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第9章 製鉄技術

第139話 木製自転車と駅作り

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 俺とドゥメルグ公爵は庭にでた。
 執事のアルマンさんも一緒に来ている。

「面白い乗り物とは何だい?」
「これです」
 俺はストレージから自転車を出して見せた。

「これは?」
「自転車と言う木製の乗り物です。今度、エリアス商会から販売しようと思っております。実際に乗ってみますから、見ていてください」
 そう言うと俺は自転車に乗り庭を走った。
「人が歩く2~4倍くらいの速さで、移動することが出来ます」
 脚力があればですが…。

「なに!そんなに速くか?!」
「これからどんどん鉱物や木工を使って、生活が便利になる物を作って行きます」
 そう言いながら自転車を2台出した。

 
 ドゥメルグ公爵はワインレッド自転車。
 執事のアルマンさんは青色の自転車だ。
 染料を使って自分の好きな色に染めるのもいいな。

「これはなんですか、エリアス様」
 アルマンさんが聞いてくる。
「ベルですアルマンさん。周りに危険をしらせる時に鳴らすんです。こうやってね」
 チリンチリン!チリンチリン!
 俺はベルを鳴らして見せた。

「そうだ公爵様、これに乗って城門まで行きませんか?」
「これでかい?」
「えぇ、どこに行くにも、馬車の用意をしてからだと時間が掛かりますから」
「それはそうだな」
「自転車で風を切りながら走っていきましょう」
「風を切りながらか、楽しそうだな」
「いけません公爵様」
「硬いことを言うなアルマン」
「しかし…」

 そして俺達3人は公爵家を自転車で出た。
 俺の後ろをドゥメルグ公爵とアルマンさんが、自転車で続いてくる。
 男3人が木製の自転車に乗りながら並んで走って行く。
 ある意味、不気味な絵面えずらだ。

 ドゥメルグ公爵はベルが気に入ったのか、ずっと鳴らしている。
 意外と子供か?

 チリンチリン!チリンチリン!
 
 道行く人たちは驚き、道を開けてくれえる。
 なにやら貴族らしい服を着た人達が、見たこともない物に乗り走って来るのだ。
 みんな振り返って見ている。

 そして遂に公爵に続きアルマンさんも…。
 チリンチリン!チリンチリン!
 何が楽しいんだ?

 チリンチリン!チリンチリン!
     チリンチリン!チリンチリン!
         チリンチリン!チリンチリン!

 ベルを鳴らすと、みんなが道を開けてくれる。
 その真ん中を走っていく。
 それが嬉しいらしい。
 自転車暴走族か!

 チリンチリン!チリンチリン!
     チリンチリン!チリンチリン!

 俺達は自転車に乗り、城門に着いた。
 いるのはドゥメルグ公爵とアルマンさん、俺の3人だ。

 俺達を見た城門のところにある警備所から、偉そうな人が出てくる。
「これはドゥメルグ公爵様。わざわざこんなところまで、どうされましたか?」
「お勤めご苦労だな。鉄道用の門と駅を作りにきたのだ」
「鉄道用の門と駅?」
「まあ、分からずともよい。エリアス君、どこら辺が良いんだ」
「そうですね、ここら辺が良いと思います。人の出入りにも邪魔になりませんから」
「そうか、ならさっそく始めてくれ」
「わかりました。みなさん危ないから、さがっていてください」
 城壁近くに居た人にどいてもらった。

「では行きます!」

〈〈〈〈〈 カキ~~~ン!! 〉〉〉〉〉

 ガラスが割れるような、甲高い音がした。
 すると厚さ1mくらいある城壁が高さ4m、幅5mくらいが切り取られたように一瞬で無くなっていた。
 そして城壁の外が見えている。

「こ、これは」
 ドゥメルグ公爵やそれを見ていた人たちが驚く。

 俺のストレージは時空間魔法だ。
 そしてカスタマイズも可能になっている。

 今やったことは城壁のある空間を切取り収納しただけ。
 それだけだ。

 ただ生き物相手にはできない。
 以前、大型魔物の首の空間を切り収納しようとしたけど駄目だった。

 そんなことが出来たら大軍相手でも戦える。
 敵全員の上半身の空間を切り取るイメージをし、収納したら俺1人で大量虐殺ができることになる。
 
 さすがにそれはないよね。

「エリアス君。こ、これはどういうことだ。なにをやったのだ?」
 ドゥメルグ公爵が驚いた顔をして聞いてくる。

「機関車が通れるだけの城壁を、切り取っただけですよ」
「切り取るだと…」

 なにを驚いているんだ?
 攻撃にも使えず、こんなことぐらいしか使えない能力なのに。

「えぇ、そうです。では次に行きます」

 手を前にかざし歩く速度に合わせ、目の前の土を収容する。
 排出時にストレージ内で創っておいた、枕木とレールを組み込み城壁200m手前から外まで線路を引いていく。

 そして荷下ろしがしやすいように駅を創る。
 線路の横に固めた鉱物を1mくらい積み上げ、幅5mくらいで長さ150mくらいの駅を創った。
 屋根を付ければ無人駅の完成だ。

 最後にセトラー領を開拓した時に伐採した木を使い、ストレージ内の『創生魔法』で両開きの門を作って城壁に取り付けた。

 これで完成!
 時間にして5分も掛かっていない。

「では城壁の外側の線路は、引きながら帰りますから」
「引きながら…」
 そうだろうな、実際に機関車の走る姿を見ていない以上、鉄道と言われてもね。

「そうです公爵様。線路が繋がりましたら、私がまず蒸気機関車で来ますから」
 そう言うと警備所の人にこのレールの上を走る大きなものが来たら、それは俺ですからと言っておいた。

「では私はこれで失礼いたします。自転車は差し上げますから」
 そう言って俺は自転車に乗り公爵家を後にした。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

「アルマンどう思う」
「はい、公爵様。エリアス様は脅威です」
「お前もそう思うか」

 ここはドゥメルグ公爵家の書斎だ。
 エリアスが駅を作ってから別れて、チリンチリン!チリンチリン!となぜか2人でベルを鳴らしながら並んで自転車に乗って屋敷に帰って来たのだ。
 高校生のデートか?

「城壁を切り取っただと。理解できるか?」
「いえ、できません。あの能力があれば城壁の防御など無きに等しいです」
「剣を背負った兵士を自転車に乗せ、敵国の街へ攻め込む。そしてエリアス君のスキルで、城壁を切り取れば簡単に攻めることが出来る」
「そんなことをエリアス様が考えているとは思えませんが」
「では城壁だけではなく、それ以外にも使えたらどうする」
「どう言う事でしょうか」
「壁だけではなく人も切り取れたら、わが軍でも全滅しかねん」

「『愛し子』様であるエリアス様がその気になったら、信徒さんや教徒さんはあちらに付くでしょう。そうなれば我々では太刀打ちできません」
「あぁ、そ、そうであった。なにを今更、脅威を感じていたのだ。内政に目を向けている間は害はなかろう。なるべくエリアス君に便宜を図ろうではないか」

 同じ物事でも人によって見る角度が違えば、解釈も違う。
 自分の知らない事は恐怖を感じる。
 それが人というものだから。
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