完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

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第8章 開拓村

第129話 閑話 アルバンⅡ

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 奴隷の私にこれだけの大金を、持たせていいのかをエリアス様に伺った。

「20万円は一瞬なら大金です。しかし僅かな期間しか暮らせないお金です。ここにいればこれからそれ以上の、たくさんのお金を稼げるかもしれませんよ?」
「御冗談を、私は奴隷です」

「先ほど話した通り奴隷ではなく、新しい会社に就職したのだと思ってください」
「わかりました、エリアス様」

「俺も若輩者ですから何かあれば遠慮なく言ってください」
 聞いた言葉が信じられなかった。
 奴隷に落ちてこの先どうなるのかと、将来を悲観していたが。
 こんな良い買い主が見つかるなんて。


 買い物から戻ってきた私達3人にエリアス様から仕事内容を聞かされた。
 商会で作った調味料を、卸したり販売することだそうだ。
 私の仕事は主に商業ギルドなどに、納品や営業に行ってもらう事になるようだ。

 それからエリアス様は私を連れ、取引先にあいさつ回りに出掛けた。
『なごみ亭』、商業ギルド、アバンス商会の順だった。
 私はあまりの高額な取引額に驚いた。
 そして魔道具も、商業ギルドやアバンス商会に卸しているという。

 その夜の夕食はエリアス様に作って頂いた。
 奴隷が主人に夕食を作って頂くのも変だが、扱っている調味料を知ってもらうためだという。

 それは今まで食べたこともない美味しい食事で、久しぶりの団らんに涙がでた。



 それから『ラウンド・アップ』という、温泉施設も任せられることになった。
 だが入館料に驚いた。
 1組10万だそうだ。
 しかも値段は相手が決めて置いていくと言う。
 いったいどんな商売だ?
 それだけでも驚くのに、お客様は増えていく。
 理由を聞けば納得できた。
 
 ハチミツを使った見たこともない高級菓子。
 綿という今までに見たこともない生地で作られた、手触りのいいタオルとバスローブ。
 そして女性に人気のシャンプーと、ボディソープ。
 髪の毛や体を綺麗にし、良い匂いがして人気の商品だ。
 しかもシャンプーは頭を洗うので殺菌効果、髪の保湿、浸透力を考えハチミツを使用しているとか?
 高額なハチミツを頭を洗うために使うなど、なんと無駄な使い方なのだろう。
 だが逆にその無駄だと思えることが、良いらしく売れている。

 それから斡旋ギルドからきている人達を直接雇用にしたり。
『ラウンド・アップ』は富裕層相手の商売で、しかもスタッフの半分は獣人だ。
 あり得ない。
 人族は他の種族を見下すことで成り立っているからだ。
 しかもエリアス商会のロゴには左右を向く女性の横顔を描いてある。
 正面右の女性は耳が頭部にあり、獣人が居ます、という証だ。
 それほどまでに獣人であるオルガ奥様を愛しているのか、それともそれを跳ねのけるだけの商品だという自負があるのか。
 きっとその両方だろう。

 門の内側の右に作業場という2階建ての住居兼作業場を出して頂いた。
 こんな物までマジック・バッグの中に入っているなんて。
 蔵の中に入ると正面は14畳くらいの作業場になっている。
 テーブルや椅子、仕事がしやすい様に台所、トイレ、浴槽も完備。
 二階に上がると六畳くらいの部屋が4部屋。
 各部屋に窓があり、陽が入るようになっている。

 一戸建てに住めるとは。
 普通に働いていても、ここまでの家には住めないだろう。
 奴隷になった方が生活が良いなんて。



 ある日、人を雇ったとエリアス社長が言われた。
 教会から孤児を6人雇い、醤油タレやマヨネーズ作りを手伝うそうだ。
 彼らは勤勉に働けば成人した15歳には、雇って頂けると言われているそうだ。
 なんと奇特な考えだろう。
 孤児は孤児院を出ても、何の後ろ盾もなく先がないのが普通だから。

 気が付くとやって来る孤児達は付き添いが居て12人になり、孤児達はお風呂に入り服を買い『なごみ亭』でお昼を食べている。
 当然、付き添いのシスターや修道士さんも、お風呂に入りお昼を食べて帰る。
 アリッサ奥様に人数が増えたことを伝えると、ほほ笑みながら増えた人数分のお金を出してくれた。
 そう言う事ではないと思うが?
 気が付くと付き添いの人数が増え、作業場にはたくさんの人が居る。
 いったい、なんだこれは?

 ある日、付き添いの人達や残りの孤児達も手伝いたいと言い始めた。
 そしてやり方を教え彼らは上達していく。
 当然、作業場が狭くなる。
 今ではエリアス社長という言い方になった、エリアス様にそれを伝えた。
 すると次の朝、我が家の隣に平屋の広い作業場が突然、建っていた。

 これは?!
  横を見るとアリッサ奥様が、ドンマイ的な顔をしている。
 いつもこうなのだろうか?
 そうだ、考えては駄目なんだ。
 ここはそういうところだ。




 ある日、ウォルド領からお客様が見えた。
 ファイネン公爵様だ。
 王都の両翼と呼ばれる、東の公爵領のご当主様だ。
 しかもこんな辺鄙な何もないアレン領などに。

 え?
 婚約?長女のエリザ様と?
 公爵様の長女が一般市民に嫁ぐのか?
 エリアス社長はそれほどまでの人なのか?

 成人は15歳、しかしエリザ様はまだ10歳。
 しかも嫁入り道具を整えて結婚前に一緒に暮らすという。
 なんでも貴族社会に『お試し』期間という婚姻制度ができたそうだ。

 そして2ヵ月が経った。
 エリアス社長は私達に仕事を任せて、自由にしているようだ。
 ある日、奥様方3人を連れて出かけたきり戻ってこない。

 そんな時だ。
 ファイネン公爵家のお嬢様、エリザ様がいらしたのは。
 エリアス社長のお帰りは分からないことを告げ、私は何度も侍女のネリーという女性に頭を下げてた。

 翌日も訪ねて頂いたがあるじ不在には変わりはない。
 仕方がない。
 私は少しでも気晴らしになればと思い、皆さんで施設を利用するように勧めた。
 もちろん従者さんや護衛の人達も含めて無料です。

 それからエリザ様達はエリアス社長不在の屋敷を、毎日楽しそうに訪れてくる。
 特に3階のレストランで出している果物や、お菓子は『今日は、なにかな?』と楽しみにされているようだった。

 そして7日目にエリアス社長は戻られた。
 良かった。
 私の役目は終わった。

 エリザ様のことを話すと、エリアス社長は『えっ?』という顔をされた。
 ま、まさか忘れていたとかはないですよね?
 仮にも公爵家ですよ。


 そして馬車に積んであった嫁入り道具を降ろした。
 役目を終えた従者さんや護衛の人達は、馬車に乗り宿屋に戻って行く。
 明日の朝、ウォルド領に帰るそうだ。
 はい、そこ!!
 残念そうな顔をしない!!



 エリアス社長にはこれからも驚かされていくのだろう。

 これからどうなって行くのか、私も元商人の端くれとして知りたいと思った。

 1,000万円の価値を、親子三人に見出してくれたご主人様に。
 そして夢のようなこの生活を与えてくださったエリアス社長に。
 私は心からの忠誠を誓った。
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