完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

文字の大きさ
上 下
208 / 254
第16章 今度は召喚(ビッチェ王女編)

第208話 開花

しおりを挟む
「う、う~~ん」
 良い匂いがする。
 どうやら俺は眠ってしまったらしい。
 あれ?なにかを抱きしめているぞ?
 
「はっ!」
 見るとビッチェ王女の顔が、俺の顔の近くにあった。
ふと
「わっ、どうなっているんだ?!」
「実はエリアス様にお話しがありまして…。丁度、お食事の用意ができていたので私が、メイドの代わりにお持ちしたところです。起こそうとしたのですが、ね、寝ぼけられていたようで私を…」
「す、すいません。王女様みずからお持ちいただけるなんて」
 そう話すビッチェ王女は、何か思い詰めたような顔をしていた。

 「さ、さあ、食事に致しましょう」

 そう言われて俺は身を起こしベッドから降りた。
 テーブルに座わり出された食事を食べる。
 うん、美味しい。
 野菜や肉が入ったスープだ。
 香辛料が効いて美味しい。

「お味はいかがでしょうか?」
「香辛料が効いて、とても美味しいです」
「それは良かった。急ごしらえでお作りしたようなので」
「香辛料が効いていますが、簡単に手に入るのでしょうか?」
「はい、州の都市自体で採れるものでしたら…」

 話を聞くと俺が今いるジリヤ国は、300年後と同じように王都中心に東西南北に6つの州を、更に王都寄りの東西に2つの州を配置して外敵に備えているそうだ。
 アスケルの森から魔物が出てくることは無く、開拓する余力もないようだ。

 魔物が徘徊しているのは都市間の森で、今のところ城壁に囲まれた都市を襲うことは無いようだ。
 だが街道にも魔物が現れるようになり、作物を収穫しても各都市に運ぶこともできなくなり食べるものが無くなる。

 それを打破するための勇者召喚なのか。

「すみません。これは贅沢なお食事なのですね」
「いいえ、我が国の都合で召喚してしまい本当に申し訳なく思っております。エリアス様には、できる限りのことをしたいと思っております」
 そう言ってビッチェ王女が頭を下げる。
 いいのか?王族が簡単に頭を下げても。
 そうか、だから俺と2人きりになれるこの部屋を選んだのか。

「エリアス様、失礼だと思わないでください。実はお詫びしなければならないことがございます」
「どんなことでしょうか?」
「はい、実はオバダリア侯爵様にエリアス様のことを、鑑定をして頂いたのです」
「部屋に居た貴族の方でしょうか?」
「はい、そうです。オバダリア侯爵様はこの国でも、珍しい鑑定能力をお持ちの方です」
 鑑定能力?
 だから俺を凝視ぎょうししていたのか。

「そうですか。では、その結果はどうでしたか?」
「はい、その~、とても申し訳にくいのですが『凡人』だと言われました」
 鑑定は相手が自分よりも能力が高い場合、見ることが出来ないはずだ。
 だから何も見えなかったのだろう。

「『凡人』ですか。そうと言えばそうかもしれません。ですが少しはお役に立てるかもそれません」
「本当でしょうか。エリアス様は召喚前は何をされていたのでしょうか?」
「俺ですか?俺は…、そう冒険者をやったり、村を開拓して生活していました」
「冒険者ですか?!冒険者とはなんでしょうか?」
 あぁ、この時代ではまだ冒険者という職業はないのか。

「魔物の討伐依頼を受けたり倒した魔物の素材を売却したり、商隊護衛の依頼を受けたりと、それを生業なりわいとしている人のことです」
「えっ?!エリアス様の世界ではそんな職業があるのですか!!」
「はい、命がけにはなりますが、貧困に苦しむ人達は冒険者を選ぶ人もいます」
「そんな職業があるなんて。その冒険者を集めるギルドを作るのは賛成です。騎士団の助けになるでしょう」

「ですが冒険者ギルドを作っても、冒険者を育てていく準備が必要になります」
「準備でしょうか?」
「えぇ、今まで剣を持ったことのない人が、いきなり討伐に出ても死ぬだけです」
「それはそうでしたね…」
「そのために事前に剣技を教えたり、今まで騎士団で戦ったことのある魔物の資料を作りそれを広め教えるのです。魔物のレベルが分かれば、ここで戦うのか、引くのかがわかりますから」
「それはもっともです。もっとエリアス様のご意見をお聞かせ願えませんか?」

 俺がここで何かをすれば時代が変わってしまう可能性がある。
 アリッサさん達に出会わない未来も…。
 だが元の時代に戻れるのかもわからない。

 それなら腹をくくるしかない。
 この城から逃げても魔物に襲われ、国が滅びているのを見ていても仕方がない。

「えぇ、俺の意見でよろしければ…」

 俺がそう答えると先ほどまで思い詰めていたビッチェ王女の硬い表情が、バラのつぼみがゆっくりと開くようにほほ笑んだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...