74 / 254
第4章 王都へ
第74話 旅の空
しおりを挟む
俺達は夜が明けたばかりの道を歩いている。
それにしても暗いうちに起こされるとは。
「アリッサさん、出発が早いですよ」
「仕方ないでしょう?エリアス君のことだからまた、道路整備をしながら行くと思ったのよ」
「そうした方が魔物も近寄ってこないし、歩きやすいから帰る時も楽でしょう?」
「それはそうだけど。ゆっくり寝てたら私達より先に王都に向う商人達が居たら、後から物凄い音が追いかけてきたら驚くでしょう?」
「そう思い今は整備する空間をストレージで包んで、音が出ない様にしてますから」
「まさかそんなことが出来るなんて、思わないでしょう」
「さすがにあの物凄い音をさせながら、進んで行くのは不味いと思いまして」
「あら、エリアス君でも、そんなことを考えることがあるのね?」
「どういう意味ですか?」
「冗談よ、冗談」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私はアバンス商会のアイザック。
馬車の前ではエリアス様とアリッサ様が、仲良さそうに話している声が聞こえる。
しかしエリアス様は、不思議な青年だ。
昨晩、ログハウスのリビングでみんなで雑魚寝をした。
濃厚クリームシチューの特許を商人ギルドに申請すれば、それだけで使用料が入ることを話した。
すると答えは、そうなんですか。
それだけだった。
美味しい食べ物があれば人は工夫して、更に美味しいものを作ろうとします。
その食事に使用料という、制限を付けてしまうと世の中に普及しません。
美味しい物を食べたいので、料理に関しては無償でも良いと思っています。
そして消費が進めは雇用促進に繋がり、お金が動き経済が回りますから、と。
驚いた。
なぜそんなことを知っているのだろう?
経済を回すなどと言う考えは、高等教育を受けた貴族の考え方だ。
それを伺うとエリアス様はただ、微笑むだけだった。
そして料理や調理方法は、まだたくさんあると言っていた。
それを聞いたアリッサ様から、諫められていた。
無償で教えてもそれを悪用して、特許を取られたりすることもあるから。
僅かな額でも良いから、特許の使用料を取るように言われていた。
しかもこの道はどうだ?
私は馬車の前の窓から前方を見ている。
左右の木々や地面がひしゃげたと思うと、一瞬で道が広がり整備されていく。
マジック・バッグで、こんなことができる訳がない。
これはもう異質な魔法だ。
そしてそこには触れてはいけない。
当初は魔道具職人としての、彼に国が保護しているのかと思っていた。
だかそれは違うということがわかった。
『道路整備』というこの魔法は、完全に破壊魔法だからだ。
この魔法にかかったら、どうなるのか予想もつかない。
そして考えたくもないくらい恐ろしい。
だから彼に国はこれほどまでのことをするのか?
広い敷地と公爵以上の宮殿のような屋敷を与える。
しかし彼をこの国に縛り付けるには弱い。
屋敷だけでは彼は満足しないかもしれない。
次に国は権力を与えるだろう。
爵位を与え国王の縁戚関係の女性をあてがい、この国に根付いてもらう。
もし彼が他国に行ったら、その脅威に怯えることになる。
そんなことは絶海に避けようと、国は色んな手を使うだろう。
だがエリアス様は、何かをどん欲に欲するようには見えない。
まるで今が現実ではない様な目をしている時がある。
どうしてだろうか?
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
同じペースで1本道を進んでいれば、前を行くグループに遭遇することは無い。
だがその歩みを前が止めれば、後続は出会う事になる。
こんな風に…。
前方には高貴な人を載せるような馬車が3台停まっていた。
中央の馬車が右側に横転したようだ。
周りには護衛の騎士が14人くらいとメイドさん達。
貴族の思われる30歳前後の男性と女性。
そして10~12歳くらいの少女が立っている。
護衛の騎士達が力を合わせ、それを起こしはじめた。
そして馬車が起こされる。
これでやっと通れる。
そう思った時だった。
起こしたはずの馬車が再び横に倒れた。
遠目で分からないが、どうやら車輪を止める車軸が折れてしまったらしい。
こちらも馬車があるため、2台同時に通れる広さがない。
俺達も前の馬車が行かないと進めない。
「アリッサさん、どうしますか?」
「そうね、横を通り抜けるには道幅が狭いわね」
「『道路整備』で横道を広げて通り抜けますか?」
「それだと、さすがに驚かれるわ。整備は他に目撃者が居ないから許しているのに」
「なら消しますか、姉御!!」
「誰が姉御よ!!」
このまま道のど真ん中に、馬車を置かれても後の人が困るだろう。
それが分かったのか、騎士の人達で馬車を道の横に寄せようとしている。
でも思う様に行かないらしい。
仕方がない。
俺は貴族の馬車の方に向って歩いた。
「エリアス君、どうしたの」
アリッサさんがそう言いながら、俺の後を付いてくる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
それにしても暗いうちに起こされるとは。
