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第7章 思惑

第112話 ドゥメルグ公爵

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 オルガさんに見送られ馬車に乗った。
 馬車の中はアルマンさんと俺、アリッサさん、ノエルさんの4人。

 き、気まずい…。
 

「ところでエリアス様は、どのようにしてこの国にいらしたのでしょうか?」

 俺はいつ聞かれてもいいように、用意しておいた言葉を話した。
「村とも言えないような名もない場所で育ち、両親が他界したのを機に村の人から『外の世界を見た方がいい』と勧められアレンの街に辿り着きました」

「ご両親が他界されたと…。その若さで、お可哀そうに…」

 アルマンさんから見て俺は、何歳に見えているのだろう?
 それに俺のことを『様』付けで呼ぶのは止めてほしいと言ったが、執事なのでお客様には敬意を示すそうで止められないと言われた。

 その後、俺はアルマンさんに畑仕事や野菜のことなどを聞かれた。
 そして都度『【スキル】世界の予備知識』で検索し視界の中に浮かぶ検索結果を、知っているかのように話していった。
 畑の水は用水路を引き水車で脱穀、製粉をしていたことを調子に乗って話した。
 途中、何度アリッサさんが咳払いをして、俺の言葉を遮っていた。



 そんな話をしている間にどうやらお屋敷に着いたようだ。
 門に入りしばらくしてから馬車が止まった。
 馬車から降りると使用人4人が出迎えてくれた。


 そして客間に案内されドアを開けると、30代前半の男性が座っていた。
 アルマンさんが先に入り俺はその後に続いた。

『?!』
 部屋に入るなり嫌な感じがした。

 見ると30代前半の男性がソファに腰かけている。
 執事のアルマンさんが紹介を始めた。
「アレンの領主トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグ公爵様です」

「この度はお招きいただきまして。エリアスです」

 アルマンさんにうかがされ俺とアリッサさん、ノエルさんはソファに座った。

 ドゥメルグ公爵が口を開いた。
「アルマンどうだった」
「はい、とても博学で貴族にも劣らない知識をお持ちだと思われます」
「ほう、ではエリアスとやら、君は一体その知識をどこで手に入れたのかな?」

 鋭い眼光で俺を見た。
 俺としては『転移』して来ましたとは言えず、お決まりの『両親が死に村を出てきた』を説明した。


「そうなのかアルマン?」
「ただその割には辻褄が合いません。畑仕事をしていたと聞きましたが、手がとても奇麗です。しかし知識も豊富で辻褄が合いません」
「君は大容量のマジック・バッグを持っている。そして修繕と破壊魔法を使うと聞く。しかも私の【鑑定】を弾くとは!!」

 なんだこの展開は??
 前にもあったな、こんなこと?
 部屋に入った時の嫌な気配はそれだったのか。

「知識は他界した両親から教わりました。マジック・バッグは曽祖父の代から受け次いでいるものです」

「アバンス商会のアイザックから話は聞いている。アバンス商会は我が公爵家の出入り商人だ。馬車一台分の荷物を収納できるマジック・バッグなど国宝級だ。そんな人材を野放しにはできない」

 あぁ、やっぱりそうだったんだ。
 まずいことをしたな。

「君はこれから何をしたいのかな?」

「私ですか。美味しいものを食べ、その内便利な道具でも作り、嫁達と面白楽しく生きていければと思います」

「面白楽しくか、出来そうで出来ないことだな」

「色々と君のことは調べさせてもらった。商業ギルドで聞いたところでは、『味元あじげん』や『マヨネーズ』という調味料も君の発案だとか」

「はい、そうです。誰かが思いつく前に、私が思いついただけです」

「ハッハッハッ、気を悪くしないでほしい。国に属している以上、アバンス商会も商業ギルドも公爵家に逆らうことはできん。許してやってくれ」

ドゥメルグ公爵の笑顔が真顔に変わる。
「では冷蔵庫と照明の魔道具、魔道コンロは?今までそのような高度な魔道具を見たことが無いそうだ。君が作ったと言うではないか?」

 オルガさん達が危惧していたのはこう言うことか?
 面倒なことになったな。
 今さら言っても遅いけど。

「それに君が営業している『ラウンド・アップ』と言う施設。何名かの人を行かせたがみんな称賛していた。膨大な量の温水、娯楽施設。数々の見たこともない魔道具。そこはつい数ヵ月前までは修繕も不可能な程、老朽化した建物があったと聞く。しかもある日、気が付くと見たこともない立派な建物が建っている。工事の形跡もなく、建築期間がまるでなかったように突然にだ」

 俺は言葉に詰まった。
 それはそうだよな。
 普通は古い建物を解体して、新しい建物を作るからね。
 その工程が無いんだもの。

「そして『綿』と言う製品とハチミツだ。どちらもアスケルの森に関係している。『綿』はアスケルの森の奥に、元になる植物があると聞く。そしてハチミツだ。何百匹もの蜂の魔物キラービーを、倒さなければ手に入らない幻の甘味だ。一個人が持っているなど考えられない!!まだある、カレーと言う香辛料もアスケルの森産だと言うではないか?アスケルの森は高位の魔物の巣窟で、そう簡単に入れる場所ではないはずだ!!」

 それは俺の『エリアサーチ』で魔物を、避けながら移動しているので。
 出会わなければ脅威にはなりません!とは言えないしな。

「ここには来ていませんが、もう1人妻がAランク冒険者なので」
「Aランクの冒険者?それから今さらだが、そちらの女性はどなたかな?」
「はい、旦那様。エリアス様の奥様のアリッサ様とノエル様です」
 アルマンさんがドゥメルグ公爵に説明をしてくれる。

「では彼女がエージェントか」

「ご挨拶が遅くなりました。アレン領冒険者ギルド所属のアリッサです」
 エージェントと聞いてノエルさんが驚いている。

「君は自分がしたことを分かっているのかい?報告義務があったはずだ」
「はい、わかっております」

 ん?何の話だ。

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 読んで頂いてありがとうございます。
 物語はまったり、のんびりと進みます。
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