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第14章 マジスカ領
第187話 待つ間
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俺とエリザちゃんはデリクさんに勧められた、『桃源の湯』と言う宿に向かっている。
宿が決まっていないとマジスカ公爵から返事が来たときに、デリク商会のデリクさんが俺に連絡を取れないからだ。
聞いた道を歩いていると大きな2階建ての宿が見えてきた。
ドアを開け中に入ると、番頭?さんに迎えられた。
「いらっしゃいませ!!お二人様でしょうか?」
「えぇ、そうです」
俺はそう答える。
俺達みたいな組み合わせの男女は珍しいよね。
「何泊お泊りでしょうか?」
「取り合えず3泊4日でお願いします。必要なときは延長しますから」
そう言って俺はお金を渡した。
部屋に案内されドアを開けると板の間だった。
「こちらで靴をお脱ぎください」
そう言われ俺達は座敷に上がる。
「夕食は16時から1階の食堂となり、お風呂は…」
案内してくれた番頭さんの説明を聞き部屋でくつろいだ。
「エリアス様、どうして部屋の入り口で靴を脱ぐのでしょうか?」
この世界は洋式が多いから、部屋の中でも靴は脱がないからね。
「それはね、エリザちゃん。靴を脱げば部屋は汚れないし、ウイルス対策にもなるからだよ」
「ウイルス?」
「そうだよ。眼には見えないけどあちこちに、病気の元『細菌』と言うのが漂っているんだよ」
「『細菌』ですか?」
「それは服やホコリなどにもついているので、入り口で靴を脱いで部屋の中でホコリを立てないことで感染予防になるんだ」
「そんなことで防げるのですね」
「それに病気の元は目や鼻、口から人体に入ってくるから、手洗いや『うがい』をするだけでも予防になるんだ」
「まあ、そんな簡単なことでですか?」
「そうだよ。特に顔を頻繁に触る癖がある人は気を付けないとね。顔周りはウイルスの巣窟だから」
「き、気を付けますね」
「それから医療には衛生や消毒が大事なんだ」
「衛生や消毒ですか?」
「例えば傷口を洗浄せず汚れたままの汚い手で、傷口を触ったり手当てをしたりするとそこから細菌が入り死亡にも繋がるんだよ」
「清潔にすることは大切なのですね」
「特に戦場なら怪我人を治す野戦病院も、不潔なままだと死ななくてもいい人が死亡することになるんだ。衛生管理が出来れば戦争があった場合、有利になることもある」
「どんな風にでしょうか?」
「戦争で傷ついても衛生管理を行えば味方の生存率が上がる。逆に衛生管理を行っていない敵の負傷兵は死んでいく。長期戦になれば間違いなく、兵の数で勝つことが出来るよ」
「そんな戦い方があるなんて?!」
「それに細菌は度数の強いアルコールで拭くことで殺菌することがでるんだよ」
「へ~、そうなのですね」
「…………………………………………」
こんな話をしてどうするんだ?
11歳の女の子と、今まで2人きりになったことなんてなかった。
マジスカ公爵からの返事を待つ数日間、いったい俺は何を話せばいいんだ?
俺は宿が取れたことを、デリクさんに伝えるためにデリク商会に向かった。
商会に着くとデリクさんが迎えてくれた。
「これはエリアス様。宿は取れましたでしょうか?」
「はい、丁度取れました」
「それは良かった」
「しかしエリアス様は凄いですな」
「何がでしょうか?」
「その若さで外交を任され、しかも鉱物を扱うとは…」
「ははは、そうでもありませんよ」
「わが商会はこの先どうすればいいのか、悩んでいるところです」
聞いてみるとデリクさんは、10代で外商から身を起こし店をやってきた。
しかし飛躍する決め手になる物が無くて困っているという。
まあ、どの店も同じものを売っていれば仕方ないよね。
何かあればいいけど…。
「お茶です。どうぞ」
するとタイミングよくデリクさんの奥さんの、ジェシカさんがお茶を運んできてくれた。
「ありがとうございます」
そう言って俺は軽く頭を下げる。
何気なく手を見ると荒れ、ヒビ割れを起こし赤くなっている。
その視線に気づいたのかジェシカさんが答える。
「この季節になると毎年ですから」
とても痛そうだ。
この世界にはクリームなんてない。
まして美容や衛生面のアイテムなど…。
季節は真冬。
水は冷たく、水仕事が辛い季節だ。
あぁ、そうだ。
良いことを思いついた。
宿が決まっていないとマジスカ公爵から返事が来たときに、デリク商会のデリクさんが俺に連絡を取れないからだ。
聞いた道を歩いていると大きな2階建ての宿が見えてきた。
ドアを開け中に入ると、番頭?さんに迎えられた。
「いらっしゃいませ!!お二人様でしょうか?」
「えぇ、そうです」
俺はそう答える。
俺達みたいな組み合わせの男女は珍しいよね。
「何泊お泊りでしょうか?」
「取り合えず3泊4日でお願いします。必要なときは延長しますから」
そう言って俺はお金を渡した。
部屋に案内されドアを開けると板の間だった。
「こちらで靴をお脱ぎください」
そう言われ俺達は座敷に上がる。
「夕食は16時から1階の食堂となり、お風呂は…」
案内してくれた番頭さんの説明を聞き部屋でくつろいだ。
「エリアス様、どうして部屋の入り口で靴を脱ぐのでしょうか?」
この世界は洋式が多いから、部屋の中でも靴は脱がないからね。
「それはね、エリザちゃん。靴を脱げば部屋は汚れないし、ウイルス対策にもなるからだよ」
「ウイルス?」
「そうだよ。眼には見えないけどあちこちに、病気の元『細菌』と言うのが漂っているんだよ」
「『細菌』ですか?」
「それは服やホコリなどにもついているので、入り口で靴を脱いで部屋の中でホコリを立てないことで感染予防になるんだ」
「そんなことで防げるのですね」
「それに病気の元は目や鼻、口から人体に入ってくるから、手洗いや『うがい』をするだけでも予防になるんだ」
「まあ、そんな簡単なことでですか?」
「そうだよ。特に顔を頻繁に触る癖がある人は気を付けないとね。顔周りはウイルスの巣窟だから」
「き、気を付けますね」
「それから医療には衛生や消毒が大事なんだ」
「衛生や消毒ですか?」
「例えば傷口を洗浄せず汚れたままの汚い手で、傷口を触ったり手当てをしたりするとそこから細菌が入り死亡にも繋がるんだよ」
「清潔にすることは大切なのですね」
「特に戦場なら怪我人を治す野戦病院も、不潔なままだと死ななくてもいい人が死亡することになるんだ。衛生管理が出来れば戦争があった場合、有利になることもある」
「どんな風にでしょうか?」
「戦争で傷ついても衛生管理を行えば味方の生存率が上がる。逆に衛生管理を行っていない敵の負傷兵は死んでいく。長期戦になれば間違いなく、兵の数で勝つことが出来るよ」
「そんな戦い方があるなんて?!」
「それに細菌は度数の強いアルコールで拭くことで殺菌することがでるんだよ」
「へ~、そうなのですね」
「…………………………………………」
こんな話をしてどうするんだ?
11歳の女の子と、今まで2人きりになったことなんてなかった。
マジスカ公爵からの返事を待つ数日間、いったい俺は何を話せばいいんだ?
俺は宿が取れたことを、デリクさんに伝えるためにデリク商会に向かった。
商会に着くとデリクさんが迎えてくれた。
「これはエリアス様。宿は取れましたでしょうか?」
「はい、丁度取れました」
「それは良かった」
「しかしエリアス様は凄いですな」
「何がでしょうか?」
「その若さで外交を任され、しかも鉱物を扱うとは…」
「ははは、そうでもありませんよ」
「わが商会はこの先どうすればいいのか、悩んでいるところです」
聞いてみるとデリクさんは、10代で外商から身を起こし店をやってきた。
しかし飛躍する決め手になる物が無くて困っているという。
まあ、どの店も同じものを売っていれば仕方ないよね。
何かあればいいけど…。
「お茶です。どうぞ」
するとタイミングよくデリクさんの奥さんの、ジェシカさんがお茶を運んできてくれた。
「ありがとうございます」
そう言って俺は軽く頭を下げる。
何気なく手を見ると荒れ、ヒビ割れを起こし赤くなっている。
その視線に気づいたのかジェシカさんが答える。
「この季節になると毎年ですから」
とても痛そうだ。
この世界にはクリームなんてない。
まして美容や衛生面のアイテムなど…。
季節は真冬。
水は冷たく、水仕事が辛い季節だ。
あぁ、そうだ。
良いことを思いついた。
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