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第2部 外の世界
第31話 自分の枠
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「2人とも聞いてほしいんだけど」
「なんでしょうかタケシ様」
「なあに、タケシ君」
「よく聞いてほしいんだ。まずこのジリヤ国から出れば、追手はこないのかな」
「そうですね、はっきりとは分かりませんが、公《おおやけ》には行動しないでしょう」
「それはどう言う意味でしょうか?イルゼさん」
「私達が国内に居ないと分かったら、内密に追手を出すと思います。そして何としてでも、連れ戻そうとするはずです」
「連れ戻してどうするのでしょうか?聖女召喚は失敗したのに」
「彼らも面子があります。そうしなければ、ならないでしょう」
「でも、どうして?」
「彼らも気づいたはずです。ミノタウロスを倒せる程の武力。そして聖魔法を」
「では追ってくるのは2人に対してではなく、俺を追ってくるという事ですね」
「そうなりますね」
なんという事だ。
オマケのはずの俺が、国に追われるなんて。
聖魔法は使わずこっそり隙を見て、イルマちゃんと逃げれば良かったのか?
そうすればイルゼさんにも、迷惑を掛けることは無かった。
その頃、アウルの森では…。
生き残った騎士団員は10人。
その内2人は騎士団長アーガスと団長補佐のコニーだ。
あれだけの数相手によく生き残ったものだ。
そして内5人は怪我を負っている。
「う、う~。司祭様、早く治療をお願いします」
「騎士団長」
「はっ、ロターリ司祭様、なんでしょうか」
「生き残った者の内、口が堅くてお前に従うものは誰だ?」
「いや~、それは」
「分からないと言うのか。そうだろうな、人の本質なんて誰も分からない」
「はぁ」
「今回の事が公になれば、どうなると思う?」
「そ、それは」
「お前たち騎士団は役立たずのレッテルを貼られ、聖女に逃げられたことになる」
「なぜでしょうか。確かに我々騎士団は、魔物相手に奮闘しました。上級魔物は青年が倒し、マジック・バッグかわかりませんが収納して行きました。青年には逃げられましたが、務めは果たしました」
「いいや、違う。お前達はゴブリンの群れから聖女様を、守ることが出来ず死なせてしまったのだ。聖女様も覚醒前で聖魔法が使えず、それを守ろうとした侍女やオマケの男もやられてしまった」
「そ、それは余りにも。青年が邪魔だからと、その事には加担いたしました。平民などどうなっても構いませんし、遺体は放置しておけばアウルの森の魔物が片づけてくれますから」
「何が言いたいのだ」
「聖女様、いいえ聖女様と言われていた少女が魔族だったこと。そして青年や侍女と、一緒に逃げたことを黙っていろ、と言うのですか?」
「あぁ、そうだ。政治は色々あるのだよ、騎士団長アーガス君。うまく世の中を渡って行くなら、その色に染まっていかないと生きて行けないぞ。君の家族を含めてな」
「そ、そんな」
「私のいう事を聞くならこうしてあげよう。ゴブリンの群れに襲われ、騎士団は奮闘するも上級魔物が現れた。騎士団も多大な犠牲を払い聖女様を守ろうとしたが、力及ばず聖女様達は亡くなってしまった。通常なら責めを問われるところ、このロターリ司祭が嘆願願をだしていると。そして生き残った騎士団員2人を哀れに思い、教団直属に雇い今まで以上の給金をもらい忠節を誓った、と言うのはどうかな」
「な、生き残った騎士団員2人とは」
アァ~~!!
