【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

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第3部 聖女降臨

第40話 汚れても聖女

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「召喚はね、とても危険な事なの」
「どんなところが?」
「そうでしょう?3年間も掛かって貯めた魔石の魔力という餌に、食いついてくるんだもの弱い訳が無いわ」

「だから召喚するのでは?」
「いいえ、分かってないわね」
「どうして?」

「そんな強い奴を召喚して、魔人や魔王クラスだったらどうするのよ」
「あれは聖女召喚の儀式だったはずよ」
「あれは貯めた魔力を餌にして、強い魔力を持つ者を吊り上げる儀式よ」
「えっ?!」

「さっき言ったけどこの世界は背中合わせに、たくさんの世界があるの。そのどこかの世界に穴をあけて、釣り糸を垂らしているのと同じなの。だから釣り上げた魚が、手に負えるとは限らないのよ」
「それじゃあ…」

「ええ、そうよ。場合によると召喚された奴に、この世界は蹂躙じゅうりんされてたかもね」
「そんな~」

「いったい何を、してもらいたかったのかしら?」
「実は数年前から魔物の数が増えてきて、国を挙げて討伐をしても倒しきれなくて。そのおかげで国土間の流通が途絶え、食料も乏しくなってしまったのです」

「具合的にはどんな感じなの」
瘴気しょうきと呼ばれる黒いものが発生して、辺りが暗くなりそこから魔物が大量発生するらしいのです」
「それは次元のほころびね」
「次元の綻び?」

「えぇ、そうよ。この世界は比較的、魔素に満ちているわ。あなたにも魔素がある。魔法が使える人もいるんじゃないの?」
「確かに私も僅かですが、簡単な魔法なら使えます」
「そうね。例えるならこの世界が丸なら、周りを魔素が包んでいるような感じね」

「魔素が包む?」
「少しずつ魔素がこの世界に浸透してきて、それをこの世界の人達が吸っている。だから魔法が使える人が居る。そしてそれが貯まると形を作り、魔石という核になり魔物になるのよ」
「どう言うこと」

「今までも魔物は居たでしょう?」
「えぇ、居たわ。でもそれほど数もなく、森の奥でも行かない限りは強い魔物はいなかったわ」
「この世界のどこかに綻びが出来て、そこから魔素が必要以上に入ってくるようになったのよ。だから魔物の数が増えたのよ」

「ではその綻びは塞げるの?」
「う~ん。見てみないと分からないけど、多分できるわ」
「えっ、できるのミリアちゃん!!」

「ええ、でも時間が掛かるわ。この世界が、どれくらい広いのかも分からないし」
「全部でなくても良いわ。せめて私の国だけでも、お願い」
「それは出来ないわ。私はこれでも神様なのよ。特定の人だけに加担できないのよ。やるならこの世界全域ね」

「そ、そんな~」
「でも、その割にはビッチェはあの時、必死だったわね」
「あの時?」

「そう、召喚の時よ。

『お願い成功して!
 もう無理、誰でもいいから助けて。
 同じ思いはもう嫌。
 その為だったら私は…。』

 て、言ってたでしょ」

「や、やめてよ。口を尖らせて、私のマネして言わないで」
「ギャは( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。似てるでしょう」

「実はね、ミリアちゃん。私の父はこの国の王子なの。そして腹違いの王子が2人いて、次の王の座を狙っているのよ」
「政権争い、てやつね」

「そう、そして父以外の2人の王子には才能があり、父は凡人だったの。そんな父の後ろ盾になってくれる人は居なかったわ。だから次の王になるために、実績が欲しかったのよ」
「王になれないなら、政権争いから抜けてどこかの田舎に暮らせば」

「それができないのよ。今の王が生きている内は良いわ。でも亡くなったら愁いを断つために、残された王家の血を引く者は殺されるのが今までなのよ」
「そう、それなら私と一緒に世界を回るしかないわね。この国から浄化して次元の綻びを塞げば良いわ。実績を作れば、良いんでしょう?」

「でも、それをやっても政権を取れなかったら」
「それは仕方ないでしょう、聖女召喚してたとしても、駄目だったら同じでしょう」
「わかったわ。ミリアちゃん、私に力を貸してくれる?」

「もちろんよ、ビッチェ。それから私は姿を消したままにするから。魔法を使う時は、あなたがやっているように見せてね」
「それじゃあ、練習しないと」
「そうね、練習しようか?あははは」


「しかし、最初の召喚が私で良かったわね」
「最初?」
「違うのかしら?」
「実は3年程前に最初の召喚が成功して、聖女と巻き込まれた男が1人居たのよ」

「男が巻き込まれた?」
「聖女と一緒に召喚されたの」
「そんなことも、あるんだね。その2人はどうしたの」
「聖魔法の練習を兼ねて魔物討伐に行った森で、ゴブリンが大量発生して2人共殺されてしまったわ。騎士団も壊滅状態だったけど」
「それはおかしいわね」

「どうして?」
「召喚に呼ばれる、てことはそれ以上の魔力を持っていないと呼ばれないのよ。だからそんな弱い奴なんて、普通は来ないはずだけど」
「でも聖女は弱そうだったし、男は能力が無い凡人だったわ」
「おかしいわね、まあ2人に分散されてたのかな」
「でも、もう居ない人達よ」

「あぁ、それからビッチェ。私と約束してくれる」
「約束?」
「そう、世界の綻びを塞ぐ旅をする、てことよ」

「それもいいかもね。政権が安定して、お父様達の無事を確認できれば。狭いこの国の外を見てみたいわ」
「なら、約束よ。誓約を交わしましょう」
「誓約?」

「えぇ、けして破られることのない約束よ。覚悟はある?」
「良いわよ。でもどうするの」
「まず、胸を見せて」
「胸?どうするの」
「そこに誓約印を押すから」

 私は言われたままに、胸の紐をはだけ見せた。

「行くわよ~」
 ミリアちゃんは、私の胸の間に手を置いた。
 するとまばゆい光が辺りを照らし、収まるとミリアちゃんは手を放した。
 そこには3cmくらいの円があり、中には何かの紋章が掛かれた刻印があった。

「こ、これは、」
「私の加護の刻印よ。これであなたは簡単な聖魔法が使え、全体的に能力も上がったはずよ」
「ほんとに?!」

「えぇ、世界を回るのに時間が掛かるから、不老不死にして私の使徒にしてあげるわ」
「使徒?」

「私の眷属と言う事。そしてあなたは今から、私の使徒だから聖女みたいなものね」

「聖女?でも私はもう純潔ではないわ」

「純潔は気持ちの方よ。気持ちが汚れて居なければ良いの。だからビッチェには気持ちだけでも、純潔になってもらわないとね。肉体の方なんて、ガバガバでも大丈夫だから。きゃははははは!」
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