【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

文字の大きさ
上 下
39 / 55
第3部 聖女降臨

第38話 召喚再び

しおりを挟む
 ジリヤ国 西暦188年5月10日

 私はジリヤ国第一王妃グリニスの息子、第一王子イクセルの娘。
 ビッチェ・ディ・サバイア。

 やっ、やったわ。
 ついに待ちに待った、この日が来たのよ。

 あれから3年が経った。
 私はオバダリア侯爵のおもちゃになり、ロターリ司祭に辱めを受ける日々。

 それも、もう今日で終わりだわ。
 やっと異世界から聖女を、召喚できるほど魔力も貯まった。

 でも、もし聖女召喚に失敗したら次はもうない…。

 王宮の中の派閥連中が聖女召喚に、異を唱えるようになったからだ。
 聖女召喚をするために、シャルエル教に支払う金額が馬鹿にならない。

 前回、召喚した聖女は討伐遠征で死んでしまった。
 私達親子をよく思わない派閥は、実は召喚に失敗し覇権を握りたいから嘘をついていた、と陰口を叩く。
 そして隣国中の笑いものになってしまったのも事実。
 王宮内での立場が更に悪くなってしまった。

 失敗しても次の予算はもうもらえない。
 それに私は18歳になった。

 大人びてきた私にはもう、ロターリ司祭は興味が無いようだった。

 だから次はない。
 でも前回は成功したもの。
 今回もきっと大丈夫よ。
 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 そして召還の儀式が始まる。
 神官が6人とロターリ司祭が、魔法陣に魔力を注ぐ。
 魔石に貯まった魔力も放出され、辺り一面が輝く。

「黒白の羅、二十二の橋梁、六十六の冠帯。混迷の暁、天を挺る空の羅、大いなる力、滲み出す混濁の紋章、ヒトの名を冠す者よ。蒼白なる月よ、闇を照らす牙となれりて、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現せ、召喚!!」

 魔法陣が青白く輝く。
 薄暗い神殿の中が明るく照らしだされる。


 お願い成功して!
 もう無理、誰でもいいから助けて。
 同じ思いはもう嫌。
 その為だったら私は…。

 そして目が開けられないほどの眩い光が起きた。

 その場に居た者が目を開けると、そこには…。




 誰もいなかった。

「どうやら失敗したようだな、ビッチ」
 オバダリア侯爵が冷たく言い放つ。

「もう終わりにしましょう、ビッチェ王女様」
 ロターリ司祭も、やれやれと言った顔をしている。

 私は呆然としていた。
 失敗なんて絶対にありえない。

「簡単に『失敗』だなんて言わないでください。私達にはもう後がないのですよ」
「私達?それは違うなビッチ。いいえ、ビッチェ王女様」
「どういう意味なの、オバダリア侯爵様」

「あなたと私達は同じ船に、最初から乗っていないのですよ。聖女召喚が出来ればと、ビッチェ王女様とは懇意にして頂きましたが。このまま仲が良いと周りから思われると、他の領主の方からの支持にも影響が出ますからな」
「そうですな、我がシャルエル教としても、失敗したのではなく古い文献を参考にして召喚儀式を行っただけですからな。最初から成功する保証はありませんから」

「ですが、前回は成功したではありませんか?」
 
「世間では魔物討伐に行き、聖女が魔物に倒されたと言うのは嘘だと噂しておりますよ。権力保持のため召喚儀式をし、失敗を隠すために魔物のせいにしているとね」
「ですが、あなた達も見ているでしょう?」

「いいえ、私達は何も見ておらず、聞いておらず、何も言いません」
「そ、そんな」

「シャルエル教としては、ビッチェ王女様からの命令に逆らえず従いましたが、もうここらが潮時です。お会いすることもないでしょう」
「あれだけの報酬と、あれだけの事をさせておいて逃げるのですか!」

「まあ。まあビッチェ王女様。私もこれを機会に、お会いするのは止めましょう」
「オバダリア侯爵様、あなたまで…」

「私も王女様に乞われ仕方なく、お相手をさせて頂きましたが。私も周りの目を少しは気にしましてね。もう解放して頂ければと思います」
「力の無い王女にはその父である王子には、関わり合いたくないという事ですか!」
「なにをおっしゃっているのでしょうか」

「では、我々はこれにて、失礼いたします」
「失礼いたします」

 そう言ってオバダリア侯爵とロターリ司祭は神殿を出て行った。
 薄暗い神殿に1人残された私は泣いた。


 今までどれほどの思いをしてきたのか。
 この日の為に、我慢してきたのに。
 それが全て無駄になり、後ろ盾もいなくなった。

 シャルエル教はこの国では絶対。
 その司祭に見放され、オバダリア侯爵の手が着いた私を誰が支援するだろう。

 私は、いいえ、私達親子はもう、この国で居られる場所は無くなった。

 私は泣いた。
 声を上げ、大声で泣いた。
 今まで溜まっていた何かを吐き出すように。




 私はふと、なにかの気配を感じた。

「ねえ、どうして泣いているの?」
 空耳そらみみかと思い顔を上げた。

 すると顔の左側に15cmくらいの、可愛い女の子が浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-

ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。 第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。 スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。 迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。 空間を切り取り収納できる『空間魔法』。 思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。 少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか? 『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載中です。

【完結】ご都合主義で生きてます。奥様は魔女(中二病)だったのです。-北の森の怠惰な魔女-

ジェルミ
ファンタジー
右手首に布を巻き、左目に黒い眼帯をした白銀色の長い髪の少女の物語。 奥様の名前はパメラ18歳。そして転移者の旦那様の名前はダーリン。 ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。 ただひとつ違っていたのは、奥様は魔女(中二病)だったのです。 離れている家族と意思の疎通ができ、能力を共有できる【スキル】情報共有。 カスタマイズ可能な時空間魔法ストレージや創生魔法、世界の知識を使いこなしこの世の中を駆け抜ける。 ※このお話は『ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-』のスピンオフです。 前作を読まれていない方でも、楽しめるように書いています。

魔拳のデイドリーマー

osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。 主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

【完結】空飛ぶハンカチ!!-転生したらモモンガだった。赤い中折れ帽を被り、飛膜を広げ異世界を滑空する!-

ジェルミ
ファンタジー
俺はどうやら間違いで死んだらしい。 女神の謝罪を受け異世界へ転生した俺は、無双とスキル習得率UPと成長速度向上の能力を授かった。 そしてもう一度、新しい人生を歩むはずだったのに…。 まさかモモンガなんて…。 まあ確かに人族に生まれたいとは言わなかったけど…。 普通、転生と言えば人族だと思うでしょう? でも女神が授けたスキルは最強だった。 リスサイズのモモンガは、赤で統一された中折れ帽とマント。 帽子の横には白い羽を付け、黒いブーツを履き腰にはレイピア。 神獣モモンガが異世界を駆け巡る。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載しております。

【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
 大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。  うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。  まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。  真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる! 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※2022/05/13  第10回ネット小説大賞、一次選考通過 ※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ

処理中です...