完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

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第17章 城下

第218話 回復魔法の進化

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 翌日、俺とビッチェ王女、リンリン、ランランの4人で城下に出た。
 出る時に身分が分からないから、門番に身分証の代わりになるメダルを見せる。
 メダルには紋章や名前が彫ってあり、出入りの際に提示するようになっている。
 そして門番はその出入りの記録を付けている。
 社員証みたいなものかな。


 リンリン、ランランの案内で城下を歩いているが、驚いたことに道行く人々は痩せており活気がない。
 市場で売っている野菜は、鮮度も悪く数も少ない。

 これほど事態が悪化していたとは…。
 城の中と外ではこんなにも隔たりがあり、それを見たビッチェ王女は愕然としていた。

「まさかここまで酷いとは…。私は思いませんでした」

 ビッチェ王女が深刻な顔で呟く。
「貴族である私は多少、食卓が寂しくなった程度にしか現状を考えていませんでした。魔物が多くなり、城外の畑にも現れるようになり、狩りもできず肉が手に入らない。なにを浮かれていたのでしょう、私は…。早急に瘴気しょうきを消さないとこの国は手遅れになってしまう」


 俺達は城下で楽しく買い物をして、街を見て一日楽しめれば良いと思っていた。
 そんな軽い気持ちで、出て来たけどこれでは本当に視察だ。

 こんなメインの通りがスラム街の様になっているとは…。




 ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、
「どけ、どけ、どけ~!!」
 どこの貴族の馬車なのか。
 御者が大声を出し、路地を物凄い勢いで走ってくる。

「お嬢様、危ないです!!」
 リンリンが声をかける。
 俺達は道の端に馬車を避け、通り過ぎるのを待った。

 道幅は馬車の1.5倍くらいしかない。
 何を急いでいるのだろう?

「ママ!」
 馬車が通り過ぎようとしたその時、5歳くらいの男の子が飛び出した。
 道の向こうに居る、母親のところに行こうとしたらしい。
「危ない!!」

 ドンッ!!

 御者が思わず手綱たづなを引いたが間に合わず、叩きつけられるように子供は跳ね飛んだ。
「きゃ~!サミール!!」
 母親が子供の名前だろうか、叫んでいる。

 馬車が止まり中に乗っている主人の声がした。
「おい、どうした?急ぐんだ!!」
「はい、ご主人様。子供が飛び出して参りまして」
「なに?子供だと?!これでも拾っておけ!」
 そう馬車の中の主人は言うと、窓から500円硬貨を2枚投げ捨てた。

「ほれ、さっさと急げ!!」
「分かりました」
 御者は先度よりはややゆっくりと、再び馬車を走らせ通り過ぎた。


「サミール、サミール!!しっかりして。お母さんよ、わかる?」
 母親が子供を抱き抱えながら、必死に呼びかけてる。

「誰か、誰か助けて!!お願い、お願いします!!」
 見ていた周りの人達は、気の毒そうな顔をしている。
 教会の神官が使う治癒魔法でも、助かるとは思えなかった。


 その時、道に落ちた500円硬貨2枚をビッチェ王女が拾った。
「リンリン」
「はい、お嬢様」
「1,000円で、何が買えるのかしら?」
「えっ?」
「私はお金を自分で持って、買い物をしたことが無いから。お金の価値が分からないのよ」
「そうですか。今なら物価も高騰しておりますので食事一食分かと」
「1,000円が安いのか、それとも食事が高いのか分からないけど。これは駄目ね」


 そう言いながらビッチェ王女は泣きじゃくる母親の側に向かう。 
「お母さん、ちょっとお子さんを見せてもらえないかしら?」
「えっ?!」
 母親は、きょとんとした顔をして私を見た。

「大丈夫よ、私に任せて」
 ビッチェ王女はそう言うと、母親に抱きかかえられている子供に手を翳す。

〈〈〈〈〈 Healingヒーリング 〉〉〉〉〉
 ビッチェ王女の左手が光り輝く!!

「うっ!」
 少年の顔色が少し良くなってきた。

 ビッチェ王女は額に汗をかきながら更に手を翳す。
 でもまだ回復魔法の力が足りないようだ。
 そこで俺は考えた。
 力が足りないなら、それを上回る力を足せばいいと…。

 俺はビッチェ王女の背中に手を当て、魔力を同調させゆっくりと流し込む。

 「エリアス様、な、なにを?!あっ?」

 そう声を出すビッチェ王女が突然、思いついたかのように詠唱する!!

<<< Regenerateリジェネレイト!! >>>

 するとビッチェ王女の体が眩く輝き始め、少年の体を包み始める!!


「「 おぉ~~!!! 」」

 それを見ていた周りの人達が声をあげる!!

 そして光がゆっくりと収まり、少年は穏やかな顔をして寝息を立てていた。



「お母さん、お子さんはもう大丈夫ですよ」
 ビッチェ王女は額の汗を拭きながら母親に声をかける。
「えっ?!本当ですか!!」
「本当です」
「あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
 母親は何度もお礼を繰り返す。

「ですが我が家には治療費をお支払いできるお金がありません」
「いえ、あるわ。これを頂くから」
 ビッチェ王女はそう言って、貴族が投げ捨てた500円硬貨2枚を見せた。


 そこには金髪の髪を風になびかせ、神々しいばかりの笑顔を見せた少女がいた。

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