【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

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第3部 聖女降臨

第50話 仕返し

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「「 ハァッ!! 」」

 体が軽い。
 これがmerging合併の魔法の効果!!
 私達双子は普段から相手の考えていることが、分かるような気がしていた。
 でも1つになると、こんな風になるなんて。
 まるで失っていた半身を取り戻したみたいだわ。

 1つになった私達は、円陣の外側に向かう。

 キィー!!キィー!!キィー!!
   キィー!!キィー!!キィー!!キィー!!
     キィー!!キィー!!キィー!!キィー!!

 石猿達が私達を見て騒ぎ立てる。
 うるさい猿め!!

 私達は石猿の群れを飛びこえ後ろ側に回った。

 剣を上に構えただ振り下ろす。
 そして下した剣を切り上げる。
 この2つの動きだけ。

 剣もmerging合併の効果なのか、一回り大きくなり白く光っている。
 これは魔法剣。
 魔法の使えない私達でも分かる。
 ビッチェ王女様の使徒だけが持てる、聖魔法を宿した剣。

 こんなことがおこるなんて。

 石猿は力が強く硬い毛に覆われておる。
 だがそれより早く動け、硬い体毛が切れる今なら負けることは無い。




 ほう~!!
 リリーズは凄いわね。
 空中に飛び上りながら、捕まらない様に闘っている。
 魔物は所詮、魔物よ。
 剣の駆け引きなんてないから、それを圧倒できる力があれば良いのよ。

「わ、私はどうしたのかしら?」
『ビッチェ、ようやく気を取り戻したのね』
「ミリアちゃん、私はどうしていたの?」
『あなたは騎士団長アーガスに言われたことに我を忘れて、暴走しそうになっていたのよ』
「そんな、でもあれは?!」
 ビッチェがリリーズを指を指す。

『あれはリンリン、ランランよ』
「リンリン、ランラン?!」
『そうよ、あなたが集めた魔力を使ってmerging合併魔法を使ったの』
merging合併魔法?」
『2人の力を1つにして更に魔力で高める。双子だから出来た魔法よ』
「凄い動きね、信じられないわ」

『だから早く体制を立て直して、援護してやらないとね』
「えっ?!どう言うこと?」
『だってあんな動きが、いつまで出来ると思うのよ』
 見ると一体化したリンリン、ランランは飛び上り空中を舞い、踊るように剣を振るっている。
 確かに人間業ではない。

『まずは騎士団員を回復させてあげないとね』
「わかったわ、ミリアちゃんお願い」
『がってん承知の助!!』
 ミリアちゃんは時々、わからないことを言う。

〈〈〈〈〈Medical examinationメディカル イグザミネイション〉〉〉〉〉

 左肩にいるミリアちゃんの体が眩しく輝き、私を中心に光の輪が辺りに広がる。
 円陣の中心から外側に向かって回復魔法が掛かる。

「おぉ、治った!」
「あれだけの傷が…」
「生きてる、俺は生きているぞ!!」

「みなさん!!聞いてください。魔物はまだ討伐されておりません」
 落胆の声が上がる…。
「みなさんの前を見てください!!あなた達を守るため、聖闘士がまだ戦っているではありませんか?!」

 そこには風のように舞い石猿達に切りかかる、金色の髪を持つ少女がいた。
 しかし疲れが出ているのか、動きが段々と散漫になってきている。
 このままでは…。


「あなた達は名誉ある騎士団員です。誇りを持ちなさい。前を向きなさい。そして戦いなさい!!」

〈〈〈〈〈 Over Allオーバー オール 〉〉〉〉〉
 範囲効果内にいる騎士団員の全ての能力が上昇する。

「おぉ~!!これは」
「力がみなぎる!!」


〈〈〈〈〈 Crusadクルセイド 〉〉〉〉〉
 支援系補助魔法を唱える!!
 士気を高め、戦闘能力を向上させた!!

 
「石猿はもう半分も残っておりません。騎士団なら必ず勝てますから!!」

「魔物は所詮、魔物です。動きは単調です。数人で1頭に当たり倒していきなさい」

「そしてあなた達が死なない限り、首が飛ばない限り、私が何度でも治してさしあげましょう!!」

「私は大容量のマジック・バッグを持っています。倒した魔物は持ち帰り、働きに応じて売った報酬を分け与えましょう!!」

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈 おぉ~~!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 分け与える話をした途端、雄たけびが上がった!!

