完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

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第5章 事業展開

第96話 閑話 マダムキラー

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 私の名はタニア、グランディ伯爵の妻。
 今年で43歳になるわ。
 
 アバンス商会のオルエッタさんとは旧知の仲だ。
 そんなある日、夢のようなところがあるから一緒に行きませんか、と誘われた。
 聞いてみるとキャシー子爵夫人も誘っていると言う。

 伯爵夫人といっても、自由になるお金はそんなにもない。
 貴族と言っても所詮は地方の役職。
 ましてキャシー子爵夫人などは、伯爵の副官と言う地位でしかない。

 立場を超えてキャシー子爵夫人と、オルエッタさんとは仲が良かった。
 断るはずがない。

 約束した日、アバンス商会にみんなで集まり目的地に向かう。
 なんでもオルエッタさんのご主人が、とても敬愛している方のお屋敷とか。
 素敵な設備があり遊びに行けば『綿』という、まだ一般に市販していない柔らかい生地の物を頂けるという。
 それが欲しくて伺う訳ではないけど、代り映えの無い退屈な日々。
 たまにはいいかな、と思った。

 目的地は繁華街の奥にある屋敷だと言う。
 馬車3台で道を進んで行く。

 すると突然、景色が変わる。
 3m以上はありそうな、高い塀が突然連なる。
 
 大きな門の前で、一番先頭のオルエッタさんの馬車が止まる。
 こんな大きなお屋敷があるなんて、聞いたことが無い。
 どこかの大貴族のお屋敷??
 それに門番もいないなんて。
 オルエッタさんの使用人がドアノッカーを叩く。
 すると若い少年の様な青年が扉を開けた。
 使用人かしら?

 大きな扉が開き馬車が門の中に入る。
 すると見たことも無いような作りの3階建ての建物が目の前にそびえる。

 オルエッタさんが馬車から降りる。
 続いてキャシー子爵夫人と、私も降りた。

 このお屋敷は、どうなっているのだろう?
 1階から3階までの各部屋には、ガラス窓になっている。
 こんな豪華な屋敷は見たことが無い。
 王族ならこんなお屋敷に住めるのだろうか?
 
 オルエッタさんとキャシー子爵夫人をみると、呆然とした顔をしている。
 きっと私と同じなのだろう。

 すると先ほど扉を開けた青年が挨拶をする。
 か、彼がこの屋敷の主人のエリアス様?!
 思っていたより若く可愛い。
 そしてオルエッタさんに言われたことを思い出す。
 エリアス様の件は、あまり詮索しないほうがいいと。
 国の保護下にある、最重要人物の可能性があると言うことだった。

 最重要人物て、なに?
 
 彼はすでに成人しているらしく、奥様2人を紹介してくれた。
 そして1人は獣人だった。
 キャシー子爵夫人が肋骨に嫌な顔をした。
 それを私がたしなめた。
 招かれておいて、それはないだろうと。

 どうやら建物は本館と、別館があり私達は別館に向っているようだ。
 オルエッタさんは、本館ではないことを残念がっていた。

 設備の説明をされたけど、聞いたことが無い名前ばかりだった。
 そして向かったのは1階のお風呂。
 私は今まで木桶を使った温浴しかしたことがない。
 他の人達もきっとそうだろう。

 ここには大浴槽があって、みんなで入浴すると言う。
 いくら親しいからと言って、裸になるのは抵抗があった。

 お風呂に入るには手ぬぐい、タオル、バスローブというのが必要となり、入ればそれがもらえると言う。
 するとオルエッタさんの目の色が変わった。
 オルエッタさんの紡績店で、今度扱う綿と言う生地でできている物らしい。

 触ってみると素晴らしい触り心地の良さ。
 こんな柔らかい生地は、今まで見たことが無い。
 オルエッタさんが言うには、この綿と言う素材はとても貴重で、市場にはまだ出回っていないと。

 そして販売価格を聞いて驚いた。
 バスローブだけでも、物凄い金額になる。
 手ぬぐい、タオル、バスローブ3点なら、我が家の月の経費の何ヵ月もの金額だ。
 それが入浴すれば、頂けると言う。
 
 突然、キャシー子爵夫人が、脱ぐと言い始めた。
 その言い方は違うと思ったけど、私の口から出たのは私もです、だった。
 オルエッタさんも、私も負けてはいられません、と言い始める。

 いったいどうしたのだろう?
 エリアス様は幼く見えるが、結婚しているなら15歳にはなっているだろう。
 この国では成人の15歳で結婚をすることもある。
 貴族なら12~13歳くらいから、許嫁が居ることも多い。
 そして30歳の時には、子供は12~15歳くらいが普通だ。
 43歳になった私には、10歳と8歳の孫がいる。

