【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

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第3部 聖女降臨

第53話 戦いの後処理

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「それからそこにいる神官とメイドはなんだ?」
「はい神官は証言をして頂く為です。あなた達は見習神官ですか?」

 6人居る神官の内、年長者の1人がそれに答える。
「はい、間違いございません」

「どの程度の魔力ですか?」
Holy Arrowホーリー アローが2発撃てれば良い方でしょう」
「では、他の方はそれよりも…」
「はい、1発が限界の者もおります」

「では討伐参加については、なんと言われましたか?」
「はい、ロターリ司祭様からは難易度の低い魔物討伐だから、ただ着いて行けば良いと。騎士団が対応してくれるから、神官は名目上の参加だと聞いておりました」

「よかったわね、生きて帰れて」
「これも聖女…、いいえビッチェ王女様のおかげです。あの時助けて頂かなければ、ここにはおりませんでした」

 そう、彼らは何度も死にかけた人達だ。
 聖魔法1~2回しか打てない神官が無事なわけがない。
 その都度、ビッチェは曲がった手足や破裂した内臓を治して復活させていた。

 石猿が打撃系で良かった。
 これが切り刻むタイプの敵なら回復は無理だったと思う。
 そうビッチェは思っていた。
 実際はどちらも普通は無理なのだが。


「ではその2人のメイドについて話してくれ」
「はい、今回の石猿のボスを倒したのは彼女達です」
「な、なんだと?!本当か」
「本当です。ねえあなた達?」
 私は後ろを振り向き神官達や騎士団長を見た。

「えぇ、本当です…」
「彼女達が光ったかと思うと…」
「2人が1人になって…」
「空中を鳥みたいに飛び回って…」
「あちゃ、ちゃ、て言いながら、ボス猿を素手で倒したんです」

「な、なにを言っているんだ、彼らは?!」
「本当のことです、陛下」
「どういうことだ?」
「では素材の買取をお願いしたいので、その時に確認いただけませんか?」
「わ、わかった」

「陛下、なりません!!」
 隣に立っていたガストン宰相が、口を挟む。
「なぜだ、ガストン?」
「素材の買取は解体場になります。陛下がそのようなところに行かれては…」
「ガストン、この城内で私が行けないところがあるのか」
「いえ、そんなことはございませんが」
「それならいいではないか」
「分かりました、陛下がそうおっしゃるなら」
「だがビッチェ王女よ、その素材はどこにあるのだ?」
「ここです!」
 私は首からかけているポーチを叩いて見せた。
 
「ほう、マジック・バッグか、いったいどこで手に入れたのだ?」
「秘密です」
 そう私は言い、ごまかした。
  話はまとまり私達は、神官達や騎士団長と別れ謁見の間を出た。
 

 そして廊下を移動していく。
 ガストン宰相、陛下、私とリンリン、ランラン。
 その前後を警備の騎士4人が守りながら歩く。

 王様て、面倒だな。
 城内を歩くにも警備が必要だなんて。
 だからお父様は、こんな面倒な立場になりたくないのかしら?
 でもならないと、死んじゃうんだよ。
 私達…。


 しばらく歩くと大きな扉がある部屋の前に着いた。
 騎士がドアを開け、私達は中に入る。
 ここが解体場か?
 なんだか生臭い匂いがする。


「これはガストン宰相様、それにクリストフ陛下まで、どうしてこんなところに…」
 中に入るとそこには50代のちょっと頭の薄くなった男性が居た。
 
「オリゴ、解体を頼む」
「解体でしょうか?ガストン宰相様」
「あぁ、そうだ」
「では素材はどこに?」
「ここです!」
 私は1歩前に出てポーチから出す振りをして、ストレージからボス猿を出した。

 ストレージはミリアちゃんの能力だ。
 でもミリアちゃんの物に手を出さなければ、私も使えるようにしてもらっていた。

 グチャ!!

「うっ!」
「これは酷い!!」

 確かに酷かった。
 これを人がやったのかと、思えるくらいに。
 ボス猿の胸から上は吹き飛び、頭すらなくなっていた。
 そして胸からは拳大の大きな魔石が見えている。

「これはいったいどうやって?切ったと言うより、中から爆発したような…」
 解体場のオリゴさんが何やら言っている。
 ストレージにも驚いたようだが、ボス猿には更に驚いているようだった。

「これは本当にそこにいる、双子の娘がやったことなのかね?」
「ええ、そうです」
 ガストン宰相が聞いてくる。
 それはそうでしょうね。
 私だってこの目で見なければ、信じられないもの。

「全部出してもいいでしょうか?」
「全部?」
「えぇ、騎士団の人達が倒した分も、持っていますから」
「そうなのか、では出しておくれ。いいだろうオリゴ」
「勿論です、空いているところに出してください」

 私は言われた通りに、空いているところに石猿を出していった。
 10匹、20匹、30匹、40匹、52匹。
 私が石猿を出していくと陛下やガストン宰相、オリゴさんの顔が驚きに変って行く。

「これはどうしたことだ、ビッチェ王女」
「陛下、石猿52匹です」
「見ればわかる、どうしたのだと言っておるのだ?」
 ?何を言いたいのだろう?

「みんなで倒したものを持ってきたのです」
「なぜそんなに入るのだ?!」
「は?」
「普通、マジック・バッグは1m四方入るのが一般的だ。それでも馬車1台入れば国宝級だぞ?それをどうやって手に入れたのだね?!」
「それは、我が家の家宝です」
「そんなことがあるか!おまえは私の孫だ。そんなマジック・バッグを与えた覚えはない!!」

 だ、駄目だったか?
 やっぱり身内には、このネタは駄目ね。
 あれ?
 なんだか考え方が、ミリアちゃんみたいになってきている?

 ビッチェは知らなかった。
 使徒になると言う事は、あるじの性格に感化されるということを。
 
「これは聖女の力です」
「聖女の?!」
「はい陛下、そしてメイドの2人は私の使徒になりました」
「使徒だと?」
「はい、聖女に使える者です」

「ではビッチェ王女は聖女となり、メイドの2人は使徒になったと言う事か」
「そうです!」
「その力を手に入れ、これから王女はどうしたいのだ」
「できれば別のお部屋でお話がしたいのですが陛下」
「わ、わかった。私の書斎に来なさい」
「はい、ありがとうございます。それから石猿の素材を売ったお金は、今回討伐の参加者全員に均等に分け与えてください」
「な、なんと全額か?!」

「はいそうです、ガストン宰相」
「どれほどの金額になるのか、分かっているのかね?」
「はい、(わかりません。王女ですから相場なんて)」

「魔石だけでも大きく、高額になる。それに石猿の毛は軽くて丈夫だ。だから編み込めば軽くて丈夫な防具になる。そして皮膚も同じで防具や盾の素材になるんだぞ」

「そうですか、でもお金より団員や神官の方に頑張った分、お金で返してあげてください」

 そして陛下の書斎に私達は向かった。
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