 そして補助魔法を受け気持ちが高揚したのか、騎士団員達は石猿に数人で固まり向かって行く。


「あなた達はどうするの?」
 私は座り込んでいる、騎士団長アーガスと補佐のコニーを見て行った。

「このまま腐ったまま終わるの?それともここからやり直す?」
「そ、それは…」
 騎士団長アーガスが下を向く。

「昨日は駄目でも、今日から違う自分に生まれ変われるのよ。体は汚れても、心が汚れなければ気高く生きているわ!!」
「でも俺達は…」
 補佐のコニーが卑屈な声を出す。

「大丈夫よ、いつでもやり直せるから。さあ、立ち上がり剣を取りなさい」
 私は2人を促す。

「こんな俺達でもやり直せるでしょうか?」
「もちろんですよ、アーガ騎士団長」
「わ、わかりました。行きます。ここで逃げたらまた同じです」
「俺達が傷ついたら、回復魔法で治して頂けるのですよね?」
「勿論です、コニーさん」
「それなら行きます。行きましょうアーガ騎士団長」
「あぁ、やってやる。俺達は腐ったミカンじゃねえ~!!」

「いくぞ!!」
「「「 おぉ~~!! 」」」

 2人は雄たけびをあげて石猿に向かって行った。
 さすが騎士団長と、補佐を名乗るだけあって2人は強かった。

 
「王女様、お願いします」
「はい、分かりました」
 騎士団員が怪我をする度に、騎士団長アーガスと補佐のコニーが傷つく度に、私は回復魔法で治していく。
 
 何度も、何度も私は治していく…。


「お、王女様。も、もう許してください…」
「駄目よコニーさん。あなた達が傷ついたら、回復魔法で治してあげると約束したでしょう?」


「王女様、お願いです。もう許してください!!」
 騎士団長アーガスも、泣きながら乞う。

「いいえ、あなた達との約束は絶対です。必ず治して差し上げますから」

 そう、腕や足が折れても…。
 内臓が破裂しても、心肺停止でも、たとえ肉片になっても必ず治して戦わせてあげるわ。

 
『こ、こんな仕返しをされるとは、そこまで根に持つのか?ビッチェ王女…』



 俺は名も無い騎士団員の1人だ。
 アーガス騎士団長と補佐のコニーさんは凄い!!
 2人は何度も石猿に立ち向かう。
 そして時には生死の境目を彷徨うほどの怪我を負う。
 しかしその度にビッチェ王女様の、回復魔法で治して頂き石猿に向かって行く。
 治ったのが嬉しいのか、目に大粒の涙を溜めながら何かを叫んでいる!!


 そしてその意味が、団員である俺達にもやっとわかった。
 石猿と戦い傷つき瀕死の怪我をする。
 その度にビッチェ王女様に治して頂き、また戦いに向かう。
 だが瀕死になる寸前の記憶は消えない。
 怪我を治してもらい、立ち上がれば上がるほど瀕死の記憶は増していく。

 だから怪我を、傷を負わないような戦い方を連携して工夫するしかなかった。
 
「いいか、やられるなよ!やられたらまた、あの恐ろしい回復が待っているんだ!」
 アーガス騎士団長を筆頭にして、石猿をどんどん倒していく。

 

 凄いわ!ミリアちゃん見て!
 騎士団が石猿を、どんどん討伐していく。
 驚くべき進歩だわ!!

 死ななければ回復魔法で、何度でも立ち上がれる。
 そして経験を積める。
 やはり実践に勝る経験はない、てことかしら。


 きっとそれは、違う原因だと思うよビッチェ。





 後に鉄壁の騎士団、と呼ばれるチームの誕生であった。
 アーガス騎士団長と補佐のコニーは、給料の大半を貧しい人々に分け与えた。
 善行をすることで何か悪いことを振り払うように。

 そして彼らは連携して魔物を倒すのがとてもうまかった。
 怪我を極端に恐れ、用心に用心を重ねる、そんな騎士団だったとか。
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