ドサッ。
「こう言う事ですよね」
団長補佐のコニーが剣を抜き、怪我をしていない団員に切りかかった。
「さすが団長補佐。君は中々、機転が利くようだな」
「コニー、お前はなにをやっているんだ」
「生き残れる枠は2人。その枠の中に団長は入らないのですか?」
この大陸でシャルエル教に逆らう人はいない。
後から俺達がなにを言っても、もみ消されてしまうだろう。
さっき司祭は言った。
『口が堅くてお前に従うものは誰だ』と。
そんなことは分からない。
人なんて絶対などと言うことは無いのだ。
それなら口を塞げ、と言う事か。
そして生き残れる枠は2人まで。
誰にでもなれて、誰がなっても良い枠だ。
残った騎士団員は団長補佐コニー以外は負傷者5人と動けるものが2人だ。
俺は生き残る為に剣を抜き、自分の枠を自分で埋めることにした。
「なんでしょうかタケシ様」
「なあに、タケシ君」
「よく聞いてほしいんだ。まずこのジリヤ国から出れば、追手はこないのかな」
「そうですね、はっきりとは分かりませんが、公《おおやけ》には行動しないでしょう」
「それはどう言う意味でしょうか?イルゼさん」
「私達が国内に居ないと分かったら、内密に追手を出すと思います。そして何としてでも、連れ戻そうとするはずです」
「連れ戻してどうするのでしょうか?聖女召喚は失敗したのに」
「彼らも面子があります。そうしなければ、ならないでしょう」
「でも、どうして?」
「彼らも気づいたはずです。ミノタウロスを倒せる程の武力。そして聖魔法を」
「では追ってくるのは2人に対してではなく、俺を追ってくるという事ですね」
「そうなりますね」
なんという事だ。
オマケのはずの俺が、国に追われるなんて。
聖魔法は使わずこっそり隙を見て、イルマちゃんと逃げれば良かったのか?
そうすればイルゼさんにも、迷惑を掛けることは無かった。
その頃、アウルの森では…。
生き残った騎士団員は10人。
その内2人は騎士団長アーガスと団長補佐のコニーだ。
あれだけの数相手によく生き残ったものだ。
そして内5人は怪我を負っている。
「う、う~。司祭様、早く治療をお願いします」
「騎士団長」
「はっ、ロターリ司祭様、なんでしょうか」
「生き残った者の内、口が堅くてお前に従うものは誰だ?」
「いや~、それは」
「分からないと言うのか。そうだろうな、人の本質なんて誰も分からない」
「はぁ」
「今回の事が公になれば、どうなると思う?」
「そ、それは」
「お前たち騎士団は役立たずのレッテルを貼られ、聖女に逃げられたことになる」
「なぜでしょうか。確かに我々騎士団は、魔物相手に奮闘しました。上級魔物は青年が倒し、マジック・バッグかわかりませんが収納して行きました。青年には逃げられましたが、務めは果たしました」
「いいや、違う。お前達はゴブリンの群れから聖女様を、守ることが出来ず死なせてしまったのだ。聖女様も覚醒前で聖魔法が使えず、それを守ろうとした侍女やオマケの男もやられてしまった」
「そ、それは余りにも。青年が邪魔だからと、その事には加担いたしました。平民などどうなっても構いませんし、遺体は放置しておけばアウルの森の魔物が片づけてくれますから」
「何が言いたいのだ」
「聖女様、いいえ聖女様と言われていた少女が魔族だったこと。そして青年や侍女と、一緒に逃げたことを黙っていろ、と言うのですか?」
「あぁ、そうだ。政治は色々あるのだよ、騎士団長アーガス君。うまく世の中を渡って行くなら、その色に染まっていかないと生きて行けないぞ。君の家族を含めてな」
「そ、そんな」
「私のいう事を聞くならこうしてあげよう。ゴブリンの群れに襲われ、騎士団は奮闘するも上級魔物が現れた。騎士団も多大な犠牲を払い聖女様を守ろうとしたが、力及ばず聖女様達は亡くなってしまった。通常なら責めを問われるところ、このロターリ司祭が嘆願願をだしていると。そして生き残った騎士団員2人を哀れに思い、教団直属に雇い今まで以上の給金をもらい忠節を誓った、と言うのはどうかな」
「な、生き残った騎士団員2人とは」
アァ~~!!
ドサッ。
「こう言う事ですよね」
団長補佐のコニーが剣を抜き、怪我をしていない団員に切りかかった。
「さすが団長補佐。君は中々、機転が利くようだな」
「コニー、お前はなにをやっているんだ」
「生き残れる枠は2人。その枠の中に団長は入らないのですか?」
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後から俺達がなにを言っても、もみ消されてしまうだろう。
さっき司祭は言った。
『口が堅くてお前に従うものは誰だ』と。
そんなことは分からない。
人なんて絶対などと言うことは無いのだ。
それなら口を塞げ、と言う事か。
そして生き残れる枠は2人まで。
誰にでもなれて、誰がなっても良い枠だ。
残った騎士団員は団長補佐コニー以外は負傷者5人と動けるものが2人だ。
俺は生き残る為に剣を抜き、自分の枠を自分で埋めることにした。
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