「アリッサさん、出発が早いですよ」
「仕方ないでしょう?エリアス君のことだからまた、道路整備をしながら行くと思ったのよ」
「そうした方が魔物も近寄ってこないし、歩きやすいから帰る時も楽でしょう?」
「それはそうだけど。ゆっくり寝てたら私達より先に王都に向う商人達が居たら、後から物凄い音が追いかけてきたら驚くでしょう?」
「そう思い今は整備する空間をストレージで包んで、音が出ない様にしてますから」
「まさかそんなことが出来るなんて、思わないでしょう」
「さすがにあの物凄い音をさせながら、進んで行くのは不味いと思いまして」
「あら、エリアス君でも、そんなことを考えることがあるのね?」
「どういう意味ですか?」
「冗談よ、冗談」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私はアバンス商会のアイザック。
馬車の前ではエリアス様とアリッサ様が、仲良さそうに話している声が聞こえる。
しかしエリアス様は、不思議な青年だ。
昨晩、ログハウスのリビングでみんなで雑魚寝をした。
濃厚クリームシチューの特許を商人ギルドに申請すれば、それだけで使用料が入ることを話した。
すると答えは、そうなんですか。
それだけだった。
美味しい食べ物があれば人は工夫して、更に美味しいものを作ろうとします。
その食事に使用料という、制限を付けてしまうと世の中に普及しません。
美味しい物を食べたいので、料理に関しては無償でも良いと思っています。
そして消費が進めは雇用促進に繋がり、お金が動き経済が回りますから、と。
驚いた。
なぜそんなことを知っているのだろう?
経済を回すなどと言う考えは、高等教育を受けた貴族の考え方だ。
それを伺うとエリアス様はただ、微笑むだけだった。
そして料理や調理方法は、まだたくさんあると言っていた。
それを聞いたアリッサ様から、諫められていた。
無償で教えてもそれを悪用して、特許を取られたりすることもあるから。
僅かな額でも良いから、特許の使用料を取るように言われていた。
しかもこの道はどうだ?
私は馬車の前の窓から前方を見ている。
左右の木々や地面がひしゃげたと思うと、一瞬で道が広がり整備されていく。
マジック・バッグで、こんなことができる訳がない。
これはもう異質な魔法だ。
そしてそこには触れてはいけない。
当初は魔道具職人としての、彼に国が保護しているのかと思っていた。
だかそれは違うということがわかった。
『道路整備』というこの魔法は、完全に破壊魔法だからだ。
この魔法にかかったら、どうなるのか予想もつかない。
そして考えたくもないくらい恐ろしい。
だから彼に国はこれほどまでのことをするのか?
広い敷地と公爵以上の宮殿のような屋敷を与える。
しかし彼をこの国に縛り付けるには弱い。
屋敷だけでは彼は満足しないかもしれない。
次に国は権力を与えるだろう。
爵位を与え国王の縁戚関係の女性をあてがい、この国に根付いてもらう。
もし彼が他国に行ったら、その脅威に怯えることになる。
そんなことは絶海に避けようと、国は色んな手を使うだろう。
だがエリアス様は、何かをどん欲に欲するようには見えない。
まるで今が現実ではない様な目をしている時がある。
どうしてだろうか?
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
同じペースで1本道を進んでいれば、前を行くグループに遭遇することは無い。
だがその歩みを前が止めれば、後続は出会う事になる。
こんな風に…。
前方には高貴な人を載せるような馬車が3台停まっていた。
中央の馬車が右側に横転したようだ。
周りには護衛の騎士が14人くらいとメイドさん達。
貴族の思われる30歳前後の男性と女性。
そして10~12歳くらいの少女が立っている。
護衛の騎士達が力を合わせ、それを起こしはじめた。
そして馬車が起こされる。
これでやっと通れる。
そう思った時だった。
起こしたはずの馬車が再び横に倒れた。
遠目で分からないが、どうやら車輪を止める車軸が折れてしまったらしい。
こちらも馬車があるため、2台同時に通れる広さがない。
俺達も前の馬車が行かないと進めない。
「アリッサさん、どうしますか?」
「そうね、横を通り抜けるには道幅が狭いわね」
「『道路整備』で横道を広げて通り抜けますか?」
「それだと、さすがに驚かれるわ。整備は他に目撃者が居ないから許しているのに」
「なら消しますか、姉御!!」
「誰が姉御よ!!」
このまま道のど真ん中に、馬車を置かれても後の人が困るだろう。
それが分かったのか、騎士の人達で馬車を道の横に寄せようとしている。
でも思う様に行かないらしい。
仕方がない。
俺は貴族の馬車の方に向って歩いた。
「エリアス君、どうしたの」
アリッサさんがそう言いながら、俺の後を付いてくる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
物語はまったり、のんびりと進みます。
15
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる