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第3部 聖女降臨

第51話 浄化

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「「 はあ、はあ、はあ、」」
 もう、どのくらい倒しただろう。
 疲労が限界に来ている。

 私は聖闘士メイド、リリーズ。
 こんなことで根を上げるなんて。

 後で歓声が上がる。
 振り返ると騎士団が盛り返し、石猿と戦い善戦している。
 もうこれで大丈夫だわ。
 私の役目は終わった。

 立っているのも辛くなり、座り込んでしまった。

 これでビッチェ王女様を、お守りすることが出来たわ。



 するとその時だった!!

〈〈〈〈〈 ブオ~~~ン!! 〉〉〉〉〉

 物凄い雄たけびが聞こえた。
 見ると他の茶色の石猿とは違う、一際大きな黒い毛の石猿がいる。
 ボス猿ね!
 手下をやられて怒っているのね。

 それに騎士団員が向かって行く!!
 あっと言う間に吹き飛ばされ、手足が変な方向に曲がっている。
 
 そこにビッチェ王女様が現れ、1人1人を回復魔法で治していく。

 回復した団員は涙を流し、大声を上げながらボス猿に向かって行く。
 感謝に絶えないのね。
 そしてまた吹き飛ばされ…。
 そしてビッチェ王女様が現れ、1人1人を回復魔法で…。
 首があんな方向に曲がって…。

 団員達は感動のあまり、涙を流しながらボス猿に向かって行く!!
 あぁ、なんと崇高な…。



 私もこうしてはいられない。
 騎士団の心意気は、この目で確かに見たわ。
 負けてはいられない。
 私はビッチェ王女様の使徒、聖闘士メイド双子のリリーズだから!!


 剣を支えに立ちあがり、私は前に進む。
 ボス猿が私に気づき、威嚇をする!!

 負けない!!

 私は剣を横に振る!!
 ボス猿は丸太の様な腕を振るってくる。

 私はそれを避け、すれ違いざまに脇を切る!!
〈〈〈〈〈 ズァッ!! 〉〉〉〉〉
 皮膚が厚いなら、薄いところを切れば良い。

 そして思った。
 皮膚が厚くても人間と構造が同じなら…。

 その時、手の力が抜け剣を取り落としてしまった。


 でもまだ戦える。
 この拳があるじゃない。
 私は最後の力を振り絞り殴りかかった。
 
 こめかみ!!
 目!!
 鼻!!
 耳!!
 喉!!
 鳩尾!!

 私達は夢中で急所に殴り掛かった!!

 バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!
   バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!
    バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!
  バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!

 ひたすら叩く、殴る蹴り掛かる。
 これが今、私達に出来る精いっぱいの攻撃だった。

 すると攻撃が早くなり威力が増し、目に見えないくらいの高速になっていく。

「「あちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃっ!!」」
「「あた、た、た、た、た、た、た、た、たっ、あちゃーっ!!」」


 そして私達は攻撃の手を止めた。

「「おまえはもう、……。」」

 つい、無意識になにかの言葉が出てきそうになった。
 すると突然、ボス猿の体が変形して爆発したのだった。


 


「はあ、はあ、はあ、」
 いつの間にか私達2人はmerging合併が解け、2人に戻り横になっていた。
 もう起き上がることもできない。

「大丈夫?2人供」
 横たわり顔を上げるとそこには、ビッチェ王女様が居た。
 私達は慌てて起き上がろうとした。

「そのままで良いから。2人共よくやったわ。あなた達のおかげで助かったわ」
 そして私達2人の髪の毛を撫でてくださった。
 とても幸せな時間だった。

 しばらく休み私達は立ち上がる。
 そして森の奥に進んで行く。




「ねえ、ミリアちゃん。どうして初級のアウルの森に、こんな強い魔物が居るの」
 私は倒した石猿をミリアちゃんの、ストレージに収納しながら聞いた。

『う~ん、ビッチェそれは前に恐竜の世界の話をしたわよね』
「えぇ、背中合わせにたくさんの世界があって、恐竜の世界は弱い者が強い者の犠牲になる、実力の違いがそのまま結果にでる弱肉強食の世界だったわよね」


『その通りよ。だから森も同じなのでは』
「どういうこと?」
『森から次元の綻びができて、瘴気しょうきが集まり魔物になる。その魔物も戦い弱いものは淘汰され、強いものが生き残る。だから強い魔物が残っているのよ』
「じゃあ、次元の綻びができて時間が経過した森は、強い上位の魔物が多いことになるわ」

『そうなるわね』
「それなら、これから討伐が大変になるのでは?」
『ならないわよ、だって今度は森ごと吹っ飛ばせばいいんだから』
「そんな、大雑把な!!」
『私の魔法ならある程度のところまで近づけば、綻びの場所がわかるから。塞いで行けば良いのよ』
「そうするしかないわね。今回のことで騎士団は足手まといにしか、ならないことがわかったわ」

『それにリンリン、ランランが居れば十分よ』
「あの2人も使徒になったの?」
『えぇ、正確にはあなたのだけどね』
「どういうこと?」
『あの2人は、あなたを信仰しているのよ。だから私ではなく、あなたの使徒なの』
「どう違うのかしら?」
『ビッチェは私から、能力の恩恵がある。でもあの2人は、あなたからもらうから、あなた以下の能力しか身に付かない』
「そ、そんな」

『でもそれでも十分よ。だってボス猿を倒せるくらいだもの。人間を辞めているわ』
「そうね、それだけでも十分よね」

『あぁ、待って、見つかったわよ』
「見つかったて何が?」
『次元の綻びよ。魔力を周りに飛ばしながら、移動していたの。そして反応が返ってこない場所が綻びがあるところだから。この奥ね!!』
 そう言いながら私達は、更に森の奥に進む。

 その間、魔物に襲われたが弱い魔物ばかりで騎士団員で十分だった。



 そして遂にそれは森の奥に合った。
 空間が裂け、そこから瘴気しょうきが出てきている。

「ビッチェ王女様、これは?」
 リンリンが聞いてくる。


「これが次元の綻びよ。ここから瘴気しょうきが出てきて、魔物になるの」
「ここから瘴気しょうきが…」
「そしてここを塞いでしまえば、もう魔物は現れないわ。見ていて!!」

 私しか見えないミリアちゃんに、目で合図をしてた。
 騎士団員も固唾たたずを呑んでいる。


「我を存かすは万物の理。研磨されし孤高の光、真の覇者となりて大地を照らす!」

〈〈〈〈〈 Vanishバニッシュ 〉〉〉〉〉

 まばゆいばかりの光が辺りを照らす。
 あまりの眩しさに騎士団員達が目を伏せる。
 しばらくして光が収まると、空間の裂け目は無くなっていた。

「遂にビッチェ王女様、成し遂げましたね」
 ランランが嬉しそうに言う。



『後は森の浄化をして終わりね』
 ミリアちゃんがそう言うと、詠唱を始めた。

「二十二の橋梁、六十六の冠帯、今ここに交わる。孤高の光となりて大地を照らせ」

〈〈〈〈〈 Holy purificationホーリー ピュアリフィケイション 〉〉〉〉〉

 詠唱と共にミリアちゃんを中心に、周りに浄化魔法が広がって行く。
 どんよりと垂れこんでいた空気が晴れて行く。
 傍から見たら私を中心に浄化しているように見えただろう。

 晴れ渡る綺麗な空が見えるようになった。
「おぉ、やった~!!」
「凄いぞ!!」
 騎士団員達が口々に叫ぶ。

「聖女様」
 誰かがポツリと言う。
 そして木霊のように波紋が広がぅていく。
  「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」
 「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」
  「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」
    「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」

 誰もが両手を胸の前で組み跪く。 
 生き残った騎士団員42名、神官6人。
 その中には勿論、騎士団長アーガス・リベラと、補佐のコニーもいた。




 この世界で初めて瘴気しょうきの森を浄化した、尊い瞬間に彼らは立ち会ったのだった。
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