 それがなぜかエリアス様に見つめられたい。
 気を引きたいと言う、気持ちに駆られる。

 他の2人も同じなのでしょう。
 オルエッタさんやキャシー子爵夫人の、エリアス様の気を引きたいという行為が過熱していく。
 普段なら絶対に言わない様な事を言い始める。
 私も我慢するのがやっとだった。

 この衝動はなんなのだろう?
 孫にも近い年齢の少年なのに。

 そしてお風呂に入った。
 信じられなかった。
 こんなに大量の水が、ましてそれがお湯なんて…。

 流れるプールと言うのが凄かった。
 高いところからお湯と一緒に大浴場に滑り落ちていく。
 
 日々の飲み水でさえ、井戸水で汲みに行くのが大変だと言うのに。
 こんな贅沢が出来るなんて。
 
 このお屋敷は私の知らない物ばかりだわ。
 シャンプーとボディソープ。
 とても良い匂いがして綺麗になる。
 シャンプーには殺菌効果、髪の保湿、浸透力の為に、あのハチミツが使われているとか?!
 そんな馬鹿な…。


 それから紅茶や緑茶、ウーロン茶という初めて飲むお茶が美味しかった。
 飲み比べてみてわかったわ。
 水がこんなに美味しいなんて。

 そしてシャワートイレや魔道具の照明器具。
 シャワートイレは、あうっ!と言う新しい喜びの発見。

 水道という蛇口を捻ると、お湯や水が豊富にでる。
 
 ここは夢の世界。
 こんな屋敷に住んでいるエリアス様のご実家はいったい?

 そして帰り際に奥様のアリッサさんに相談することにした。
 アリッサさんはキリッとしているけど、『奥様』と言った途端ポンコツになる。
 エリアス様の『奥様』と言われるのが、それほど嬉しいのね。
 恋愛結婚をしていない私には、とても理解できない悦びだわ。
 羨ましい。

 買えるかどうかわからないけど、欲しいものを伝えたわ。
 するとアバンス商会に、卸してくれると言う。
 私とキャシー子爵夫人は、とても喜んだわ。
 卸してもらえるオルエッタさんもね。

 エリアス様は商会を立上げたばかり。
 でもそれほど売ろうと言う気が無いという。
 なぜかと聞くとすでに調味料や家具製造などで、十分に暮らしていけると。

 だからアリッサさん、オルガさん、それにエリアス様のお顔が穏やかなのね。
 その歳ですでに生活の心配が要らないなんて信じられない。
 私に年頃の娘が居たらエリアス様に嫁がせるわ。
 だって優しそうだし、お金に困らない。
 奥様も飾らない人達だから、きっとエリアス様を狙う人が多いと思うわ。

 でもある意味、エリアス様より奥様方に認められないと駄目かもしれないわね。

 魔道具などの贅沢品は高く売り、取れるところからお金は取る。
 調味料などの庶民相手の物は、安く売りみんなが豊かになればそれで良いと言う。
 なんという考え方かしら。

 金持ちになればなるほど、自分が良ければ良いと言う人が多い。
 でも慈悲の心がある人は少ない。

 自分だけが良くなるのではなく、みんなで良くなればいいという考え方。
 素晴らしい。

 これだけのもてなしを受け、無料と言う訳にはいかない。
 キャシー子爵夫人とオルエッタさんと相談し、10万円を置いて行くことにした。
 するとアリッサさんは『そんなお気遣いは』と言われてしまった。
 押し問答をしていると結局、私達の分だけ払い侍女達の分は不要と言う。

 信じられないようなお風呂や娯楽施設。
 ハチミツや砂糖を使った高価なお菓子。
 手ぬぐい、タオルと、バスローブとジャージのお土産。
 これだけでも10万円なんて安すぎる。
 申し訳ない様な金額だわ。

 それなら私達は彼らを陰ながら応援していきましょう。
 この場所を宣伝しお友達を連れて参りましょう。
 そうすれば彼らの売上に繋がるでしょう。

 それにエリアス様は、母性本能をくすぐる青年なのだわ。
 身内なら可愛いと溺愛したくなる青年。
 でも他人だからそれができないから気を引きたくなる。


 エリアス様と関わり合う中年の女性は、ときめきと憤りを感じるのでしょう。
 そして思う、もっとあなたを知りたい、というこの気持ちに気づきたくないと。
 
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 読んで頂いてありがとうございます。
 物語はまったり、のんびりと進みます。
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