戻り引きこもっていた。
結局、誰もこの国のことなど考えていない。
今と同じ暮らしが明日も明後日も続くと思っている人達だ。
私にはシャルエル教やオバダリア侯爵の後ろ盾はもうない。
だから次はない。
でも前回は成功したもの、今回もきっと大丈夫よ。
そう思いたかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
サバイア国王、ガストン宰相や、たくさんの閣僚。
エリアス様やオバダリア侯爵の見守る中、召還の儀式が始まる。
神官が6人とロターリ司祭が魔法陣に魔力を注ぐ。
魔石に貯まった魔力も放出され辺り一面が輝く。
「黒白の羅、二十二の橋梁、六十六の冠帯。混迷の暁、天を挺る空の羅、大いなる力、滲み出す混濁の紋章、ヒトの名を冠す者よ。蒼白なる月よ、闇を照らす牙となれりて、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現せ、召喚!!」
魔法陣が青白く輝く。
薄暗い神殿の中が明るく照らしだされる。
お願い成功して!
もう無理、誰でもいいから助けて。
同じ思いはもう嫌。
その為だったら私は…。
そして目が開けられないほどの眩い光が起きた。
その場に居た者が目を開けると、そこには…。
………………………。
…………………………………。
………………………………………………。
誰も現れなかった…。
気が付くと先ほどまでそこに立っていたはずの、エリアス様も同時に消えていた。
11
お気に入りに追加
280
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる