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第12章 セトラー開国
第173話 見合う物
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住民が増えたことにより、総出で小麦の種を蒔くことにした。
しかし俺がいけなかったのか、開墾は風魔法を使っている。
開拓当初は俺のストレージで開墾し種を蒔いていた。
それを見ていたダークエルフの人達は、開墾は魔法で行う物だと思ったようだ。
ダークエルフの人達が風魔法で開墾を行う。
そして住民がその後から種を蒔く。
作業性がとてもよく、どんどん種蒔きが進む。
『農家が大変だなんて、もう言わせない』、そんな宣伝文句が思い浮かぶようだ。
農業経験のある住民が驚くほど、魔法が使えると言う事は農作業がはかどる。
みんな笑顔で作業をしている。
ある日、Dランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』さん達が移住して来た。
エメリナさん、マルガさん、シュゼットさんの3人だ。
いつの間にかセトラー国の住民が、アレン領で居場所が無い人達を誘う構図になっていた。
そしてその都度、駅前の開拓が進み建物が増えていく。
それから森の住民にも変化があった。
今まで遠巻きに蒸気機関車を見ていた森の住民達が、姿を現すようになってきた。
そして山小人達が居るのを知ると、自分達も住民になりたいと集まり始めた。
森に住んでいたのは獣族が多かった。
兎族、犬族、狐族、狼族、虎族などだった。
どの種族も20~40人と少なく、過酷な森の中でやっと生きていた感じだった。
その全ての一族を受け入れた。
異種族と呼ばれる人達は、俺の屋敷の側に住みたがり場所を取り合っている。
人族は移動の利便性から駅の近くの住居に集まって行く。
やっぱり駅近がいいのか?
いつの間にか、セトラー国は居場所をなくした人達が集まる国になった。
アスケルの森の恵みで生活ができ、食べることに困らない。
そんな噂が囁かれ、多種多様の人達が集まって行く。
住民は600人近くになった。
だがここはアスケルの森だ。
いつ魔物が襲ってくるかもわからない。
だから自衛手段としてクロスボウを創る事にした。
クロスボウは台座に弓を取り付け固定し、事前に弦を引いてセットしたものに矢を後から設置して引き金を引くことで矢を発射できるようにしたものだ。
弓は射程が長く強力ではあるが、弓を引き絞って構えるための筋力と、その状態で狙いをつけて放つための技術・訓練が必要になる。
クロスボウは弓のように長期間の訓練が不要で、素人でも強力な弓兵となる。
また手では引けないような強力な弓を搭載し、弦を脚の力で台座に引っかけ威力や射程を大幅に高めている。
その威力はちょとした魔物程度であれば、簡単に貫通し倒せるほどだ。
そして畑仕事だけではなく、肉も食事には必要な物だ。
今回集まった兎族、犬族、狐族、狼族、虎族の人達は、身体能力は高いが武器の扱い方を知らなかった。
森の中で生まれ育った者ほど、弓矢は知っていても鍛冶技術が必要な剣は知らなかった。
そのため個々の能力や、やりたい武器を聞きながら剣と弓を教えることにした。
アリッサさんは弓を、剣を教えるのはオルガさんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺の名は虎族のバルブロ。
代々、虎族は森の中で暮らしていた。
その内に仲間は減って行き、子供達を入れても20人くらいになってしまった。
このままでは先が無い、そう思っていた時だった。
アスケルの森の中に高い塀で囲まれた、村が出来たと聞いた時は驚いた。
そしてその塀の中から黒い魔物が毎日、這い出て森を徘徊しているとも聞いた。
俺は仲間を連れその村を見に行った。
するとどうだ。
漆黒の巨大な魔物が塀の中から出て来た。
これはドラゴンと言う魔物か?
そして風のような速さで、どこかに走り去ってしまった。
何日か観察していると漆黒の魔物の先頭には、闇妖精がそして後ろには山小人の姿が見えた。
これは調教師がいるのか?
俺はとっさにそう思った。
こんな巨大な魔物を調教出来るなんて。
俺達はその後を追った。
どうやら彼らは山脈の鉱山を掘っているようだった。
俺は思い切って声をかけた。
それが出会いとなった。
話を聞くとこの漆黒の魔物は、蒸気機関車と言う人が創り出した物だと言う。
そして彼らは鉱山や石炭と言う物を掘り街に行き売り、高い塀に囲まれた場所で麦や野菜を自分達で作って暮らしていると言う。
信じられなかった。
アスケルの森を開拓するなんて。
決まり事さえ守れば、移住を受け入れていると言う。
俺達はすぐに飛びついた。
村に戻りその話をみんなにした。
他の人も思っていたことは同じ、このままでは俺達には先は無いと。
約束していた日に住民総出で、待ち合わせ場所に行った。
漆黒の魔物に乗ったダークエルフ達が、セトラーと呼ぶ塀の高い場所に着いた。
中に入ると色んな種族が居た。
他の種族と関わったことが無い俺達は驚いた。
小人族、兎族、犬族、狐族、狼族、人族。
特に人族は数世代前に、俺達獣人族を街から追い出した種族だと聞いていたが…。
聞いていた話とは違う、みんな友好的だった。
俺達獣人族に偏見はないのか、人族に聞くとみんなこう答えた。
『ここはセトラー国だ。人種がどうとか、小さいことは気にしない場所だ』と。
俺は耳を疑った。
それならなぜ俺達は、森の中に隠れ住んでいたのだと。
するとまた言われた。
『街に行けば同じ人同士でも偏見はある。セトラーだから無いのさ』
声のした方を見ると猫族の女が居た。
「オルガ奥様!!」
人族の女がそう言った。
するとその猫族の女は、今まで凛々しかったが急にクネクネしだした。
いったいどうしたのだ?
周りにいる獣人に聞くと、このセトラー国の領主の奥さんだと言う。
獣人が領主だというのか?
我々が出来なかったことを、獣人がこの地を開拓をして国を興したと言うのか!!
「付いて来い。エリアスを紹介しよう」
そう言われ俺達20人はオルガと呼ばれた、猫族の女の後に付いて歩いて行く。
するとどうだ。
敷地の奥に大きな見上げる様な、三階建ての建物があった。
森の中で生まれ雨風が凌げればいい、と言う環境で育った俺達には、信じられ無いような巨大な家だった。
そして屋敷の中に案内され、客間だと言う広い部屋に通された。
しばらくするとドアが開いた。
そこには人族の、まだ少年と言っても良いほどの若い男と女が4人。
女の1人は先ほどの猫族、もう1人は多分エルフ族だろう。
そして人族の女が2人居た。
「俺がこのセトラーの国主をいているエリアスだ。みんなを歓迎する」
その若い男が国主だと言う。
信じられ無かった。
このアスケルの森を開拓できる種族は今まで誰もいなかった。
それを獣人やエルフでもなく、だたの人族とは…。
「エリアス君、みんな驚いているね」
「まあ、毎回そうだがこんな若造が国主様だからな」
「アリッサさん、オルガさん、からかわないで下さいよ」
そう言うと若い男は照れていた。
そこで俺達は4人の妻を紹介された。
だが俺達は納得できなかった。
獣人は力こそすべてだ。
まして人族の下に付くなど考えられない。
「あ~ぁ、納得できないみたいね」
「またやらないと駄目みたいね?」
猫族とエルフの女がなにか言っている。
なにをやると言うのだ?
「獣人は自分が認めないとね。ここに来た獣人はみんなそうよ」
「だからなんだと言うのだ?」
「だから虎族とエリアス君と模擬戦をやれば良いわ」
「この人族の若い男と模擬戦だと?!」
「えぇ、そうよ。そうすればエリアス君の実力が分かるでしょう」
「でも、あなたでは勝てないわ」
「な、なんだと。この俺が人族に負ける訳が無い」
俺は思わずそう言ってしまった。
そして俺達は屋敷を出て普段、訓練をしているという場所に移動した。
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、
すると周りに住民が集まって来た。
また、やるそうだ。
お~、またあれが見れるのか?!
そんな声が聞こえる。
毎回やっているのか?
「その前に私達がエリアスと戦い、武器の使い方を見せるから」
「習いたい人が居たら、後で言ってきてね」
どうやら先に猫族とエルフが戦い、見本を見せてくれるようだ。
「はい、みんな距離を開けて」
俺達は言われた通り、後ろに下がり距離を取る。
「エリアス君、そこそこ手を抜いてね」
エルフが若い男に声をかけると、うんざりしたような顔をした。
人族が猫族とエルフに勝てるとも思えないが。
だがそう思ったのは一瞬だった。
オルガと名乗った猫族が剣を抜く。
刃が緩やかな弧を描き、峰が真っ直ぐな刀剣。
刀身の全長は80cmあるだろう。
そして不思議な複数の複雑な色で輝く美しい剣だった。
これが剣か?!
俺の心はなぜか、子供の様にときめいた。
すると今度はエリアスと名乗った青年が剣を出した。
そう、その言葉の通り何もない空間から剣を出したのだ。
その剣は彼の身長と同じくらいの長い剣で、刀身が赤黒く光っている。
剣と言うのは、こんなにも綺麗な物なのか?!
ブォ~~ン!!
剣が空気を切る音がする。
そして2人は剣を打ち合う!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
猫族は動きが早い種族だ。
しかしこれほど重い攻撃を繰り出すとは…。
そして人族の青年もおかしい。
あれだけ巨大な大剣を、容易く振り回しているからだ。
剣を打ち据え肘や脚を使い、同時に攻撃を繰り出していく。
「エリアス君、いくわよ!!」
声がしたと思うとエルフのアリッサと言う女が弓を構えて放つ。
シッュ!!シッュ!!シッュ!!
弓の着弾が早い!!
矢を放ったと思う側から着弾していく。
それでは避けきれない。
カキッン!!カキッン!!カキッン!!
青年は剣の身幅を横にし、盾代わりにして刀身で弓矢を弾く。
そして合間から猫族の剣の攻撃が続く。
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
「オルガ、避けて!!」
そうエルフが叫ぶと、弓矢の鏃が赤く輝き始める。
そして連続で放つ!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
なんと青年が弓矢を剣ではじくと、爆発するではないか!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
爆発する弓矢を剣ではじきながら青年は前に進む。
「スラッシュ!」
猫族の女が剣を振ると、空気の刃が飛んでい入った。
青年はそれを一刀両断し駆け抜ける。
エルフが放つ信じられないくらいの早い弓の着弾の中、青年は進んで行く。
物凄い爆発音と、砂ぼこりが舞い訓練所は地形が変わっている。
いったい、これは何と戦っているのだ?
そして突然、戦いは終わった。
「さすがね、エリアス君」
「もう私では相手にならないなエリアス」
エルフと猫族の女が座り込んでいた。
そしてその横には、人族の青年が佇んでいた。
エルフと猫族の女は立ち上がり、裾の汚れを手で払いながら俺達に聞く。
「どう、これでもエリアス君と手合わせしてみたい?」
俺はゾッとした。
するとダークエルフの部族長らしい老人が褒めたたえる。
「さすがあの緑竜を、倒しただけのことはありますな」
な、なに?
それなら彼はドラゴンバスターではないか?!
ドラゴンなど1人で倒せる訳がない。
俺達はエリアスという青年を認めることにした。
そして俺は剣に魅了された。
幸いにもここでは剣や弓を教えてくれると言う。
俺はオルガ奥様から剣を教わることにした。
そして頂いたのは、鋼色のバスターソードだった。
虹色の剣が欲しいと言ったら、あれは特別製の魔道具だそうだ。
何でもオルガ奥様とアリッサ奥様が、結婚前にエリアス様より頂いたそうだ。
しかし努力次第では、頂けるかもしれない。
ここセトラーは努力した者は、報いてくれる場所だから。
しかし俺がいけなかったのか、開墾は風魔法を使っている。
開拓当初は俺のストレージで開墾し種を蒔いていた。
それを見ていたダークエルフの人達は、開墾は魔法で行う物だと思ったようだ。
ダークエルフの人達が風魔法で開墾を行う。
そして住民がその後から種を蒔く。
作業性がとてもよく、どんどん種蒔きが進む。
『農家が大変だなんて、もう言わせない』、そんな宣伝文句が思い浮かぶようだ。
農業経験のある住民が驚くほど、魔法が使えると言う事は農作業がはかどる。
みんな笑顔で作業をしている。
ある日、Dランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』さん達が移住して来た。
エメリナさん、マルガさん、シュゼットさんの3人だ。
いつの間にかセトラー国の住民が、アレン領で居場所が無い人達を誘う構図になっていた。
そしてその都度、駅前の開拓が進み建物が増えていく。
それから森の住民にも変化があった。
今まで遠巻きに蒸気機関車を見ていた森の住民達が、姿を現すようになってきた。
そして山小人達が居るのを知ると、自分達も住民になりたいと集まり始めた。
森に住んでいたのは獣族が多かった。
兎族、犬族、狐族、狼族、虎族などだった。
どの種族も20~40人と少なく、過酷な森の中でやっと生きていた感じだった。
その全ての一族を受け入れた。
異種族と呼ばれる人達は、俺の屋敷の側に住みたがり場所を取り合っている。
人族は移動の利便性から駅の近くの住居に集まって行く。
やっぱり駅近がいいのか?
いつの間にか、セトラー国は居場所をなくした人達が集まる国になった。
アスケルの森の恵みで生活ができ、食べることに困らない。
そんな噂が囁かれ、多種多様の人達が集まって行く。
住民は600人近くになった。
だがここはアスケルの森だ。
いつ魔物が襲ってくるかもわからない。
だから自衛手段としてクロスボウを創る事にした。
クロスボウは台座に弓を取り付け固定し、事前に弦を引いてセットしたものに矢を後から設置して引き金を引くことで矢を発射できるようにしたものだ。
弓は射程が長く強力ではあるが、弓を引き絞って構えるための筋力と、その状態で狙いをつけて放つための技術・訓練が必要になる。
クロスボウは弓のように長期間の訓練が不要で、素人でも強力な弓兵となる。
また手では引けないような強力な弓を搭載し、弦を脚の力で台座に引っかけ威力や射程を大幅に高めている。
その威力はちょとした魔物程度であれば、簡単に貫通し倒せるほどだ。
そして畑仕事だけではなく、肉も食事には必要な物だ。
今回集まった兎族、犬族、狐族、狼族、虎族の人達は、身体能力は高いが武器の扱い方を知らなかった。
森の中で生まれ育った者ほど、弓矢は知っていても鍛冶技術が必要な剣は知らなかった。
そのため個々の能力や、やりたい武器を聞きながら剣と弓を教えることにした。
アリッサさんは弓を、剣を教えるのはオルガさんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺の名は虎族のバルブロ。
代々、虎族は森の中で暮らしていた。
その内に仲間は減って行き、子供達を入れても20人くらいになってしまった。
このままでは先が無い、そう思っていた時だった。
アスケルの森の中に高い塀で囲まれた、村が出来たと聞いた時は驚いた。
そしてその塀の中から黒い魔物が毎日、這い出て森を徘徊しているとも聞いた。
俺は仲間を連れその村を見に行った。
するとどうだ。
漆黒の巨大な魔物が塀の中から出て来た。
これはドラゴンと言う魔物か?
そして風のような速さで、どこかに走り去ってしまった。
何日か観察していると漆黒の魔物の先頭には、闇妖精がそして後ろには山小人の姿が見えた。
これは調教師がいるのか?
俺はとっさにそう思った。
こんな巨大な魔物を調教出来るなんて。
俺達はその後を追った。
どうやら彼らは山脈の鉱山を掘っているようだった。
俺は思い切って声をかけた。
それが出会いとなった。
話を聞くとこの漆黒の魔物は、蒸気機関車と言う人が創り出した物だと言う。
そして彼らは鉱山や石炭と言う物を掘り街に行き売り、高い塀に囲まれた場所で麦や野菜を自分達で作って暮らしていると言う。
信じられなかった。
アスケルの森を開拓するなんて。
決まり事さえ守れば、移住を受け入れていると言う。
俺達はすぐに飛びついた。
村に戻りその話をみんなにした。
他の人も思っていたことは同じ、このままでは俺達には先は無いと。
約束していた日に住民総出で、待ち合わせ場所に行った。
漆黒の魔物に乗ったダークエルフ達が、セトラーと呼ぶ塀の高い場所に着いた。
中に入ると色んな種族が居た。
他の種族と関わったことが無い俺達は驚いた。
小人族、兎族、犬族、狐族、狼族、人族。
特に人族は数世代前に、俺達獣人族を街から追い出した種族だと聞いていたが…。
聞いていた話とは違う、みんな友好的だった。
俺達獣人族に偏見はないのか、人族に聞くとみんなこう答えた。
『ここはセトラー国だ。人種がどうとか、小さいことは気にしない場所だ』と。
俺は耳を疑った。
それならなぜ俺達は、森の中に隠れ住んでいたのだと。
するとまた言われた。
『街に行けば同じ人同士でも偏見はある。セトラーだから無いのさ』
声のした方を見ると猫族の女が居た。
「オルガ奥様!!」
人族の女がそう言った。
するとその猫族の女は、今まで凛々しかったが急にクネクネしだした。
いったいどうしたのだ?
周りにいる獣人に聞くと、このセトラー国の領主の奥さんだと言う。
獣人が領主だというのか?
我々が出来なかったことを、獣人がこの地を開拓をして国を興したと言うのか!!
「付いて来い。エリアスを紹介しよう」
そう言われ俺達20人はオルガと呼ばれた、猫族の女の後に付いて歩いて行く。
するとどうだ。
敷地の奥に大きな見上げる様な、三階建ての建物があった。
森の中で生まれ雨風が凌げればいい、と言う環境で育った俺達には、信じられ無いような巨大な家だった。
そして屋敷の中に案内され、客間だと言う広い部屋に通された。
しばらくするとドアが開いた。
そこには人族の、まだ少年と言っても良いほどの若い男と女が4人。
女の1人は先ほどの猫族、もう1人は多分エルフ族だろう。
そして人族の女が2人居た。
「俺がこのセトラーの国主をいているエリアスだ。みんなを歓迎する」
その若い男が国主だと言う。
信じられ無かった。
このアスケルの森を開拓できる種族は今まで誰もいなかった。
それを獣人やエルフでもなく、だたの人族とは…。
「エリアス君、みんな驚いているね」
「まあ、毎回そうだがこんな若造が国主様だからな」
「アリッサさん、オルガさん、からかわないで下さいよ」
そう言うと若い男は照れていた。
そこで俺達は4人の妻を紹介された。
だが俺達は納得できなかった。
獣人は力こそすべてだ。
まして人族の下に付くなど考えられない。
「あ~ぁ、納得できないみたいね」
「またやらないと駄目みたいね?」
猫族とエルフの女がなにか言っている。
なにをやると言うのだ?
「獣人は自分が認めないとね。ここに来た獣人はみんなそうよ」
「だからなんだと言うのだ?」
「だから虎族とエリアス君と模擬戦をやれば良いわ」
「この人族の若い男と模擬戦だと?!」
「えぇ、そうよ。そうすればエリアス君の実力が分かるでしょう」
「でも、あなたでは勝てないわ」
「な、なんだと。この俺が人族に負ける訳が無い」
俺は思わずそう言ってしまった。
そして俺達は屋敷を出て普段、訓練をしているという場所に移動した。
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、
ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、ワイ、ガヤ、ガヤ、ワイ、
すると周りに住民が集まって来た。
また、やるそうだ。
お~、またあれが見れるのか?!
そんな声が聞こえる。
毎回やっているのか?
「その前に私達がエリアスと戦い、武器の使い方を見せるから」
「習いたい人が居たら、後で言ってきてね」
どうやら先に猫族とエルフが戦い、見本を見せてくれるようだ。
「はい、みんな距離を開けて」
俺達は言われた通り、後ろに下がり距離を取る。
「エリアス君、そこそこ手を抜いてね」
エルフが若い男に声をかけると、うんざりしたような顔をした。
人族が猫族とエルフに勝てるとも思えないが。
だがそう思ったのは一瞬だった。
オルガと名乗った猫族が剣を抜く。
刃が緩やかな弧を描き、峰が真っ直ぐな刀剣。
刀身の全長は80cmあるだろう。
そして不思議な複数の複雑な色で輝く美しい剣だった。
これが剣か?!
俺の心はなぜか、子供の様にときめいた。
すると今度はエリアスと名乗った青年が剣を出した。
そう、その言葉の通り何もない空間から剣を出したのだ。
その剣は彼の身長と同じくらいの長い剣で、刀身が赤黒く光っている。
剣と言うのは、こんなにも綺麗な物なのか?!
ブォ~~ン!!
剣が空気を切る音がする。
そして2人は剣を打ち合う!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
猫族は動きが早い種族だ。
しかしこれほど重い攻撃を繰り出すとは…。
そして人族の青年もおかしい。
あれだけ巨大な大剣を、容易く振り回しているからだ。
剣を打ち据え肘や脚を使い、同時に攻撃を繰り出していく。
「エリアス君、いくわよ!!」
声がしたと思うとエルフのアリッサと言う女が弓を構えて放つ。
シッュ!!シッュ!!シッュ!!
弓の着弾が早い!!
矢を放ったと思う側から着弾していく。
それでは避けきれない。
カキッン!!カキッン!!カキッン!!
青年は剣の身幅を横にし、盾代わりにして刀身で弓矢を弾く。
そして合間から猫族の剣の攻撃が続く。
ガキッ!!ガンッ!!ガキッ!!ガンッ!!
「オルガ、避けて!!」
そうエルフが叫ぶと、弓矢の鏃が赤く輝き始める。
そして連続で放つ!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
なんと青年が弓矢を剣ではじくと、爆発するではないか!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
爆発する弓矢を剣ではじきながら青年は前に進む。
「スラッシュ!」
猫族の女が剣を振ると、空気の刃が飛んでい入った。
青年はそれを一刀両断し駆け抜ける。
エルフが放つ信じられないくらいの早い弓の着弾の中、青年は進んで行く。
物凄い爆発音と、砂ぼこりが舞い訓練所は地形が変わっている。
いったい、これは何と戦っているのだ?
そして突然、戦いは終わった。
「さすがね、エリアス君」
「もう私では相手にならないなエリアス」
エルフと猫族の女が座り込んでいた。
そしてその横には、人族の青年が佇んでいた。
エルフと猫族の女は立ち上がり、裾の汚れを手で払いながら俺達に聞く。
「どう、これでもエリアス君と手合わせしてみたい?」
俺はゾッとした。
するとダークエルフの部族長らしい老人が褒めたたえる。
「さすがあの緑竜を、倒しただけのことはありますな」
な、なに?
それなら彼はドラゴンバスターではないか?!
ドラゴンなど1人で倒せる訳がない。
俺達はエリアスという青年を認めることにした。
そして俺は剣に魅了された。
幸いにもここでは剣や弓を教えてくれると言う。
俺はオルガ奥様から剣を教わることにした。
そして頂いたのは、鋼色のバスターソードだった。
虹色の剣が欲しいと言ったら、あれは特別製の魔道具だそうだ。
何でもオルガ奥様とアリッサ奥様が、結婚前にエリアス様より頂いたそうだ。
しかし努力次第では、頂けるかもしれない。
ここセトラーは努力した者は、報いてくれる場所だから。
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10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
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