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第8章 開拓村

第135話 閑話 アルバンの苦悩

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「社長、これどこ置きますか?」

「行ってきます、社長」

「社長、他に仕事はありますか?」

「「「社長、社長、社長 」 」 

 何度言ったら分かるんだ。
 私は経営者でも社長でもない。
 どうしてこうなった?

 半年前、家族揃って奴隷商からエリアス様に購入して頂いた。
 しかも従業員という名目でだ。
 好待遇としか言いようがない。
 そして3ヵ月前突然、開拓を始められ森の奥に行かれてしまった。
 そして商会の運営は任せて頂けると言われて…。

 私は事業を任され『マヨネーズ』製造、『味元あじげん』、『マヨネーズ』、『醤油』販売で店は莫大な利益を出している。
 エリアス様を介していつの間にかアバンス商会会長アイザック様、シャルエル教大司教ヨハネス様と意気投合し利害が一致し商売に更に力が入った。

 作業場が狭くなり探していたところ、大司教ヨハネス様が敷地が空いているからと安く土地を貸してくださった。
 そこにエリアス商会の建物を新たに建て移転した。
 孤児たちが毎日『マヨネーズ』作りに『なごみ亭』まで来ていることを考えると、教会内の方が都合がよく飛びついた。

 商業ギルドやアバンス商会への納品を、教会の修道士さんに寄付をし手伝ってもらえるようになっている。
 そして調味料作りも手が足りず、暇があればシスターさん達も手伝ってくれる。
 大司教ヨハネス様にお礼を言うと、『エリアス様にかかわることであれば、喜んで教会は協力するでしょう』と言われた。

 
 エリアス商会のやっていることは教会にとってメリットが多い。
 子供たちに仕事や働き先を与え、教会にもお金が入る。
 だから共感し協力してもらえるのか。
 素晴らしいことだ。
 自分達だけではなく、みんなで良くなっていく仕事だなんて。

 

 そういえば運搬用のリヤカーを欲しいと言う人も出てきている。
 リヤカーには両サイドにエリアス商会の文字とロゴが入っている。
 そして教会内の店の壁にも同じロゴがある。
 毎日、修道士さんたちがそのリヤカーを引いて配送に出ている。
 それを見てエリアス商会だと分かり来店されるとか。
 良い宣伝になってる。

 そして気が付くと教会側から『マヨネーズ』作りに来る人が、段々と多くなっていることに気づいた。
 最初は見習いかと思ったが、どうやら奉仕で教会に来て声を掛けられたと。
 男女関係なく室内作業で無理なくできる。
 内職のようなものだ。
 そしてその一部を教会に寄付として収めればいいそうだ。

 エリアス様曰く、人材派遣というやり方らしい。
 なるほど人を派遣して手数料をもらう、これもありだと思う。

 そしていつの間にか教会の敷地内に、エリアス商会関連の建物が多くなっていく。
 敷地を歩いている人も『マヨネーズ』を作っている人たちが多くなり、人も増え納品のためのリヤカーを引く人も専用の人となり、まるでエリアス商会の中に教会がある様に見える。

 そしてエリアス様が不在のため、みんなが私のことをいつのまにか『社長』と呼ぶようになった。
 否定するのも最近では面倒になってきた。
 エリアス様に相談したところ、私は『社長』でエリアス様が『会長』と呼ぶことになった。


 いいえ、私は『社長』ではありません。
 従業員という名の奴隷です。

 そしてあなたに購入された、一般市民より生活水準の高い『奴隷』です。

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