完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

文字の大きさ
上 下
200 / 254
第15章 セトラー国の一日

第200話 薪ストーブ

しおりを挟む
 1月末になり再びラードルフ国、マジスカ領を俺達は訪れた。
 昨年末に販売した宝くじが思った以上に収益があったようで、マジスカ公爵はとても喜んでいた。
 これからは定期的にラードルフ国全域で販売するそうだ。
 線路を引く許可もラードルフ国国王の許可が降りていた。

 マジスカ公爵には事前に見せていた、ジオラマ通りに線路を引き駅を創った。
 駅には荷下ろしを管理するためのエリアス商会の支店を作った。
 それを任せるのは創立当時から手伝いに来ていて、今は社員となったグイードさんと、アマイアさんという夫婦に任せることにした。
 そこでセトラー国から運ばれて来た鉱石や自転車、台所用品、調味料を各ギルドに卸す手配をする。

 マジスカ領で知り合ったデリク商会のデリクさんには、蜜蠟、シャンプーやボディソープ、キックボード、農機具も卸すことにした。
 当初、俺のことをジリヤ国の人間だと思っていたデリクさんは、俺がセトラー国の国王だと知るととても驚いていた。
 まあ、普通は国王自ら他国に出向いて行かないからね。


 今後、マジスカ領は製鉄所が増えて雇用も上がって行くだろう。
 後は見守って行けば良いだけだ。


 妻のアリッサさん、オルガさん、ノエルさんは、相変わらずつわりが辛そうだ。
 頑張れ!あと少し。




 俺は今、1人でアレン領のエリアス商会に来ている。
 ラードルフ国との貿易も順調で商会の様子を見にきたのだ。

 部屋にはエリアス商会のアルバンさん、シャルエル教大司教ヨハネス様。
 アバンス商会のアイザックさんがいる。

 普段はセトラー国に籠っているので、こういう機会でもないと3人に会う事も無いからね。

 しかしこの部屋の寒さは、どうにかならないのか?
 この世界の建物は木造が多い。
 そして隙間が多く、家の中で暖炉があっても断熱材もなく寒い。
 
  
 何かないかな?                                                                                                                         【スキル】世界の予備知識で調べてみる。
 建物の寒さ、寒さ対策…検索中…。
 あっ、あった。
 これなんかどうだろう?

「どうかされましたか、エリアス様?」
 アルバンさんが聞いてくる。
「実は部屋を暖かくする方法を考えまして」
「部屋を暖かく…、今よりもですか?」
「はい、そうです。でもそれには鍛冶職人さんが必要になります」
「それなら私にお任せ下さい」
「ありがとうございます、ヨハネス様。うまく行けば特許を取りたいと思います」



 俺が見つけたのは『フランクリン・ストーブ』だ。
 フランクリン・ストーブの「フランクリン」とは、凧を用いて雷が電気であることを証明したベンジャミン・フランクリンのことだ。
 このストーブはベンジャミン・フランクリンの数ある発明の内のひとつだ。 

 薪を燃やすと炎自体から熱が出るほかに、燃焼性の揮発成分が出る。
 しかし従来のストーブでは空気より軽い、揮発成分は煙突から排気されてしまう。
 そのため部屋を暖めることが出来なかった。
 この揮発成分を活用したのが、フランクリン・ストーブだ。 

 フランクリン・ストーブの構造は、アルファベットの逆『∩』字の配管をしている排気口が特徴的だ。
 一度上昇した揮発成分を炎の上部に集め、燃焼させることで熱を発生させる。
 この熱によって部屋が暖まるという仕組みだ。
 排気口は下を向いているため、燃焼効率が飛躍的に上がる。
 従来のストーブと比べると、燃料に対する熱の効率はなんと4倍にも達する。 
 言い方を代えればまきが1/4で済むことだ。
 しかも従来のストーブでも、排気側に少し手を加えるだけで改良できる。
 不燃性の『衝立ついたて』と『簀の子すのこ』で仕切ればもう完成だ。


 俺は獣紙皮に構造を絵に描いて見せた。
「ほう、そんなことで温かくなるのですか?」
「まずは、やってみてもらえませんか?」
「わかりました、さっそく手配致しましょう」
 そう言うとヨハネス様は、部屋を出て行った。


 1週間後エリアス商会を訪れると、ヨハネス様が鍛冶職人を連れてやって来た。
 準備が出来たと言うので、試しにエリアス商会のストーブを改良してもらった。

「おぉ、温かい」
「これはいい!!これなら需要がありそうです」
 ヨハネス様やアルバンさん、アイザックさんがストーブの前で驚いている。

「しかし、こんなことで本当に暖かくなるなんて」
「こんな簡単に改良できるなら、需要もあるでしょう」
「私はギルドに行き特許を取って参ります」
 そう言うとアイザックさんは、店を出て行った。



 それからは早かった。
 シャルエル教で鍛冶職人を確保をする。
 職人さん達には冬場の仕事が安定するので喜ばれたそうだ。

 エリアス商会とアバンス商会の店先に『のぼり旗』を出す。
『わずかな薪で暖かさ4倍。寒い冬はこれでさよなら』
 そう書いたのぼり旗を店先に出し、店員が店頭で口上こうじょうを始める。
 字が読めない人もいるからだ。
 何が始まったのかと、人が集まり出す。
 娯楽の無い街では、これもある意味イベントになる。
 エリアス商会がまたなにか始めたと。

 そしてストーブ改造の予約と同時に、買い替えの予約も増えた。
 部屋が暖かくなり薪代も節約になる。

  アレン領にとって、エリアス商会は無くてはならない存在になって行く。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...